国連貿易開発会議(UNCTAD)は8月1日、プラスチック汚染対策における貿易政策の重要性を示す報告書を発表した。2023年の世界のプラスチック貿易額は1兆1,000億ドル、重量にして3億2,300万トンに達し、生産されたプラスチックの78%以上が国際的に取引されている。一方で、プラスチック代替品の輸出額は4,850億ドルにとどまり、従来のプラスチックの2倍の関税が課されていることが、環境に優しい代替品への移行を妨げていると指摘した。
報告書によると、過去30年間でプラスチック・ゴム製品の関税は34%から7.2%へと大幅に引き下げられた。これに対し、植物由来のプラスチック代替品の関税は平均14.4%と高止まりしている。例えば、プラスチック製ストローの輸入関税が7.7%であるのに対し、紙製ストローは13.3%となっている。このような関税格差が、持続可能な素材への転換を経済的に不利にしている状況が明らかになった。
プラスチック汚染は国境を越えた危機として深刻化している。毎年少なくとも1400種の野生生物がプラスチック汚染の悪影響を受けており、プラスチックの98%が化石燃料由来で、年間1.96ギガトンのCO2相当量を排出している。さらに、プラスチック廃棄物の大部分が陸上や海洋環境に流出し、頻繁に国境を越えて移動している。特に沿岸部の開発途上国や小島嶼開発途上国(SIDS)は、自国で発生させていないプラスチック汚染の影響を不均衡に受けている。
UNCTADは、2025年8月にジュネーブで開催される国際交渉委員会(INC-5.2)での国際的な法的拘束力のある文書(ILBI)の策定に向けて、貿易政策の見直しを提言している。具体的には、プラスチック代替品への関税引き下げ、規制の相互承認の推進、環境に配慮した廃棄物管理への投資拡大、デジタル税関システムの活用、データシステムの強化などを挙げている。報告書は、プラスチック汚染が「国境のない危機」であり、貿易が解決策の一部でなければならないと強調し、貿易と投資政策を活用した公正な移行を促進する世界的なプラスチック条約の必要性を訴えている。
【参照記事】Global Trade Update (August 2025): Mobilising trade to curb plastic pollution
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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