積水ハウスと東大大学院農学生命科学研究科、生物多様性と健康に関する共同研究結果を発表

在来種を中心とした植栽に囲まれた家に住み、庭で様々な生きものと触れ合う人は、うつ症状の発症リスクが低下し、高い幸福感や充実感を持つ――。積水ハウス株式会社は7月9日公表した共同研究「生物多様性と健康に関する共同研究」で、このような分析結果を導き出した。

同社は2001年から生態系に配慮した造園緑化事業「5本の樹」計画を推進している。その地域の気候風土にあった在来樹種を中心とした庭づくり・まちづくりを提案するもので、5本の樹は「3本は鳥のために、2本は蝶のために」として、在来樹種に配慮している。

併せて、生物多様性豊かな庭における身近な自然との触れあいが居住者の態度・行動、健康にどのような影響を及ぼすか、2022年12月から東京大学大学院農学生命科学研究科の曽我昌史准教授と共同研究を行ってきた。

研究では、同計画を採用した首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)および京都・大阪・愛知の積水ハウスのオーナーを対象としたウェルビーイングや環境配慮意識に関するアンケート結果と、土地利用(周辺の緑地面積など)、同社が持つ樹木本数・樹種・位置情報のデータを紐づけて変数間の関係性を分析した。蓄積された樹木本数・樹種・位置情報のデータと生物多様性ビッグデータを用いて、同計画による在来種を中心とした植栽の生物多様性保全効果の実効性を定量評価できたという。

調査結果の分析では、在来種を中心とした植栽に囲まれた家に住み、庭に訪れる様々な生きものとよく触れ合う人は、うつ症状の発症リスクが20pt低く、高い幸福感や日々の生活の充実感を持つことが分かった。また、そういった人は自然の価値をより認識し、より高い環境配慮意識を持っていた。

うつ症状は様々な環境・社会経済的要因に影響されるため、同社は「住まい手個人のウェルビーイングに与える影響は決して小さくない。こうした効果は、例えば、日本におけるうつ病性障害の疾病費用は、医療費に加え非就業費用等の間接経費も含めると、年間約3.1兆円推定されている。生きものとのふれあいによる症状の発症リスク低減効果はこれらの疾病費用削減にもつながるため、大きな経済効果を持つ」としている。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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