日本自然保護協会(NACS-J)は7月8日、農林中央金庫と森里川海および農林水産業・食農関連産業のネイチャーポジティブ(自然再興)推進を目的とした連携協定を締結した。両者の強みを生かし、農林水産業や食品・飲料メーカーなどの食農関連産業における自然環境の回復・向上に向けた取り組みを加速させる。
今回の協定では、農林中金が持つ金融ノウハウと全国の農林水産業者とのネットワーク、NACS-Jが1951年の設立以来蓄積してきた自然保護に関する知見を組み合わせ、実効性の高い支援体制を構築する。具体的には、Nature Positive Initiativeが開発を進める自然の状態を評価する指標の活用方法の検討、農林水産業向けの新たな金融商品の開発、現場でのプロジェクト構築の3つを柱に連携を進める。
特に注目されるのは、農林中金が取り組む生物多様性ローンへの適切な評価指標の選定やモニタリング支援だ。従来の環境金融は気候変動対策に重点が置かれてきたが、今回の連携により生物多様性の観点を組み込んだ金融商品の開発が期待される。また、農林水産業由来のカーボンクレジットについても、生物多様性への貢献度を加味した高付加価値化を検討するという。
ネイチャーポジティブの実現には、脱炭素やサーキュラーエコノミーといった他の環境課題との統合的なアプローチが不可欠とされる。今回の協定は、金融機関と環境団体が協力して農林水産業の持続可能な転換を支援する先進的な取り組みとして、今後の成果が注目される。
【参照記事】森里川海や農林水産業・食農関連産業のネイチャーポジティブへ 農林中金と連携協定 NACS-J
The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
HEDGE GUIDE 編集部 ESG・インパクト投資チームは、ESGやインパクト投資に関する最新の動向や先進的な事例、海外のニュース、より良い社会をつくる新しい投資の哲学や考え方などを発信しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」

最新記事 by HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム (全て見る)
- 採鉱業界の4大団体、統合基準の最終協議を開始 複雑な認証制度を一本化へ - 2025年10月9日
- 世界のエネルギー需要が2.2%増加、再エネと原子力が成長を牽引 - 2025年10月9日
- 経産省、低炭素水素の価格差支援制度を本格始動 15年間の長期支援で産業育成 - 2025年10月3日
- TotalEnergies、北米太陽光発電ポートフォリオの50%をKKRに売却 - 2025年10月3日
- L&T、スタンダードチャータード銀行から7億ドルのサステナビリティ連動型貿易融資枠を獲得 - 2025年9月30日