炭素クレジット認証機関大手のVerraは8月26日、農業用地管理(ALM)における炭素プロジェクトの温室効果ガス削減量と二酸化炭素除去量を定量化するデジタル土壌マッピング(DSM)ツール「VT0014」を公開した。リモートセンシングなどの最新技術を活用し、土壌有機炭素(SOC)の蓄積量を空間的に推定することで、従来の土壌サンプリング手法と比較して、より広範囲かつ高精度な測定を可能にする。
新ツールは、データ駆動型モデリング手法の開発、キャリブレーション、検証に関するガイダンスを提供し、モデルの不確実性推定も含む包括的なアプローチを採用している。従来の土壌サンプリング手法では点でしか測定できなかった土壌炭素量を、面的に把握できるようになることで、プロジェクトの信頼性と検証可能性が大幅に向上する。また、コスト効率性の改善により、これまで参入障壁が高かった小規模農家や開発途上国のプロジェクト実施者にも、ALMプロジェクトへの参画機会が広がることが期待される。
現在、このツールは「VM0042 農業用地管理改善方法論」および「VM0032 火災・放牧調整による持続可能な草地採用方法論」での使用が承認されている。Verraは近日中に、これらの方法論におけるVT0014の適用手順を詳述した修正・明確化文書を発行する予定だ。農業分野は、作物栽培や畜産活動、アグロフォレストリーシステムを通じて、2050年までに年間最大9.6GtCO2eの排出削減・除去を達成する可能性があるとIPCCは試算しており、気候変動対策における重要性が高まっている。
農業分野における炭素クレジット市場は急速に拡大しており、世界銀行によると2030年までに年間500億ドル規模に達すると予測されている。日本でも、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」で2050年までに農林水産業のCO2ゼロエミッション化を目指すなど、農業分野の脱炭素化への取り組みが加速している。Verraの新ツールは、こうした世界的な農業脱炭素化の流れを技術面から後押しし、特に測定・報告・検証(MRV)の精度向上により、炭素クレジットの信頼性向上に貢献することが期待される。
【参照記事】Verra Releases Innovative Digital Soil Mapping Tool

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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