米議決権助言大手2社、テキサス州のDEI・ESG制限法に反発 表現の自由侵害と提訴

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米国の大手議決権行使助言会社グラスルイスとISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ)は、テキサス州を相手取り、企業の多様性・環境・ガバナンスに関する助言活動を制限する州法の差し止めを求める訴訟を起こした。両社は、6月に成立した同州法が憲法修正第1条で保障される表現の自由を侵害すると主張している。国際通信大手のReutersが7月24日、報じている。

問題となっている州法は、9月1日に施行予定で、全米初の試みとして注目される。同法は、議決権行使助言会社がDEI(多様性・公平性・包摂性)やESG(環境・社会・ガバナンス)に関する「非財務的」助言を行う際、「株主の財務的利益のみを考慮したものではない」という警告文を目立つように表示することを義務付ける。さらに、助言内容を裏付ける財務分析の提供も求めている。

グラスルイスとISSは、テキサス州オースティンの連邦地方裁判所に提出した訴状で、同法が州政府の望む見解を強制的に発信させるものだと批判。特に、共和党州議会議員が「極左的傾向」とみなす問題について、助言会社の見解と異なる州の立場を代弁させられる恐れがあると指摘した。両社は、顧客に対して自社の助言が「悪影響を及ぼす」「株主の財務的利益に反する」と伝えることを強制されれば、顧客を失い、評判も損なわれると懸念を表明している。

ISSは訴状で、同法が企業の取締役や経営陣を保護し、取締役会に対する重要な牽制機能である株主の議決権行使を妨げるものだと主張。「テキサス州の反資本主義的実験は誰の利益にもならない」と厳しく批判した。グラスルイスは1,300以上の機関投資家を顧客に持ち、ISSは2024年に約2,000の顧客に対して約51,500件の株主総会での議決権行使助言を提供したという。

この訴訟は、米国でDEIプログラムへの逆風が強まる中で起きた。多くの企業が今年、DEIプログラムへの支援を縮小または終了しており、ドナルド・トランプ大統領は2期目の重要課題としてこれらのプログラムの撤廃を掲げている。被告となったケン・パクストン州司法長官(共和党)は2026年の上院選出馬を予定しているが、今回の訴訟についてコメントを控えている。

【参照記事】Glass Lewis, ISS sue Texas over law limiting DEI, ESG proxy advice

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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