アイルランドの市場調査会社Research and Marketsは6月18日、デジタル技術を活用したサーキュラーエコノミー(デジタルサーキュラーエコノミー)に関する市場調査レポート「Digital Circular Economy Market Opportunities and Strategies to 2034」を発表した。同レポートによると、世界のデジタルサーキュラーエコノミー市場は2024年の29億ドルから、2034年には248億ドルに達すると予測されている。
レポートによると、同市場は2019年から年平均21.90%の成長を遂げており、2029年から2034年にかけては年平均23.58%で成長が続くと分析された。現在の市場は多くの小規模プレイヤーが参入する断片化した状況にあり、2023年時点で上位10社の合計シェアは18.76%だった。主要企業として、SAP SE(3.15%)、International Business Machines Corporation(2.83%)、Microsoft Corporation(2.61%)などが挙げられている。
これまでの市場成長は、サーキュラー関連スタートアップへの投資、スマートシティ構想、各国の政府主導の取り組みなどが後押ししてきた。今後は、持続可能な製品への需要増加、産業界全体のデジタルトランスフォーメーションの進展、電子廃棄物への意識向上、そしてAI、IoT、ブロックチェーンといった技術の採用拡大がさらなる成長を牽引すると予測された。一方で、データセキュリティへの懸念や専門知識を持つ人材の不足が、今後の成長を妨げる可能性のある要因として指摘された。
市場を技術別に分析すると、2024年時点ではIoTが27.39%を占め最大だが、2024年から2029年にかけてはAIと機械学習(ML)分野が年平均36.54%で最も急速に成長する見込みだ。また、用途別では「デジタルリセール・リユース」が最大のセグメント(19.65%)であり、今後最も高い成長率(年平均34.75%)が期待される分野だと報告された。地域別では、2024年時点では北米が最大の市場だが、将来的にはアジア太平洋地域と東ヨーロッパが最も高い成長を遂げると見られている。
今回のレポートは、サーキュラーエコノミーへの移行においてデジタル技術がいかに重要な役割を担うかを、具体的な市場規模の予測をもって示した。特に、AIやSaaSが廃棄物管理や資源最適化を革新する可能性、そしてデジタルリユース市場が急成長するという予測は、サーキュラービジネスを構想する企業にとって重要な示唆を与える。市場が成長する一方で、データセキュリティや人材不足といった課題も浮き彫りになっており、技術導入と並行した対策が今後の発展の鍵を握ることになるだろう。

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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