インパクト投資で注目されるブルー・ボンド、オレンジ・ボンド。シュローダーが解説

シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は4月5日、インパクト投資の最新情報に関するレポートを発表した。グリーン・ボンド、サステナビリティ・ボンド、ソーシャル・ボンドなど、サステナビリティのラベルが付与された債券について解説。債券市場でこれらの債券が「インパクト投資を実施したい投資家の投資可能ユニバース拡大に繋がっているほか、サステナビリティ関連データの測定・分析をより容易にする」と解説。さらに「インパクト投資を実施したい投資家の投資可能ユニバース拡大のほか、サステナビリティ関連データの測定・分析をより容易にすることで、インパクト投資戦略の透明性や運用上の堅確性を高める」と評価している。

そのうえで、投資家の新しい選択肢としてブルー・ボンド、オレンジ・ボンドを紹介。ブルー・ボンドは、ラベル付き債券の仲間に新たに加わった種別であり、調達資金を海洋資源、淡水資源といった水資源関連する持続可能なプロジェクトに対して振り向けることを目的としている。これらの債券は、気候変動に直面する水資源の保護という喫緊の課題に取り組む上で極めて重要な役割を果たす。

オレンジ・ボンドは、ジェンダーに焦点を当てた債券。インパクト・インベストメント・エクスチェンジ(IIX)が、女性活躍支援の一環として、世界初のオレンジ・ボンドを発行。オレンジ・ボンドは、2022年10月にIIXにより発表された「オレンジボンド原則」に概説されている原則を遵守するジェンダーに焦点を当てた債券。この原則はオレンジ・ボンドの促進に関わる発行体、投資家、アレンジャー、認定検証機関を支援するためのガイドラインを示している。

現状では、発行体側が、調達資金を用いてオレンジ・ボンドの原則に基づくジェンダーに特化した債券発行を選好するか、ジェンダー・ポジティブなプロジェクトへの資金提供を含むソーシャル・ボンドの原則に基づく発行を選好するか、明確な方向性は出ていない。今後発行体がどちらを選択するかは、発行体の具体的な目的や選好、フレームワークの複雑さや付加価値によって決定されていくと予想される。

2023年、国際資本市場協会(ICMA)のスタンダードを融合して「グリーン&サステナビリティ・リンク債(G&SLBs)」と「サステナブル・サステナビリティ・リンク債(S&SLBs)」という新しい債券種別が誕生した。これらは、資金調達の用途がリングフェンシングされ明確に定義されていることに加え、サステナビリティ・リンク債の特徴である発行体に対するサステナビリティ目標達成度合いに応じてクーポンの支払いが変動するインセンティブが付与されている点が特徴。

発行事例として、2023年にチリのCMPC社が発行した米ドル建てグリーン&サステナビリティ・リンク債(G&SLB)がある。同銘柄は、チリの大手紙パルプメーカーであるCMPCが、調達資金を同国の天然資源と土地利用の持続可能な活用に用いるために発行された債券で、温室効果ガス排出量と工業用水の利用を、主要KPIとして設定している。

もうひとつ、ブラジルのAEGEA社が同年発行した米ドル建てサステナブル・サステナビリティ・リンク債(S&SLB)が挙げられる。同銘柄は、ブラジルの大手公益会社である同社が、エネルギー効率化のKPIと同時に、社内のシニア・マネジメントにおける女性登用および黒人登用の積極化をあわせてKPIとして定めている。

シュローダーは、「このような債券はインパクト投資を選好する債券投資家にとってユニークな提案であり、資金使途が明確に定義されている点と、持続可能性に連動したインパクト目標をモニタリングし、インセンティブを与える能力を兼備している」と評価。

さまざまなESG債が発行されている中、債券市場におけるサステナビリティ、インパクトの発展は「投資家がサステナビリティの課題に取り組み、持続可能な開発目標のための資金ギャップを埋めることに貢献する有望な機会を提示している」と有望視している。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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