オーストラリアの生産性委員会は、同国がクリーンエネルギー目標を達成するための包括的な政策変更を推奨する中間報告書を公表した。報告書は、電力部門のインセンティブを市場ベースのメカニズムへ転換することや、環境法の改革によるインフラ承認の迅速化などを柱としている。ビジネスと政治を横断的に扱う独立系メディアCapital Briefが、8月3日付で報じた。
この提言は、政府の経済改革円卓会議に先立って発表されたもので、最終報告書に向けた草案と位置付けられている。生産性委員会は、現在の再生可能エネルギー目標や設備投資スキームに代わり、市場ベースのインセンティブに転換し、技術や地域に中立な形で最低コストでの排出削減を目指すべきだとした。
また、排出目標達成に伴うコストを抑制するため、2026年から27年に予定されている見直しの一環として、セーフガードメカニズムのしきい値を引き下げることや、大型車に対する排出削減インセンティブの導入を求めている。さらに、2030年以降は広範な市場設定を優先し、技術や管轄を問わず最も安価なクリーンエネルギーへの投資を促す全国的なインセンティブを創設するべきだと主張した。
インフラ整備の遅れという課題に対しては、国の環境法を広範に改革し、国家基準の導入やより効率的なオフセット制度の構築を通じて、インフラプロジェクトの承認プロセスを迅速化することを推奨した。優先度の高いプロジェクトについては、専門の「ストライクチーム」と新たな調整官の設置も検討すべきだとしている。このほか、民間投資の障壁を取り除くため、気候リスク情報データベースの創設や、国家規模での住宅の気候レジリエンス評価システムの開発も提言に含まれている。
生産性委員会のバリー・スターランド氏は、「適切な政策設定により、脱炭素化のコストを抑制し、承認プロセスを迅速化することで、より安価で豊富なクリーンエネルギーという機会を解き放つことができる。一貫性のある包括的なインセンティブが、最低コストでネットゼロを達成する鍵だ」と述べた。
同じく委員会のストーキー氏は、「気候目標を達成し、信頼性が高く手頃なエネルギー供給を確保するには、大規模なクリーンエネルギーインフラを建設する必要がある。しかし、我々の承認プロセスは遅く不確実で、その役割を果たせていない。優先プロジェクトに対する可否の判断を迅速化することが、クリーンエネルギーへの移行を有意義に加速させるだろう」と指摘した。
【参照記事】Productivity Commission calls for changes to incentives to reduce emissions

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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