事業承継の新しい選択肢を提供する米国のスタートアップが日本市場に参入。MUFGグループのMUIPから資金調達

米国発の事業承継スタートアップTeamshares Inc.(チームシェアーズ)は2月21日、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の連結子会社である株式会社三菱UFJイノベーション・パートナーズ(MUIP)から資金調達を受け、日本市場へ参入すると発表した。東京を拠点とした日本法人として合同会社チームシェアーズを設立し、専属のスタッフによる活動を展開。日本の中小企業が直面する後継者不足問題を解決するため、新たな解決策を提供していく。

米国も、中小企業の後継者不足問題に直面している。高齢化した「ベビーブーマー世代」のうち約半数の約115万人が今後10年で引退するのに伴い、後継者がいないケースは70%にも上ると言われる。

チームシェアーズは2019年創業、中小企業の後継者不足を解消する「従業員承継実現モデル」を提供している。経営の安定した中小企業を、引退を控えた事業主から買い取り、20年かけて従業員の持分比率を80%にまで移行するというビジネスモデルだ。

買収された企業は再度の売却や閉業のリスクが無くなり安定した経営を続けることができ、引退する事業主と株主となる従業員、企業、そして地域コミュニティにまで利益をもたらすとしている。

米国では31の州、42の業界で90社の中小企業を買収し、2500名以上の従業員オーナーが誕生した。同社は「従業員による事業承継」を中小企業の新たな選択肢とすることをミッションに掲げ、従業員が8割の株式を保有する企業を1万社に増やし、100億ドルの株式資産を従業員にもたらすという目標を掲げている。

日本では、経営者の高齢化や資金負担の重さ、事業承継の準備不足などにより、2025年までに全国の中小企業・小規模事業者で平均引退年齢の70歳を超える経営者は245万人にのぼる。このうち、後継者未定の経営者がおよそ半数の約127万人になることが見込まれている(中小企業庁調べ)。

MUIPはMUFGのオープン・イノベーション戦略を担うコーポレート・ベンチャーキャピタルとして、2019年1月に設立された。現在、国内外で5つのファンド(ファンド総額約800億円)を運営し、スタートアップへの戦略出資と出資先スタートアップとMUFG各社との協業の推進に取り組んでいる。今回の出資を「チームシェアーズの海外展開と引退する中小企業経営者のための斬新な出口戦略を日本市場にも普及させる」ための後押しと位置付ける。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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