一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は3月6日、持続可能な海洋の未来をテーマにした国際カンファレンス「海洋のシステムチェンジとブルーインパクトファイナンス」を都内で開催した。海洋資源の持続可能な利用を目的に、投資家、企業、行政、スタートアップ関係者などが集い、講演やパネルディスカッションを通じて事例や課題を共有した。
海洋環境とその資源は、食料、産業、エネルギー、環境の持続可能性などにおいて重要な役割を持つ。一方で、環境汚染、気候変動といった問題は深刻化している。そこで、海洋や水資源をサステイナブルに利用しながら経済成長、社会的包摂、環境保護を同時に実現する経済モデル「ブルーエコノミー」、およびブルーエコノミーによる影響を指す「ブルーインパクト」が関心を集めるようになった。
国際カンファレンスは、SIIFとアジア開発銀行研究所、笹川平和財団海洋政策研究所の共催で昨年に続き2回目。世界で活躍する海洋投資ファンドのリーダーと国内の先駆的な利害関係者が一堂に会し、具体的な投資およびビジネス事例について知識を深める狙い。また、日本とアジアで海洋投資ファンドを推進するための主要な課題と取り組み、およびネットワーキングの機会に関する議論を通じて、この進化するセクターにおける将来のビジネス開発を促進することを目指している。今回はタイトルに「システムチェンジ」を加えた。
プログラム冒頭で、笹川平和財団海洋政策研究所所長の牧野光琢氏は、ブルーファイナンスについて「2018年に世界初のブルーボンドが発行されて以来、新たな投資市場として注目を集めている。現在、政府、民間、大学発ベンチャーキャピタルなど、多様な分野で投資が加速しており、今後は投資とイノベーションの好循環を生み出すことが不可欠」と語った。

牧野光琢氏所長
同研究所は、会議前日の3月5日、イノベーションのインパクトを捉える「オーシャン・インパクト・ナビゲーター(OIN)」の日本版を開発、公開した。OINは、世界経済フォーラムが支援する「1000 Ocean Startups Coalition」が2022年に発表した海洋の健全性、気候変動、人間の福祉と公平性の観点からイノベーションのインパクトの評価(KPI)フレームワーク。環境・社会・経済にインパクトをもたらすスタートアップを適切に評価する仕組みとして世界中の投資家に活用され、インパクトのモニタリング、調整、効果的な伝達を通じて、投資判断の向上に貢献している。
牧野所長は「OINは投資家には戦略的な意思決定のため、スタートアップには投資家へのアピールを強化する手段となる。日本での海洋のシステムチェンジ促進に貢献していきたい」と日本版OINの展開に期待を寄せた。
続いて、笹川平和財団海洋政策研究所特任部長で元水産庁資源管理部水産経営課長の髙屋繁樹氏が「漁業分野におけるファイナンスの現状」と題し、基調講演的な解説を行った。海外からは「海洋のシステムチェンジに向けたKatapultの取組」、「システムチェンジにおけるファイナンスセクターの役割」(ビデオ)による2つの事例が紹介された。
再び日本での報告として、みずほフィナンシャルグループ兼みずほ銀行 サステナブルビジネス部サステナビリティ・チーフストラテジストの大谷智一氏が「ブルーエコノミーにおける<みずほ>の取組み」、UntroD Capital Japan 取締役の藤井昭剛ヴィルヘルム氏が「ディープテック VCから見るブルーインパクトファイナンス」をそれぞれ報告した。
続くパネルディスカッションでは、登壇者が海洋と経済社会、さらに海洋投資に関しての意見を活発にクロスオーバーさせた。

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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