国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)と国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)は8月19日、銀行が自然環境への影響に関する目標を設定するための新たな手法を提案する討議文書「銀行のための自然インパクト目標設定」を公表した。気候変動分野では温室効果ガス排出量の削減目標設定が一般化している一方、自然環境への影響については、ポートフォリオレベルでの標準的な評価手法が確立されていない現状に対応するものだ。
提案された手法は、銀行の融資、投資、引受業務全体における環境負荷の削減を通じて、自然環境の状態改善を目指す「インパクト目標」の設定を支援する。具体的には2段階のプロセスで構成されており、第1段階の「特定フェーズ」では、顧客グループごとに自然環境への圧力や依存関係などの重要データを収集し、顧客活動が自然環境に与える影響を把握する。第2段階の「目標設定・行動計画フェーズ」では、銀行が具体的な目標を設定し、顧客と協働して目標達成に向けた行動を実施する。
この手法は、責任銀行原則(PRB)の生物多様性目標設定ガイダンスや、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のLEAPアプローチ、科学的根拠に基づく目標ネットワーク(SBTN)の目標設定プロセスなど、既存のフレームワークを基盤として開発された。討議文書には、各ステップの実践的な事例や、銀行が直面する可能性のある課題と制約についても詳述されている。UNEP FIとUNEP-WCMCは現在、銀行業界や市民社会団体からのフィードバックを募集しており、特に詳細な意見交換を希望する銀行や、提案手法の試験導入に関心のある金融機関からの連絡を求めている。
今回の提案は、2022年12月に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組みの目標達成に向けた金融セクターの取り組みを加速させる狙いがある。自然関連リスクの評価と管理は、気候変動対策と並んで金融機関の重要な経営課題となっており、標準化された目標設定手法の確立は、銀行業界全体の自然環境保全への貢献度を高める重要な一歩となることが期待される。
【参照記事】Nature Impact Target Setting for Banks

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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