EU電池規制が日本企業に迫る変革、サステナビリティ基準で産業再編へ

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欧州連合(EU)が導入した新たな電池規制により、電池セクターの根本的な変革が進行している。8月27日にトルコの国営通信社アナドル通信社(AA)のエネルギー専門メディア「ENERGY TERMINAL」が報じたところによると、コンサルティング企業Eko Etkiが発表した「Battery 2025 Sectoral Sustainability Report」において、EU電池規制と重要原材料法により、生産からリサイクルまでのライフサイクル全体でサステナビリティと透明性が義務付けられ、日本を含む域外サプライヤーにも大きな影響を与えることが明らかになった。

新規制は、電池の設計、生産、使用、再利用、リサイクルの各段階を包括的に規定する。特に注目されるのは、CIRPASS デジタル製品パスポート(DPP)の導入により、カーボンフットプリント、重要原材料の使用状況、リサイクル率、サプライチェーンの透明性などの情報開示が義務化される点だ。電池生産は特にセルとカソード製造工程でエネルギー集約的であり、ライフサイクル全体で大きな炭素排出を伴うため、製造業者は環境要因を考慮した生産プロセスの変革が求められる。

EU域内での自給率向上を目指す動きも加速している。アナドル通信社の取材に対し、持続可能金融専門家のYunus Emre Ertos氏は「EUは域内生産の増加、域内での加工比率の向上、リサイクルからの調達拡大を通じて自給率を高めようとしている」と指摘する。リチウム、コバルト、ニッケルなどの戦略的に重要な原材料については、採掘から加工、回収まで厳格な規則が導入され、持続可能な利用が促進される。この動きは、日本企業にとってリスクと機会の両面を持つ。EU域内生産の増加により輸出シェアへの圧力が高まる一方、サステナビリティ基準と透明性の高いサプライチェーンを確立した企業は、信頼できるサプライヤーとしての地位を強化できる可能性がある。

日本の電池産業にとって特に重要なのは、リサイクルと二次利用技術の強化だ。サステナビリティ専門家のCansu Melis Aksu氏は同メディアに対し、「電気自動車の成長に伴い、使用済み電池のリサイクルと二次利用は、環境持続可能性、経済的利益、資源効率の観点から極めて重要」と強調する。日本企業は回収インフラの強化、官民連携による電池回収チェーンの確立、二次利用技術の研究開発支援に注力する必要がある。また、廃熱回収、プロセスの最適化と自動化、水の回収・処理システム、再生可能エネルギーの統合、デジタル監視技術などのクリーン生産技術の導入により、エネルギーと水の効率性を向上させることで、中長期的な競争力強化につながる。

EU電池規制への対応は、日本の電池産業にとって単なるコンプライアンスの問題ではなく、産業競争力の根幹に関わる戦略的課題となっている。規制に適合した生産体制の構築と技術革新を進めることで、持続可能な成長と国際競争力の維持を両立させることが求められている。

【参照記事】EU battery regulations to transform energy sector with sustainability standards – Anadolu Agency ENERGY TERMINAL

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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