ESGに取り組むスタートアップの93%が価値を実感、MPowerとBCGが調査

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ESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まり、日本でも大企業を中心にESGを重視する動きが進む。一方で、スタートアップは限られたリソースのなかでESGに取り組む方法を模索している状況だ。ESG重視型グローバル・ベンチャー・キャピタル・ファンドのMPower Partners Fundと経営コンサルティングファームのボストンコンサルティンググループ(BCG)が9月9日発表した「ESG×スタートアップ レポート:国内スタートアップの現状と、国内外の先進事例に基づいたESGへの取り組み意義/方法」で、回答したスタートアップ企業の90%がESGに関連する取り組みを実践しており、うち93%が効果を実感していることがわかった。

調査期間は今年6月から7月、国内のスタートアップおよびテクノロジー・インターネット関連企業などにインターネットで実施、有効回答数は50社だった。同レポートは調査をもとに、ESGへの取り組みで実感する効果やボトルネック、さらには領域ごとの具体的な取り組み実態を定量的に整理。さらに国内外の先進的なスタートアップ10社へのインタビューから、ESG関連施策を実践する3つの意義と7つのポイントをまとめている。

「ESGへの取り組みの効果を人材面で実感する企業が多い一方で、いざ取り組みを始める際にはリソースや知識の不足、さらには社内の合意形成がボトルネックになっている」とレポートは指摘する。回答企業の9割がESGに関連する取り組みをすでに実践、うち効果を実感している企業は93%と、きわめて高い。

特に実感する効果は「人材の採用・定着」。ESGへの取り組みが自社の事業運営や業績に与える効果を最大3つまで選ぶ項目で、46%が「従業員の定着化・採用促進」を選択した。一方、主なボトルネックは「リソース・知識不足」と「合意形成」が挙がった。ESGへの取り組みを阻害するボトルネックを最大3つまで選ぶ項目では「ESGにリソースを配分する余裕がない」が42%、「知識不足」が16%、「社内でESGへの重要度の認識が人によりバラバラで、取り組み実施の合意形成が難しい」が6%という結果だった。

領域ごとの取り組みでは、「環境」では温室効果ガスの測定・削減の取り組み74%が排出量未測定、64%が削減の取り組みなしと限定的だった。「社会」は女性従業員比率が2割以上の企業は78%にのぼる一方、女性管理職比率が2割以上の企業は26%。また42%の企業がDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の取り組みに未着手だった。

「ガバナンス」では、社内・社外ともに取締役に女性がいない企業は50%、外国国籍者がいない企業は88%だった。事業が軌道に乗り、安定的な成長や収益化を実現しているレイターステージ企業では、97%に内部告発の仕組みがあり、53%が実際に活用していた。データ・プライバシー・インシデント追跡システムを導入している企業は64%で、その企業の53%が実際にインシデントを測定していた。成長ステージの後期段階の企業ほどデータプライバシーを強化していることがわかった。

スタートアップがESGに取り組む3つの意義として①VC(ベンチャーキャピタル)の投資要件としてESGの重要性が増しており今後の資金調達が有利になる②消費者の意識や企業への社会的要請の高まりを受け、売上が(短中期的に)増加する③ESGの取り組みによって成長を阻むリスクを回避できるため、成長が(中長期的に)持続する――が挙がった。

ESGの検討や取り組みにおける7つのポイントは①ESGを自社戦略の一部にする②自分たちが大切にしたい価値観を従業員の評価や採用条件に組み込む③柔軟なガバナンス体制を備える④多様な人材が能力を発揮できる環境を整える⑤リスクを軽減し、リスクの芽にすばやく対処できる仕組みを作る⑥自社の現状を定量的に把握して課題を洗い出す⑦「今できること」から始める――となった。

MPower Partners Fundは、ESGの基礎知識から実践プロセス、各企業における事例まで、スタートアップがESGを理解・実践するために必要なすべてのポイントをプレイブックとしてまとめ、公開している。

【関連サイト】JP) MPower「スタートアップ ESG プレイブック

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