Polkadotのパラチェーンを運営するグリーン市場におけるインパクト開発会社「Bitgreen」とは?

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参照:Bitgreen

目次

  1. Bitgreenとは?
  2. Bitgreenのサービスは?
  3. Bitgreenの変遷は?
  4. Bitgreenの展望を考察

Bitgreenとは?

「Bitgreen」は、ブロックチェーン、AI、その他のツールを使用して、グリーン市場や持続可能性市場に数十億ドルを動員する市場をリードする製品を開発するインパクト開発会社です。「Bitgreen」チェーンの開発・運営をしており、カーボンクレジットの発行と販売などグリーン市場に関するあらゆるNFTやFTを誘致しようとしています。また、チェーンだけに留まらず自社でウォレットの開発や再生可能エネルギーの調達支援、AIを使ったカーボンニュートラル市場の効率化にも取り組んでいます。よって、単なるチェーンプロジェクトを超えたインパクト開発会社と名乗っています。運営はBitgreen Swiss Associationと呼ばれるスイスに登録された非営利団体で、本部はスイスにあり、米国、ドイツ、ドバイに遠隔オフィスがあります。

基盤にあるのは「Bitgreen」チェーンですのでまずはそこを解説します。Bitgreenは、Polkadotのパラチェーンとして持続可能なイノベーションと成長に取り組む独自のブロックチェーンを開発し、立ち上げました。第29回Polkadotパラチェーンオークションで勝利を収め、2022年11月にジェネシスイベントを開催しました。正確に言えば、Polkadotの背後にあるチームであるParityによって開発された製品である Substrate SDKを使用して構築されています。

現在マルチチェーン対応も進めており、Polkadotの他にPolygonに接続することもでき、それ以外のチェーンにも対応する予定とのことです。ブロックチェーンですのでネイティブトークンは存在するのですが、現状一般販売はされていません。ネットワークへのアクセス、アプリ サービスとガス料金の支払い、ネットワーク ガバナンスへの参加にのみ使用されています。

では続いて、ブロックチェーン以外の提供するサービスについて見ていきます。

Bitgreenのサービスは?

Bitgreenの提供するサービスは主に「カーボンクレジットの発行」と「再生可能エネルギーの資金調達支援」と「独自ウォレット」の3つです。1つずつ解説します。

①カーボンクレジットの発行

Bitgreen独自の「トークン ブリッジ」を使用して、ブロックチェーン上に現実世界の資産のデジタル表現を作成します。この取り組みと技術力が評価され、2023年3月には、ゴールド スタンダードの今後の新しいデジタル資産の準備フェーズのブロックチェーン パートナーとして選ばれました。これは、Bitgreenのゴールドスタンダードが監査し発行するカーボンクレジットをブリッジしてトークン化して、オフチェーンの対応するものと同じ属性、権利を体現します。そして、Bitgreenトークンが購入、譲渡、または廃止されると、そのアクティビティが同時に自動的に現実世界のクレジットに反映されます。

これ以外にも企業向けにカーボンクレジットの購入支援を行ったり、カーボンクレジット発行のファイナンス支援を行ったり、特定のブロックチェーンのカーボンフットプリントを測定し、Bitgreenのカーボンクレジットでオフセットする取り組みもしています。実際にWeb3 Foundationから200,000ドルの研究助成金を獲得し、PolkadotとKusama ブロックチェーン ネットワークを組み合わせたものと、参加しているすべてのパラチェーンのカーボンフットプリントをリアルタイムで計測するダッシュボードも構築しています。

②再生可能エネルギーの資金調達支援

太陽光発電などの再生可能エネルギーの施設開発には巨額の資金が必要です。かつてはそれはプライベート・エクイティによって資金調達されていましたが、Bitgreenはブロックチェーンを活用することでその資金調達を支援します。細かいスキームはリサーチした範囲で書かれていませんでしたが、株式をセキュリティトークンとして販売するか、債券などのグリーンボンディングをトークン化して販売するなどが考えられます。共通プラットフォームを提供しているわけではなく、プロジェクト1つ1つに対して固有のソリューションを提供していると考えられます。

ESG投資は世界的に投資商材の1つとして盛り上がっていますが、一般投資家がESGに投資できる機会はまだ多くありません。未上場企業であればその機会はほとんどありません。そこでBitgreenは未上場企業でもブロックチェーンを活用して投資できる機会を創出し、グリーンプロジェクトには資金調達の選択肢を増やします。

③独自ウォレット

Bitgreenブラウザウォレットと呼ばれる独自ウォレットを開発しています。Polkadotと Kusamaのマルチアセットweb3ウォレットとなっており、対応チェーン上のトークンに加えて、Bitgreenエコシステムで購入したカーボンクレジットなどのトークンも一覧で把握することができます。

Bitgreenの変遷は?

Bitgreenは2021年に活動をスタートさせました。独自チェーンを構築し、ESG関連のweb3プロジェクトのホームとなることを目指しています。クリプトネイティブなユーザーとグリーンプロジェクトの推進者を初期ターゲットに定め、活動を開始しました。

創業チームは3名です。Battlestar/KeyFi (セルシウス ネットワークに売却) の共同創業者、TheFund.vc の共同創設者マネージングディレクターのAdam Carver、KeyFiと0xb1の共同創業者のDennis Reichelt、Raleigh & DrakeとOnly Six Degreesの共同創業者のGilad Gorenです。全員が連続起業家であり、経験豊富なチームです。

資金調達に関しては、これまでに2度実施しています。1度目が2022年12月でRepublicと呼ばれる株式投資型クラウドファンディングを利用しています。合計1,886名の投資家から、4,972,905ドルの調達に成功しています。

2度目は2023年1月でHead and Heart Capitalからシードラウンドで資金調達を行っています。調達額は非公開です。

Bitgreenの展望を考察

最後は筆者による考察となります。

Bitgreenは独自チェーンとして評価を高めており、実際にゴールドスタンダードのオンチェーン化の実証パートナーにも選ばれています。カーボンクレジットのオンチェーンへのブリッジの需要は高まっており、ここを透明性高くトラストレスに実施できるブリッジソリューションには間違いなく価値がつきます。

懸念としては独自チェーンとして成長させていくことの困難さです。ReFi領域で非常に勢いのあったCeloもETHエコシステムのL2チェーンに移行することが検討されており、領域特化で自分たちだけでエコシステムを構築していく難しさが表面化しています。Bitgreenは最初からPolkadotエコシステムの中で成長させているので、完全に自エコシステムだけに閉じているわけではありませんが、Polkadot自体が成長しなければ同じことが起こるので、この辺りも注目して見ていきたいと思います。

しかし、自社に技術がありブランドと知見が確立されているプロジェクトであれば、チェーンを移行することはそこまで大きなリスクにならないとも考えています。昨今は簡単にブロックチェーンが構築できるツールが多く生まれていることから、領域特化チェーンやアプリ特化チェーンが珍しくありません。よって、今後のブロックチェーン業界はどのチェーンにするのかも大切ですが、その上に存在するアプリケーションの存在感が強いと感じます。

Bitgreenの持つカーボンクレジットのブリッジソリューションや再生可能エネルギーの資金調達支援はチェーンに縛られずに開発可能であると仮定すると、現在の活動で実績とブランドを作った上で、その時々で最も盛り上がっているチェーン上にソリューションを展開していくことができます。Bitgreenもチェーンだけに依存しエコシステムを作ることが難しいとわかっているからこそ、ブロックチェーンプロジェクトでありながら、自社のことをインパクト開発会社と呼んでおり、ソリューションを開発し、AIにも投資しているのかもしれません。ソリューション自体もですが、その経営戦略にも注目して情報を追いかけていきたいと思います。