一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は10月5日、SIIFインパクトキャピタル株式会社SIIFIC)と共同運営する「SIIFIC ウェルネス投資事業有限責任組合」(SIIFICウェルネスファンド)を通じて、横浜市のスタートアップであるジェイファーマ株式会社が実施する第三者割当増資を引き受けたことを公表した。出資を通して、ウェルネス領域のシステムチェンジが起きるよう支援していくとしている。
SIIFICウェルネスファンドは、ウェルネス領域の社会課題の構造的な解決をめざす外部投資家参加型インパクト投資ファンド。ジェイファーマ社は近年、創薬標的として注目されているアミノ酸トランスポーター、LAT1阻害薬の治験を世界で唯一、実施している。創業者フェローの遠藤仁氏(東京大学医学部助教授を経て杏林大学名誉教授)、金井好克氏(大阪大学医学系研究科教授)により、1998年にアミノ酸取り込みに関与する細胞膜輸送体であるLAT1の単離に成功した。
現在開発を進めているLAT1阻害薬「ナンブランラト」の第2相臨床試験の結果は、今年2月、ASCO(American Society of Clinical Oncology、米国臨床腫瘍学会)で、優秀な研究を行ったトップ3%だけが発表することができる口頭発表に選出された。
SIIFによると、日本の胆嚢・胆管がんの年間罹患者は約2.3万人、5年相対生存率は21種のがんの中、男女とも膵癌に次いで2番目に低い疾患となっている(国立がん研究センターがん情報サービス)。ジェイファーマ社が開発を進めているナンブランラトは、胆嚢・胆管がんを最初の適応症として開発。その後、アンメット・メディカル・ニーズ(未だに有効な治療法がない疾患に対する医療ニーズ)の大きい他疾患を対象に開発を進める予定。
SIIFは同社の事業を「がんの縮小率という従来の医療パラダイムにおける成果指標だけでなく、患者のQOLや全人的な健康・ウェルネスの追求をインパクト指標に定め、医療関係者へのウェルネスパラダイムの波及を目指している」と評価する。
出資の検討にあたっては、患者・患者の家族・医療従事者・製薬企業・行政との対話を重ね、課題の構造分析を実施した結果、同ファンドのインパクト・ゴールである「ウェルネス・エクイティーの実現」に、創業者の遠藤氏の理念「たとえ末期のがん患者でも、最期まで希望を与え続けられる医療体制を構築しなくてはならない」が整合すると判断した。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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