目次
Thalloとは?
Thalloは旧来のカーボンクレジットをブロックチェーンへブリッジするための技術であるTwo way bridgeの開発と企業へ向けて透明性が担保された良質なカーボンクレジットを提供するCaaS(Carbon-as-a-Service)を展開している企業です。ボランタリーカーボン市場が抱える非効率性、不透明性の欠如を解決し、ボランタリーカーボン市場へ接続されたインフラを提供することで誰でも簡単に良質なカーボンクレジットが購入できるソリューションを展開しています。
カーボンクレジットは大きく分けてコンプライアンス市場とボランタリー市場があります。コンプライアンス市場は政府が主導しているカーボンクレジット市場のことであり、各国政府や国連の規制によって認証されたカーボンクレジットが発行されます。ボランタリー市場は民間企業によって発行されたカーボンクレジット市場のことであり、民間企業によってそれぞれカーボンクレジットの認証方法や基準が異なります。
ボランタリーカーボン市場には多様な発行主体が存在し、その中には基準が不十分で、必要なカーボンクレジットの質を満たしていないものが散見されます。この状況は、企業が市場で信頼できるカーボンクレジットを探す際に大きな課題となっています。加えて、近年では「グリーンウォッシュ」という言葉が世界中で行き渡り、企業による見せかけの環境活動が非難の対象となっています。
このような背景で誕生したのがThalloであり、ボランタリーカーボン市場に透明性と効率性をもたらし、企業が安心して良質なカーボンクレジットを購入できるソリューションを提供しています。
具体的にはブロックチェーンを活用し、旧来のカーボンクレジットをオンチェーン上にブリッジすることで、数百万件の良質なカーボンクレジットへ即座にアクセスすることができるようになります。Thalloは高品質レジストリとの提携により、Puro.Earth、Gold Standard、Biocarbon Registry、Socialcarbonなどの信頼性の高いカーボンクレジットを提供しています。これにより、企業は安心して、カーボンニュートラルの取り組みの一環としてカーボンクレジットを活用することができます。
Thalloではブロックチェーン技術を活用し、カーボンクレジットの取引と追跡を透明かつ効率的に行うことができます。各クレジットの発行元、排出削減の検証、取引履歴などの情報がブロックチェーン上で安全かつ不変に記録されるため、企業は偽造や二重計上などのリスクを避けながら、信頼できるカーボンクレジットを取得することができます。さらに、Thalloのプラットフォームは、カーボンクレジットの発行から取引、最終的な引き渡しに至るまでのプロセスを簡素化し、企業が必要とするカーボンクレジットを即座に見つけることを可能にしています。このプロセスの効率化により、企業は環境目標達成に必要なカーボンクレジットのコストを削減し、より多くの資源を実際の環境改善活動に向けることができます。
Thalloの仕組みとサービスとは?
では、Thalloが独自で開発したTwo way bridgeの仕組みと、企業へ提供しているCaaS(Carbon-as-a-Service)の内容を解説していきます。
Two way bridge
Two way bridgeとはカーボンクレジットをブロックチェーンへブリッジし、トークン化する際に用いられる技術のことを指します。
Two way bridgeを理解するには、One way bridgeの仕組みを知っておく必要があります。One way bridgeもカーボンクレジットをブロックチェーン上へブリッジする時に用いられる技術のことですが、One way bridgeではカーボンクレジットがトークン化された時点で、そのカーボンクレジットは償却扱いとなります。つまり、オフチェーンではそのカーボンクレジットは償却されたことになっているが、実際はオンチェーン上に存在しているという状況が発生します。これが問題なのはカーボンクレジットによるCO2排出量の正確な測定や監視ができなくなる点にあります。
そこで誕生した技術がTwo way bridgeです。Two way bridgeではカーボンクレジットをトークン化した際にオフチェーンとオンチェーンで情報がリアルタイムでリンクされた状態を保っています。これにより、オンチェーンでカーボンクレジットを償却すればオフチェーンでも償却されたことになるため、CO2排出量の正確な計測と監視が可能になり、カーボンクレジットの信頼性と透明性が向上します。
また、Two way bridgeではトークン化したカーボンクレジットをオフチェーンへ戻すこともできるため、オンチェーンとオフチェーンを行き来したシームレスな取引も可能となります。
Carbon as a service
CaaSはTwo way bridgeの技術を使ってトークン化したカーボンクレジットへアクセスする際に提供されているサービスです。主にカーボンクレジットを使って自社のCo2排出量削減を検討している企業から利用されています。
CaaSを利用することで企業は高品質なカーボンクレジットに簡単にアクセスし、自社の環境目標に合致したクレジットを選択して購入することができます。
また、CaaSはAPIを提供しており、連携することで企業はThalloの高品質なカーボンクレジットへのアクセスを自社のサイトやサービスへ組み込むことができます。例えば、ECサイトを運営する企業はAPIを通じて、自社サイトにカーボンクレジットを使ったオフセットソリューションを提供することが可能となります。これにより、顧客は製品購入時にカーボンクレジットを利用した環境貢献のための選択肢を持つことができ、企業は環境へ意識の高い顧客層にアピールすることができます。
Thalloの展望は?
Thalloは2021年に設立されて依頼、シードラウンドで合計250万ドルの資金調達を行っています。ラウンドにはRipple、Allegory Labs、Climate Collective、Arcan Capital、Cerulean Ventures、Friendly Trading 2、Flori Venturesの合計7社が参加しています。まだシードラウンドとはいえ、既にボランタリーカーボン市場で2位のシェアを誇るゴールドスタンダードと提携しており、良質なカーボンクレジットのトークン化に成功しています。企業がカーボンクレジットを購入する上で最も懸念としているのが「品質」であると明らかになっているので、Thalloはこの点をクリアしています。
今後、脱炭素化の動きが加速していく中で企業の取り組みの一環として、間違いなくカーボンクレジットの需要が高まっていくと予想されます。現在、ReFi市場も拡大しており、カーボンクレジットとブロックチェーンを活用したプロジェクトが既に多く存在しています。そのような中で重要となるのが「良質なカーボンクレジットの提供」と「取引の効率性と柔軟性」だと筆者は考えます。ThalloはTwo way bridgeとCaaSというアプローチによりこれらを実現させており、今後ますます成長が期待されています。
Two way bridgeに関してはThallo以外にもC3やFlow Carbonといったプロジェクトが取り組んでおり、カーボンクレジットをトークン化する際のスタンダードになっていくと考えられます。また、CaaSのAPI連携は革新的であり、その他のReFiプロジェクトと差別化ができている印象でした。カーボンクレジットのマーケットプレイスに取り組んでいるプロジェクトは多く存在しますが、APIを通じて企業のウェブサイト上でカーボンクレジットの購入を顧客に提案できるアプローチは非常に面白いです。
多くのReFiプロジェクトは企業に対してCO2排出量の削減方法として、カーボンクレジットのマーケットプレイスを提供していましたが、そこに顧客は介入することができませんでした。しかし、Thalloは企業のウェブサイト上でオフセットソリューションを提供する選択肢を与えることができ、顧客へのブランディングとしての役割も果たしています。企業としてはカーボンクレジットで自社のCO2排出量を削減する以外にも、ブランド価値の向上による売上増加へ繋げたいというのが本音なので、Thalloは上手く価値提供ができています。引き続きThalloの動向に注目していきたいと思います。
mitsui
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