国連食糧農業機関(FAO)のQU Dongyu事務局長は9月18日、南アフリカ・ケープタウンで開催されたG20農業大臣会合で、世界最大の経済国が農業食料システムの変革において果たすべき重要な役割について言及した。同会合は「食料安全保障への対応と包摂的な農業投資・市場アクセスの促進におけるデータ駆動型アプローチ」をテーマに、南アフリカのJohn Steenhuisen農業大臣の主催で開催された。
QU事務局長は、現在の農業食料システムが気候変動による干ばつ、洪水、暴風雨、気温上昇などの影響を最も受けやすく、生産性の低下とサプライチェーンの混乱を引き起こしていると指摘。FAOのグローバル・ロードマップによると、気温上昇を1.5度以内に抑えながら「飢餓ゼロ」を達成するには、2030年まで年間1.1兆ドルの投資が必要であることを強調した。その上で、G20が主導すべき4つの重点分野として、①イノベーションとデジタル化の拡大、②持続可能で強靭な投資の増加、③データの透明性と市場機能の改善、④統合的な政策アプローチの推進を提示した。
会合では、FAOが国際農業開発基金(IFAD)、国連児童基金(UNICEF)、世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)と共同で作成した「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2025年報告書」の主要な調査結果も発表された。報告書によると、2024年時点で6億7,300万人が慢性的な栄養不足に直面しており、世界人口の約12人に1人が該当する状況だという。世界全体の飢餓率は2022年の8.7%から2024年には8.2%へとわずかに改善したものの、アフリカでは依然として上昇傾向にある。現在の傾向が続けば、2030年時点でも5億1,200万人以上が飢餓状態にあり、その約60%がアフリカに集中すると予測されている。
「SOFI2025のメッセージは明確だ。飢餓の減少は遅すぎ、食料価格のインフレが食生活を蝕み、不平等が拡大している。しかし、証拠に基づいた協調的な行動により、G20はこの流れを変えることができる」とQU事務局長は述べ、FAOのHand-in-Hand Initiativeなどを通じて、最貧国と投資機会のマッチングを継続的に支援していくことを表明した。
【参照記事】FAO outlines four key areas for G20 leadership in transforming agrifood systems

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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