オランダのインパクト投資会社グッドウェル・インベストメンツとケニアのアリシア・キャピタルは7月9日、ナイジェリアの電子廃棄物(e-waste)リサイクル企業ヒンクリー・イーウェイスト・リサイクリングへの出資を発表した。両社が運営するアフリカ向けファンド「uMunthu II」を通じて投資を実行。調達資金は、リチウムイオン電池と鉛蓄電池のリサイクル施設建設に充てられ、年間最大3万トンの電子廃棄物処理を目指す。
世界の電子廃棄物のうち、適切にリサイクルされているのはわずか22.3%にとどまる。サブサハラ・アフリカではその割合はさらに低く、推定1~15%に過ぎない。西アフリカ地域では年間75万トンの電子廃棄物が発生し、2030年までに100万トンを超えると予測されている。このうちナイジェリアだけで50万トンを占め、南アフリカ、エジプトに次いでアフリカで3番目に多い電子廃棄物発生国となっている。
ヒンクリーは、サムスン、HP、ルモス、PZカズンズなどの大手企業にリサイクル材料を供給。2024年にはラゴス州環境保護局(LASEPA)とナイジェリア廃棄物管理協会(WAMASON)から「ナイジェリア最優秀電子廃棄物リサイクル企業」に選出された。同社は地域の廃棄物回収業者のネットワークを通じて電子廃棄物を調達し、非正規で働く回収業者の労働環境改善にも取り組んでいる。また、英国援助やIKEA財団の支援を受け、ディーゼル発電機を中古バッテリーシステムに置き換えるプログラムにも参加している。
今回の投資により建設される2つのリサイクル施設は、いずれもナイジェリアのオグン州に設置される予定。電気自動車の普及や再生可能エネルギーの導入拡大により、バッテリー需要が急増する中、使用済みバッテリーのリサイクルは持続可能な資源循環の観点から重要性を増している。アリシア・キャピタルのドゥブラ・エガゲ氏は「電子廃棄物リサイクルの重要性の高まりに基づく説得力のあるビジネスケース」と投資理由を説明。グッドウェルにとっては廃棄物管理セクターへの初の投資となる。
アフリカでは適切な廃棄物管理インフラの不足により、土壌・大気・水質汚染や温室効果ガスの排出が深刻化している。ヒンクリーのエイドリアン・クルーズCEOは「現在非正規で働く10万人以上のナイジェリア人廃棄物回収業者の健康被害の軽減と収入向上を目指す」と述べ、国際基準を満たすリサイクル施設の建設により、環境保護と生計向上の両立を図る考えを示した。
【参照記事】Goodwell and Alitheia invest in Hinckley E-Waste Recycling Ltd.

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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