EU、廃車リサイクル規制を強化 車両設計から再生プラ使用まで包括的に義務化へ

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欧州連合(EU)理事会は6月17日、廃車(ELV)規制に関する新たな規則案について合意した。新規則は自動車の設計段階から再利用やリサイクルを考慮することを義務付け、特にプラスチックのリサイクル材使用について具体的な数値目標を設定した。また、将来的には鉄鋼、アルミニウム、重要原材料についても同様の目標設定を可能にする枠組みを整備した。

新規則では、従来の乗用車・バンに加えて大型トラック、二輪・三輪車、四輪バイクも対象に含まれることになった。これらの車両についても部品の取り外しを可能にする設計が求められ、製造者は循環性戦略の策定と部品のラベル表示が義務付けられる。さらに、移動式クレーンや消防車、救急車などの特殊車両も規制対象に追加され、循環経済への移行がより包括的なものとなる。

リサイクルプラスチックの使用については、段階的な目標が設定された。規則発効から6年後に15%、8年後に20%、10年後に25%という3段階の最低含有率が義務化される。ただし、リサイクルプラスチックの供給不足や価格高騰が発生した場合には、欧州委員会が一時的な適用除外を認める権限を持つ。また、プラスチック以外の素材についても、実現可能性調査を経て最低リサイクル材含有率を設定できる仕組みが導入された。

拡大生産者責任(EPR)制度も強化され、生産者は収集地点から処理施設までの輸送費用や、生産者不明・不存在の車両処理費用を市場シェアに応じて負担することになる。トラックやバイクについては、収集・廃棄だけでなく処理チェーン全体の費用負担が求められる。第三国の生産者についても、EU市場に車両を投入した事業者がリサイクル費用を負担する仕組みが明確化された。

中古車取引においては、オンライン販売を含む事業者間取引で、販売者が車両が廃車でないことを証明する書類の提示が義務付けられる。ただし個人間の対面取引は除外される。また、文化的価値を持つ特別な車両や、道路走行用に修復された古い車については適用除外が設けられた。

EUにおける自動車産業は資源集約的な産業の一つで、EU鉄鋼産業需要の19%(年間700万トン以上)、プラスチック消費の10%(年間600万トン)、アルミニウム需要の大きな割合を占めている。今回の規制強化は、欧州グリーンディールの一環として、設計段階から廃車処理までを含む包括的な循環型ビジネスモデルへの転換を促すものだ。EU理事会は欧州議会が立場を採択次第、交渉を開始する準備が整ったとしている。

【参照記事】Circular economy: Council adopts position on the recycling of vehicles at the end of their life

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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