分散型の気候データインフラストラクチャネットワーク「dClimate」とは?

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参照:dClimate

目次

  1. dClimateとは?
  2. 具体的な4つのプロダクト
  3. 展望は?

dClimateとは?

「dClimate」はチェーンに依存しない分散型の気候データインフラストラクチャネットワークです。

地球温暖化などによって異常気象が続く中で、気候に関するデータの重要性は年々上昇しています。気候は企業活動に影響を与え、個人投資家が自身のアセットを保護したり投資対象の選定を実施する際に参考になります。また、当然ながら個人が生活するに当たっても正しいデータが必要になります。世界のGDPの70%は天候の影響を受けており、気候データは気候変動をより深く理解し、そのリスクに対する適応および回復力戦略を構築する上で非常に貴重であるため、気候データへのアクセス性、信頼性、透明性を高めることが重要です。

その状況にも関わらず、気候データは断片化されており、また高額で取引されている現状があります。「dClimate」はこのような状況をテクノロジーを活用して解決します。あらゆる主体が気候データをアップロードし、販売できるようにする分散型のマーケットプレイスを構築し、正しいデータが集まり続ける仕組みを構築しています。

dClimateのベースレイヤーは、PolygonとIPFS上に構築されています。さらに、ネットワークはChainlinkの優れた分散型オラクル ネットワークを活用して、オフチェーンの情報をトラストレスにオンチェーンに載せています。

最初にチェーンに依存しないと書きましたが、Polygonチェーンに乗っているのはベースのデータレイヤーの話です。そのデータを活用してプロダクトを構築するのはどのチェーンでも利用することができます。

参照:dClimate

具体的な4つのプロダクト

では続いて、dClimateの提供する4つのプロダクトを見ていきます。前述した通り、dClimateは分散型の気候データインフラストラクチャーを構築していますが、それを活用したプロダクトも開発、提供しています。

①データマーケットプレイス

dClimateのコアプロダクトで、気候データに関するあらゆる情報をワンストップで提供するサイトです。ここでは、さまざまな検証済みソースからの気候データを閲覧でき、独自のデータをアップロードして収益化することもできます。

②CYCLOPS

世界中の自然資本と炭素市場の監視と管理を再構築するために設計された革新的なデジタル測定、報告、検証 (dMRV) プラットフォームです。MRVはカーボンクレジットの生成における必要なプロセスであり、dMRVはそれを分散型で実現します。

③Aegis

企業に詳細かつ実用的なインサイトを提供し、気候変動に関連する財務リスクを理解して軽減するのに役立つ最先端の物理的気候リスク評価ツールです。企業が自社のアセットを登録し、そのアセットに対して気候がどのような影響を与えるのかを継続的に把握することができます。サブスクリプション形式で提供しており、利用する機能によって月額料金はことなります。

④Siren

先進的な農業専門家向けに設計された、動的な気候データ分析プラットフォームです。過去の気象データ、高度な予測、詳細な収穫量分析を組み合わせています。やはり気候データの影響をダイレクトに受ける事業者は農家です。気候を理解することは文字通り死活問題であり、そこに特化したプラットフォームとなっています。

展望は?

さて、ここまでdClimateの概要と具体的なプロダクトを見てきました。最後は展望の紹介と筆者の考察を書いていきます。
dClimateはすでに建設会社、金融機関、保険会社など、1,000社を超えるクライアントがすでに dClimate API を使用しています。

参照:dClimate

元々は気象リスクに特化したブロックチェーンを利用した大手パラメトリック保険プラットフォームであるArbolというクライアントからスタートしました。このArbolはdClimateと一緒に気候関連パラメトリック保険を仕掛けており、この領域はかなり市場規模が大きくなっていきそうだと感じました。

パラメトリック保険とは事前に合意した内容に対してかける保険で、例えば気候パラメトリック保険の場合であれば、天災によって農作物が取れない状況になってしまった場合に備えて農家がパラメトリック保険に入ります。

ただし、ここで問題となるのは天災の把握です。パラメトリック保険は事前に合意した内容が発生したことをトリガーに保険料を支払うのですが、天災が起こったことをどのように把握するのでしょうか。ここで肝となるのがdClimateです。分散型で運営され、オフチェーン情報がトラストレスでオンチェーンに登録されるプラットフォームなので、このdClimateの情報をトリガーに保険料を支払うことができます。そして、この契約と支払いを全てスマートコントラクトで締結しておけば、スムーズに支払いを受け取ることが可能になります。

dClimateのような分散型の気候ネットワークによってこのような気候パラメトリック保険が可能になりました。以前は天災の証明が難しく、支払いタイミングの特定も人に依存してしまい、困難でした。また、それらを人力で行うと当然ながら人件費がかかるので保険料が高額になり、一般農家が入ることは難しかったです。このプロセスが全てスマートコントラクトに置き換えられることで、人件費が抑えられ、手数料が減るので、安い手数料の保険が提供できるようになります。

筆者としてもこのような仕組みはブロックチェーンを活用した社会課題の解決の良い事例だと感じます。もちろんこの領域以外でも気候データの領域でdClimateは影響力を発揮しており、今後の躍進も非常に楽しみです。