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NFTreeとは?
「NFTree」は、植林によるCO2削減証明をオンチェーン上でNFTとして発行することでカーボンニュートラルを実現するプロジェクトです。
NFTreeという単語はNFTとTreeを組み合わせた造語で、NYの植林を支援するプロジェクトやGamaFiで利用されるNFTの名称として利用されている事例が見られますが、ここではスペインを中心に植林等の社会問題の解決に従事する「Micorriza協会」とブロックチェーンプロジェクト「Crown Platform」による共同プロジェクトである「NFTree」について解説します。
まずは共同運営者の「Micorriza」と「Crown Platform」について紹介します。
Micorriza協会 / Asociacion Micorriza
Micorrizaは、農村地域の自然および文化遺産を保護し、環境をより尊重する社会を変革するために活動する社会環境団体です。スペインの多くの地域で発生し多大な影響を及ぼしているこれらの問題を解決するために2013年に設立されました。環境保全や再生をボランティアの方々と共に行っています。
Crown Platform
「Crown」は、環境に優しいマスターノード・プルーフ・オブ・ステーク(Masternode Proof of Stake)を採用したブロックチェーンです。ネイティブトークンとして$CRWを発行しています。2014年から運営している歴史が古いブロックチェーンで、その運営や開発は$CRW保有者の提案及び投票により決定されています。
NFTreeはこの二者が共同で実施しているプロジェクトです。つまり、Micorrizaが行っている植林等の活動によるCO2削減の活動証明をCrownを利用してオンチェーン化してNFTで発行しているわけです。
Crownをカーボンニュートラルなブロックチェーンへ
NFTreeの活動は2020年からスタートしており、パイロット版として「Crownがトランザクション時に排出するCO2をオフセットする取り組み」が実施されました。この取り組みによって、Crown PlatformはそのCO2排出量の約75%を相殺し、業界で最も効率的なブロックチェーンプラットフォームとなりました。
実際のカーボンクレジットの創出(CO2削減の行動)はMicorrizaが主体となって行われ、そこで行われた計測データが全てオンチェーン上に刻まれました。例えば、以下のような計測がされました。
区画の位置、境界、頂点と中心座標、樹種、測定方法、CO2オフセットの総量などが細かく計測され、それら全てがブロックチェーンに刻まれており、誰でも閲覧することが可能です。以下のようにCrown上にトランザクションが刻まれています。
展望と考察
上述した通り、NFTreeは2020年からスタートし、2020年、2021年とCrownをカーボンニュートラルなブロックチェーンとするパイロット版を実施しました。HPには進行中の作業として以下の3点が挙げられていました。
- 他の企業や団体でも利用できるCO2削減証明書NFT発行プラットフォームの開発
- 発行したNFTの転送フレームワークの開発
- 農業向けのNFTレジストリ。樹木をNFTとして登録しトレースできる仕組みの開発
ただし、それ以降の更新は書かれてなく、それぞれのプロジェクトのSNSはあるのですが、NFTreeとしてのSNSは存在していないので、現在の稼働状況は不明です。MicorrizaとCrownは現在も活動中です。
筆者の感想として、カーボンクレジットのオンチェーン化もそうですが、カーボンニュートラルなブロックチェーンの運営はこの先の主流となると感じています。コンセンサスアルゴリズムはPoWのままだと電力消費が多いと批判され、PoSを採用するチェーンが多い点、大企業がPolygonを始めとするPoS採用チェーンを採用する理由に”環境に優しいチェーンである”点を強調して発表する点を鑑みても、ブロックチェーン自体の環境への配慮は避けられません。
例えば、Polygonは2022年4月に、「グリーン・マニフェスト:地球とのスマートコントラクト」を発表し、カーボンニュートラルの実現を目指す取り組みをスタートさせています。KlimaDAO等と連携し、最終的にカーボンマイナスにするため、カーボンクレジットの購入に2,000万ドルの拠出を発表しました。
Unveiling the Green Manifesto – a smart contract with Planet Earth!https://t.co/p9DFtUG9XP [1/2] pic.twitter.com/Xgn8jubffa
— Polygon (Labs) (@0xPolygonLabs) April 12, 2022
こういった動きを2020年からスタートさせているNFTreeは非常に先進的な取り組みと言えます。よって、NFTreeというプロジェクト自体がこの先も展開されていくのかは分かりませんが、パイロット版として示されたユースケースはこの先の多くのブロックチェーンプロジェクトやNPO/NGOの活動のモデルケースとなるかもしれません。
mitsui
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