責任ある企業同盟(RBA)の取り組みである責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)は10月20日、同団体が運営する責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)が、欧州連合(EU)輸入業者の紛争鉱物規制(CMR)遵守において、欧州委員会に正式認証された初のサプライチェーン・デューディリジェンス制度となったと発表した。この承認により、EU域内で鉱物を輸入する企業は、RMAPに準拠した製錬・精製業者からの調達を通じて、紛争鉱物規制への対応が容易になる。
紛争鉱物規制は、紛争地域や高リスク地域から鉱物を調達する製錬・精製業者およびEU輸入業者のサプライチェーン慣行が透明で責任あるものであることを保証するために設計されたEU規制である。同規制は、経済協力開発機構(OECD)が定める「紛争地域および高リスク地域からの鉱物に関するデューディリジェンス・ガイダンス」に記載されたリスクベースのデューディリジェンス概念に基づいている。欧州委員会は、RMIのRMAP基準とその実施内容が、紛争鉱物規制とOECDガイダンスの要件に完全に整合していると判断した。今回の承認対象となったのは、RMAP錫・タンタル基準、RMAPタングステン基準、RMAP金基準の3つで、RMAP制度およびRMAP基準に適合した製錬・精製業者にのみ適用される。
紛争鉱物規制への対応は、企業のサステナビリティ戦略において重要な要素となっている。EUは世界最大級の鉱物輸入市場の一つであり、同規制は2021年1月から施行されている。EU輸入業者は、マネジメントシステム、リスク管理、第三者監査、情報開示といった義務を個別に負うが、欧州委員会に承認されたサプライチェーン・デューディリジェンス制度であるRMAPを活用することで、これらの義務への対応が促進される。RMIのエグゼクティブ・ディレクターであるジェニファー・ペイザー氏は「RMIは、サプライチェーン・デューディリジェンス制度として欧州委員会に初めて承認された組織となったことを誇りに思う」と述べ、「RMAP承認は紛争鉱物規制とOECDガイダンスにおける基本的なデューディリジェンス目的を支持し、製錬・精製業者にとってのRMAP参加の価値を拡大し、EU輸入業者に実用的な遵守ツールを提供する」と強調した。
欧州委員会は今後、承認されたサプライチェーン・デューディリジェンス制度の対象となる製錬・精製業者と、加盟国が紛争鉱物規制の実施に関する年次報告の一環として提出した情報に基づき、「世界の責任ある製錬・精製業者リスト」を作成する予定だ。RMIは、EU輸入業者に対してRMAPへの適合証拠を関連する加盟国の所管当局にできるだけ早く提出することを推奨している。また、RMAP適合の製錬・精製業者に対しても、紛争鉱物規制の対象となるEU輸入業者への評価報告書提供を奨励している。RMIは500社以上の会員企業を擁する多業種イニシアチブであり、独立した第三者評価、鉱物報告テンプレート、サプライチェーン・リスク評価ツール、責任ある調達に関するガイダンス文書など、鉱物サプライチェーンのデューディリジェンスに焦点を当てた各種ツールとリソースの開発と国際的な普及に貢献している。今回の欧州委員会による初の制度承認は、責任ある鉱物調達における国際的な基準統一と透明性向上に向けた重要な一歩となる。

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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