一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は11月10日、「インパクトIPO実現・普及に向けた基礎調査」を発行した。インパクトIPOについて、SIIFは「ポジティブなインパクトの創出を意図している企業が、インパクトの測定およびそのマネジメント(Impact Measurement & Management、IMM)を適切に実施していることを示しながら、IPO(新規上場) すること」と定義。調査の発行の目的を「IPO に際し、インパクトの追求と IMM を継続的に実施できるよう、ステークホルダーにインパクトとIMM の状況を説明し、資金調達や企業価値の向上を図ること」とている。
同調査では、インパクトIPOの実態を調査し、IPOを目指すインパクト企業に向けた実務的示唆と日本におけるインパクトIPO発展のための展望を示した。
インパクト投資について、SIIFは「経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資」と定義。日本のインパクト投資の現状について「企業や投資家のインパクト測定・マネジメントの手法などは発展途上だが、インパクトIPOの取り組みは動き出しており、国内外いずれも黎明期にある」と俯瞰する。
課題として「インパクト投資の基本概念である財務的リターンとインパクトの両立の好事例や知見が不足しており、そのためインパクトIPOの多様な事例が創出されること、そのための環境整備の推進」と説く。
今回公表した調査報告書は6部構成で、各部のタイトルは、①本調査の目的と手法②本調査の背景③インパクトIPOの参考事例一覧④インパクト投資の先進事例⑤日本のIPOを目指すインパクト企業に対する示唆⑥インパクトIPOを実現するためのエコシステムに対する示唆――となっている。
米国や欧州を中心に増加傾向にあるインパクト企業の上場の参考事例やインパクト投資の先行事例の掲載に加え、IPOを実現したインパクト企業5社と、上場株式のインパクト投資に取り組む金融機関全12社(海外6社、国内6社)への直接取材から抽出したIPOを目指すインパクト企業に対する示唆や、日本においてインパクトIPOを実現するためのエコシステムに対する示唆をまとめた。
SIIFでは今年8月、「インパクト企業の上場 コンセプトペーパー」を発行している。インパクトIPOの調査・研究、国内事例の創出について、今回の調査を踏まえたフレームワーク策定など、日本国内で必要となる仕組みを検討、推進していく方針だ。
【参照】インパクト IPO の実現・普及に向けた基礎調査
【参照】インパクトIPO 実現・普及に向けた基礎調査.pdf インパクト企業の上場コンセプトペーパー(PDF)
【関連サイト】一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
最新記事 by HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム (全て見る)
- 現役高校生が資産形成を始めたい年齢は「23歳」。リクルート調査 - 2024年4月16日
- 国、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」公表。自然再興と経済の新たな成長目指す - 2024年4月12日
- インパクト投資で注目されるブルー・ボンド、オレンジ・ボンド。シュローダーが解説 - 2024年4月8日
- SIIF、休眠預金活用事業の事後評価をまとめた「社会的インパクト評価レポート 2023」発行 - 2024年4月2日
- SIIF、SIIFIC ウェルネス投資事業有限責任組合から綿状人工骨の医療機器ベンチャーに投資 - 2024年4月2日