フリマアプリの株式会社メルカリは8月9日に「2022年度版サステナビリティレポート」を公開、この中で初めて環境に関するポジティブインパクト(メルカリの事業を通じて生まれた環境貢献量)を算出・開示した。さらに、事業を通じて地球環境に対してポジティブなインパクトを生みだし続け、環境課題の解決に貢献したいという思いを「プラネット・ポジティブ」という言葉で打ち出した。
個人間で売買するCtoCの市場を急拡大させたフリマアプリで、メルカリは先駆的な存在だ。同社は「限られた資源が大切に使われ、誰もが新たな価値を生みだせる社会の実現に貢献したい」と考え、事業や企業活動を通じて環境や社会にポジティブな影響を与えるさまざまな活動に取り組んでおり、2020年から年に一度、サステナビリティレポートを発行している。
22年の同レポートでは、メルカリの中で最も取引量が多い衣類カテゴリーを対象に環境に関するポジティブインパクトの算出・開示を初めて行った。「メルカリJP」と「メルカリUS」のユーザーがメルカリで衣類を取引したことで、21年は約48万トンのCO2の排出を回避できたことが推計された。約48万トンのCO2排出量は、東京ドーム約200杯分の容積に相当する。
また、直近3年間において排出を回避できたCO2量は、衣類カテゴリーだけでも合計約140万トンにおよび、「事業成長とともに循環型社会の実現に着実に貢献することができている」(同社)としている。
今年は、5つのマテリアリティ(重要課題)を掲げている。うち一つが「循環型社会の実現/気候変動への対応」で、30年までにScope(燃料の使用や工業プロセスによる直接排出の温室効果ガスの排出量)1と2を100%削減、Scope3を付加価値当たり51.6%削減する目標を新たに策定した。この目標はSBT(Science Based Targets、温室効果ガス排出削減目標)に沿って策定しており、この目標値で23年6月までにSBT認定を取得する予定。さらに、今年度よりTCFD提言2に基づく情報開示を行う。
プラネット・ポジティブという言葉について、同社は「メルカリは誰かにとって不要になったモノが他の必要な人のもとに届くマーケットプレイス。使う人が増えるほど、環境にポジティブな変化を与えることができる。リユースの体験やサステナビリティへの関心の高まりから、買う・使う・捨てることに対する意識が少しずつサステナブルに変わることで、生産や販売のあり方がアップデートされ、バリューチェーン全体への変化につながる。こうした変化を世界中で起こしていくことで循環型社会の実現に寄与するだけでなく、環境負荷軽減・気候変動への対応にもつながる」という理想形を示す。
そのうえで、地球資源の限界を意味する「プラネタリー・バウンダリー」という概念が広がる中、事業を通じて地球環境に対してポジティブなインパクトを生みだし続けていくことで環境課題の解決に貢献したいという思いを「プラネット・ポジティブ」という言葉に込めたとしている。
同社の22年6月期の連結決算(8月8日発表)は、売上高が1470億円(前年比39%増)だったが、営業損益は37億円の赤字、最終損失は75億円の赤字と増収減益で終えた。メルカリは順調な国内に比べ、米国のメルカリUSが前連結会計年度のハードルに、現地のインフレなどで成長が鈍化した。
今後は、BtoCマーケットプレイス「メルカリShops」の本格提供を開始した株式会社ソウゾウ、仮想通貨やブロックチェーン事業を行う株式会社メルコイン、スマホ決済サービスを提供する株式会社メルペイなど、グループ会社に新たな事業の柱として期待がかかる。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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