DePINでありReFi!?センサーを配布し大気データを収集する「PlanetWatch」とは?

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参照:PlanetWatch

目次

  1. PlanetWatchとは?
  2. PlanetWatchの仕組み
  3. PlanetWatchの展望は?

PlanetWatchとは?

PlanetWatchは、環境データを収集し、分析するためのグローバルネットワークを提供することを目的として設立されたプロジェクトです。設立は2019年で、拠点はフランスです。欧州原子核研究機構(CERN)に在籍していたクラウディオ・パリネッロ博士を中心に設立され、大気汚染に関する問題をブロックチェーンを通して解決することを目指しています。PlanetWatchは、地球上のあらゆる場所からの環境データを収集し、それをブロックチェーン上で管理します。これにより、データの透明性、信頼性、不変性が保証されます。これは、環境変化に関するデータがしばしば不透明で、信頼性が低いという課題を解決します。

後ほど詳しく解説しますが、その仕組みを簡単に言えば「大気中のデータを収集するセンサーを個人が購入し、そのデータを収集し巨大なネットワークを構築する」というものです。センサーを購入する個人には報酬として$PLANETトークンが配布されます。尚、利用しているブロックチェーンはAlgorandチェーンです。

この仕組みは直近のweb3業界のトレンドの1つである「DePIN」と言えます。DePINとは「Decentralized Physical Infrastructure Network(分散型物的インフラストラクチャーネットワーク)」の略称で、トークンを活用して分散型で物理的なインフラストラクチャーネットワークを構築するプロジェクトの総称です。例えば、GoogleMapを代替することを目標とするDePINプロジェクトの「Hivemapper」は、一般ユーザーの車にセンサーを搭載し、センサーを搭載した車を運転することによってデータを収集します。一般ユーザーはその分トークンによる報酬を獲得することができ、普段の運転にセンサーを取り付けるだけで新たな収益源を確保することができます。

参照:hivemapper

「Hivemapper」のように物理的なインフラを分散型で管理する良さは、一企業のサービスが停止したりバグが起こることによる連鎖的なリスクを減らせる点と、リアルタイムのデータを常に更新していける点にあります。

GoogleMapは素晴らしいサービスで、一般ユーザーだけでなく、GoogleMapのAPIを利用したサービスが数多く存在する社会インフラです。ですが、Googleに依存したサービスであり、そこにバグが起こると社会全体が混乱する可能性もあります。また、世界中のデータを常にリアルタイムデータに更新し続けることは非常に難しいという側面があります。

「Hivemapper」は分散型で管理され、データを更新するセンサー付きの車が世界中に存在するのでリアルタイムデータを更新し続けることができます。また、HivemapperのAPI提供による収益によって、ユーザーへの還元に利用するトークンの原資が確保されるので、持続的なトケノミクスを構築することができます。DePINはこのように物理的なインフラを代替する存在として注目を集めており、分散型のUberや分散型のサーバーサービスなども台頭しています。

少しDePINの説明が長くなりましたが、PlanetWatchは環境問題をブロックチェーンを通じて解決するReFiプロジェクトの1つでありながら、まさにこのDePINプロジェクトの1つでもあります。一企業が大気中のデータをリアルタイムで収集し続けることは非常に困難であるため、センサーを販売し一般ユーザーからのデータ提供を募ることで大規模なデータセンターを構築します。そして、一般ユーザーにはトークンによる報酬を付与することでお互いにメリットのある関係を構築することができます。

PlanetWatchの仕組み

では、その仕組みをより詳細に説明します。基本的にはセンサーを配布してデータを提供してもらう形ですが、センサーは全部で5種類存在し、そのセンサー毎にライセンスを購入する形となります。センサー毎の差は計測できる大気中の物質の差がメインです。その他にも重さやネットワークの繋ぎ方などの細かい差も存在しますが、それは以下の画像を参照ください。

まずは2種類のアウトドアデバイスです。外に設置するタイプのセンサーですね。価格としては左側の「Airqinoが1.978€(約31万円)」で「Trutleが499€(約7.9万円)」です。前者はSIM内臓のため価格が高くなっています。

続いてインドアデバイスです。価格は左側の「Sensedge Miniが699€(約11万円)」で右側の「IN5が399€(約6.3万円)」です。

最後の1つは持ち運びができるウェアラブルデバイスです。こちらは価格表記がありませんでした。

これらのセンサーを購入し、以下のライセンスを契約します。Type1~4がありますが、これは上記のデバイスの説明欄にTypeが書かれているように、デバイス毎にTypeが設定されており、それに適したライセンスを契約する形になります。このライセンスを契約することで報酬となるトークンが配布されるようになります。Type1はデバイスの金額も高いですが、最も多くのトークンが配布されます。

この仕組みによって大気中のデータを大規模に収集し続けることに成功しています。収集したデータはマップにて公開されています。

参照:PlanetWatch

また、センサーの個数や収集しているデータの個数、$PLANETトークンの配布状況などもダッシュボードから閲覧できます。執筆時の2023年12月末で配布されているデバイス数は7.3万を超えています。

参照:PlanetWatch

PlanetWatchの展望は?

PlanetWatchは2019年の設立以降、大きく2回の資金調達を実施しています。1回目は2020年5月にイタリアの投資会社RA.MOが主導したシードラウンドで55万ユーロを、2回目は2023年1月にシリーズA前の戦略的ラウンドでBorderless Capitalが主導し300 万ユーロを調達しました。また、それ以外にも2021年11月にはPlanetWatchエコシステムに投資するファンドとして1,000万ドルのPLANET FUNDを設立しています。このファンドにはBorderless Capital、SkyBridge、JUMP Capital、Kenetic Capital、Algorand Inc、Meld Ventures、Youbi Capital などが参加しています。

現在、ReFi市場も拡大しており、またDePIN市場も拡大しているのでPlanetWatchの未来には大きな期待がかけられています。筆者の考察としてもPlanetWatchはそのプロジェクト自体の成長も期待できますが、DePINの思想でプロジェクトを拡大させる在り方もReFi関連のプロジェクトの1つのモデルケースになると考えています。

ReFiプロジェクトの中にも多くの種類がありますが、社会課題を解決するという性質上、フィジカルな世界と連携する機会が多いです。PlanetWatchのような大気データの収集、カーボンクレジットの生成、生態系保護のためのデータ収集など、です。これらに対してのソリューションは多く生まれており、どれもトークンによるインセンティブ設計で一般ユーザーの参加も促していますが、PlanetWatchほどの報酬設計による促しをしているプロジェクトは多くありません。例えば、カーボンクレジットを発行したり、その前のMRV(計測や測定)を分散型で実施するに当たっても、DePIN形式でセンサーを配布することで実現できるかもしれません。

PlanetWatchのリサーチは新しいReFiプロジェクトの形を示す一例となり、非常に勉強になります。引き続きPlanetWatchの動向についてリサーチしていきます!