目次
- LEEDとは
- LEEDが注目される背景
- LEEDの認証取得事例
3-1.日本郵政本社ビル
3-2.IKEA前橋 - LEEDの課題
- まとめ
1 LEEDとは
LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)とは、建築物や都市の環境性能に関する国際的な評価・認証システムのことです。アメリカの非営利団体、米国グリーンビルディング協会(U.S. Green Building Council、USBC)が開発・運営し、Green Business Certification Inc.が認証審査を担当しています。世界186の国と地域で、197,000以上のLEED認証プロジェクトが展開されています(2024年末時点)。
LEED認証の取得には、グリーンビルディング(建物の建設・運営にかかるエネルギーや資源効率、健康や生活の質、環境性能の向上に配慮して設計された建築物)としての必須条件を満たし、選択項目でクレジットを獲得することが求められます。クレジットは、気候変動に関する内容が35%、健康が20%、水資源が15%、生物多様性が10%、グリーンエコノミーが10%、コミュニティと自然資源に関する内容が5%という構成です。
認証レベルは、選択項目で獲得したポイント数によって4段階に分けられます。
- 標準認証(40-49ポイント)
- シルバー(50-59ポイント)
- ゴールド(60-79ポイント)
- プラチナ(80ポイント以上)
(※参照:U.S. Green Building Council「LEED rating system」)
(※参照:GREEN BUILDING JAPAN「LEED とは」、「クレジット」)
LEED v5
LEEDの認証システムは定期的に更新されており、2024年時点では「LEED v4」と「LEED v4.1」を中心とした認証が行われています。2025年初旬に「LEED v5」が開始される予定です。
LEED v5は、「脱炭素(Decarbonization)」「生活の質(Quality of life)」「生態系の保全と回復(Ecological conservation and restoration)」の3領域を評価の軸とし、様々なプロジェクトに対応すべく主に4つの認証システムで構成されています。
- LEED BD+C(Building Design and Construction):建築設計と建設
- LEED ID+C(Interior Design and Construction):インテリア設計と建設
- LEED O+M(Operations and Maintenance):既存の建物の運営と維持管理
- LEED ND(Neighborhood Development):近隣地区や地域の開発
(※参照:U.S. Green Building Council「LEED v5」、「What’s new in LEED v5」)
2 LEEDが注目される背景
カリフォルニア大学バークレー校の研究によると、LEED認証を受けた建築物は従来の建築物と比べ温室効果ガス排出量に減少傾向が見られました。水の消費に起因する温室効果ガス排出量は50%削減、固形廃棄物由来の排出量は48%削減、輸送・交通由来の排出量は5%削減という傾向です。LEED認証を通じて、自然環境の保全と生活環境の向上に寄与する建築物が増えることが期待されます。
また、LEED認証の取得により建築物の環境性能が対外的に示されることで、建築物の資産価値向上につながる可能性も指摘されています。USGBCの調査によると、2010年から2020年に認証を受けたLEED認証の建築物は、従来の建築物より家賃が11%高く、空室率は抑えられ、利益率が高い傾向にありました。また、エネルギー消費量も25%減少し、光熱費も抑制されたという調査結果もあります。さらに、アメリカでは州によって、LEED認証の建築物に対して税務メリットを設けられている場合もあります。
建築物を建設・運営する企業や自治体にとっても、LEED認証は建築物の資産価値の向上や近隣地域の活性化につながる可能性があると言えるでしょう。
(※参照:U.S. Green Building Council「Top 10 reasons to certify to LEED」)
3 LEEDの認証取得事例
日本では、2024年12月13日時点で301件のプロジェクトがLEEDの認証を取得しています。ここではそのうち二つの事例を紹介します。
(※参照:GREEN BUILDING JAPAN「日本のLEED認証プロジェクト リスト」)
3-1 日本郵政本社ビル
東京都千代田区の日本郵政本社ビルにおける本プロジェクトは、2009年度版の「LEED-CI(Commercial Interiors)」でゴールド認証を取得しました。日本のLEED認証事例としては早期の事例です。
LEED-CIの各カテゴリー(敷地、節水、エネルギー、材料、室内環境、革新性、地域)において合計62ポイントを獲得。照明電力の最適化や、当時先進的だったLED照明をオフィス全体に設置し、米国空調衛生学会の定める省エネ基準に対して30%以上の省エネ性能を実現したと評価されました。
(※参照:日本郵政「日本郵政本社における LEED-CI(2009年版)ゴールド認証の取得」)
3-2 IKEA前橋
群馬県前橋市にあるIKEA前橋は、2024年5月に「LEED BD+C v4」でゴールド認証を取得しました。IKEA前橋は、2024年1月にIKEA国内13店舗目としてオープン。LEED認証の取得は、同社国内店舗で初めてです。
同社によると、EV充電器の設置や太陽光パネルの追加設置など、イケア・ジャパンが取り組んできた様々なサステナブルな取り組みが同店舗に集約されています。なかでも、節水器具と外気風量モニタリングの採用が特徴的です。
節水器具はトイレやレストランのキッチンエリアなどに導入され、店舗運営における使用水量の節約に取り組んでいます。また外気風量モニタリングは、室内換気量の確保や空調における省エネを実現するために導入。店舗内の空気環境をモニタリングし、基準値を外れた場合にはアラートがあがる仕組みです。
(※参照:IKEA「イケア、国内店舗で初めてIKEA前橋が「LEED GOLD®認証」を取得」)
4 LEEDの課題
LEED認証は、アメリカ発祥の認証制度でありながら世界的な広がりを見せ、アジア、ヨーロッパなど多くの国で認証事例が出てきています。USGBCの発表によると、申請数の地域別割合は、アメリカ・カナダが66%、東アジアが12%、ヨーロッパが9%、南アジアが4%です(2021年時点)。
また2022年の調査では、2017年から2021年の5年間で申請数は年平均20%伸びています。認証数は、2018年から2019年にかけて一時減少したものの、それ以降は増加傾向にあります。
LEEDプロジェクトの申請数の増加が今後も期待できる一方で、LEED認証の有効性を懸念する声もあります。その理由として、LEED認証システムは、LEED O+M認証システムを除き、一度取得すると再認証は必要なく、認証を維持することができるためです。
例えば、過去に認証を取得した建築物が、最新のテクノロジーと比較すると必ずしも環境性能が高いとは言えない場合も、LEED認証を取得していることを対外的にアピールし続けることができるのです。
こうした課題に対し、USGBCは、全ての認証システムにおいて再認証を推奨し始めています。また、「Arc Building Performance Platform(Arc ビルディング・パフォーマンス・プラットフォーム)」という建築物の環境性能を継続評価するプラットフォームを開発。脱炭素、エネルギー、水資源、廃棄物、利用者体験などの軸で、建築物の環境性能をモニタリングするよう呼びかけています。
(※参照:NYU-Schack Institute of Real Estate「Opinion: LEED Buildings, Why Would You Not?」)
(※参照:USGBC「LEED works: Myth-busting」)
5 まとめ
LEEDは、環境に配慮した建築物や近隣地区の開発を評価・認証する国際的なシステムとして、アメリカを中心に世界各地の建築プロジェクトに採用されています。LEED認証を通して、利用者が環境性能の高い建築物を選びやすく、また投資家が持続可能な不動産投資を行いやすくなり、建築業界における持続可能性が後押しされることが期待されます。

伊藤 圭佑

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