豊田通商グループのプラニックが製造する自動車破砕残さ(ASR)由来の再生プラスチックが、7月18日、国内のトヨタ車で初めて「クラウン(スポーツ)」のフロントフェンダシールに採用された。これまで主に焼却処分されてきたASR由来プラスチックの高品質な再生利用を実現し、自動車産業における循環型製造(Car to Carリサイクル)の新たな一歩となる。
プラニックは、豊田通商と小島産業(小島プレス工業グループ)が出資する国内最大級の再生プラスチック製造事業会社だ。同社は欧州で実用化された高度比重選別技術・設備を日本国内で初めて導入し、従来は材質ごとの選別が困難だったASR由来プラスチックから高品質な再生材料の製造を可能にした。原料となるプラスチックは、豊田通商グループで自動車リサイクル事業を手掛ける豊田メタルをはじめ、全国のASR再資源化施設や家電リサイクルプラントから回収している。
自動車産業におけるプラスチックの循環利用は、サーキュラーエコノミー実現の重要な課題だ。日本では年間約350万台の使用済み自動車が発生し、そこから生じるASRは約50万トンに上る。これらの多くは熱回収を伴う焼却処分されているが、プラニックの技術により、高付加価値な材料として自動車部品に再利用する道が開かれた。欧州では2035年までに新車のリサイクル材使用率を25%以上にする規制案が検討されており、日本の自動車メーカーも対応を迫られている。
今回の採用は、トヨタ自動車が掲げる「2050年カーボンニュートラル」目標の実現に向けた取り組みの一環でもある。自動車製造におけるScope3排出量削減には、部品・素材製造段階での環境負荷低減が不可欠であり、再生材料の活用はその有効な手段となる。プラニックの再生プラスチックは、バージン材と比較してCO2排出量を約50%削減できるとされ、自動車のライフサイクル全体での環境負荷低減に貢献する。
ASR由来プラスチックのCar to Carリサイクルの実現は、日本の自動車産業が循環型社会への移行を加速させる重要な転換点となる。今後、他の自動車メーカーへの展開や適用部品の拡大により、自動車産業全体のサーキュラーエコノミー推進が期待される。
【参照記事】プラニックが製造するASR由来の再生プラスチックがトヨタ車に初採用
【参照記事】自動車リサイクル促進センター

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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