OECD報告書、東南アジア・東アジアのプラスチック汚染は2050年に倍増以上と予測。野心的政策で漏出を95%削減可能と提言

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経済協力開発機構(OECD)は7月30日、東南アジア・東アジア地域(ASEAN+3)のプラスチック汚染に関する包括的な報告書「Regional Plastics Outlook for Southeast and East Asia」を発表した。報告書は、現在の政策が続けば、この地域のプラスチック廃棄物量は2050年までに2倍以上に増加し、環境へのプラスチック漏出量は3分の2増加すると警告。一方で、ライフサイクル全体にわたる野心的な政策を導入すれば、環境への漏出を95%以上削減できると指摘し、具体的な政策ロードマップの必要性を訴えている。

この報告書は、ASEAN加盟10カ国と日本、中国、韓国(ASEAN+3)を対象とした初の包括的な分析だ。ベースラインシナリオ(現在の政策を継続した場合の予測)によると、この地域のプラスチック使用量は2022年の1億5200万トンから2050年には2億8000万トンへと倍増近くまで増加する。廃棄物管理システムの改善努力だけではこの急増に追いつかず、不適正に管理される廃棄物の総量は増加し続け、環境への年間漏出量は2022年の840万トンから2050年には1,410万トンに達すると予測されている。

一方で報告書は、強力な政策パッケージを導入する「高厳格度シナリオ」によって、この暗い見通しは回避可能だとしている。このシナリオでは、2050年のプラスチック使用量をベースライン比で28%減の2億100万トンに、プラスチック廃棄物量を23%減の1億8,600万トンに抑制できる。さらに、リサイクル率が現在の平均12%から54%へと大幅に向上することで、不適正処理廃棄物は97%削減され、環境へのプラスチック漏出はほぼゼロにまで削減可能だと試算した。

このような抜本的な対策には経済的なコストが伴うが、地域全体でのGDP損失は2050年時点でベースライン比0.8%と比較的小規模に留まると分析された。しかし、その負担は不均一であり、ASEAN地域全体では2.4%のGDP損失が見込まれるのに対し、日中韓3カ国では0.3%に留まる。特に、インフラの整備が急務であるASEANの低・中所得国(LMIC)では2.8%のGDP損失を伴う可能性があり、報告書は地域内および国際的な協力と支援の重要性を強調している。この報告書は、プラスチック汚染に関する国際条約の交渉が進む中、世界的な汚染のホットスポットである東南アジア・東アジア地域における具体的な政策立案のための重要な科学的根拠を提供するものだ。

【参照URL】Regional Plastics Outlook for Southeast and East Asia

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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