米国証券取引委員会(SEC)は7月23日、気候関連情報開示規則に関する訴訟において、第8巡回控訴裁判所に提出した現状報告書で、同規則を実施する意思がないことを事実上認めた。キャロライン・クレンショー委員は同日の声明で、SECの対応を厳しく批判した。
裁判所は4月24日、SECに対して、2024年3月に採択された気候関連情報開示規則について「見直しや再検討を行う意図があるか」を明確にするよう指示していた。さらに、仮に訴訟で敗訴した場合でも規則を遵守するかどうかの説明も求めていた。SECの現状報告書は、現時点で規則の見直しを行わないとしたものの、将来の方針については「政策決定を予断することになる」として回答を避けた。
クレンショー委員は声明で、現在の4人の委員のうち3人が規則に対して批判的な立場を取っており、SECが訴訟での規則の弁護からも撤退している事実を指摘。「委員会は気候関連情報開示規則を発効させる意図がないことを、誰もが知っている」と述べ、SECが真実を語ることを避けていると批判した。同委員は、規則を廃止したいのであれば、行政手続法に基づく正式な規則制定プロセスを経るべきだと主張している。
気候関連情報開示規則は、上場企業に対して気候変動リスクや温室効果ガス排出量の開示を求めるもので、2024年3月に採択された。しかし、複数の州が規則の無効を求めて提訴し、現在も係争中となっている。マーク・ウエダ委員代行(当時)は3月27日、「コストがかかり不必要に侵害的な」規則の弁護を停止すると発表していた。今回のSECの対応は、規則の実質的な棚上げを意味し、米国における気候関連情報開示の義務化に大きな影響を与える可能性がある。
【参照記事】Statement on the Commission’s Status Report in the Climate-Related Disclosure Rules Litigation

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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