欧州自動車工業会(ACEA)は8月26日、自動車産業の最新動向をまとめた年次報告書「ポケットガイド2025/2026年版」を発表した。同報告書によると、2024年のEU域内の自動車生産台数は前年比で減少し、乗用車は1,150万台、商用車は約10%減となった。電気自動車(EV)市場では、バッテリー式電気自動車(BEV)のシェアが初めて縮小に転じるなど、欧州自動車産業が転換期を迎えていることが明らかになった。
今回のポケットガイドでは、EV普及の重要性の高まりを反映し、充電インフラに関する新たな章が追加された。ACEAによると、加盟企業は現在EU市場で約290種類の充電可能なEVモデルを提供しているものの、充電インフラの不足や購入インセンティブの弱さといった環境整備の遅れが需要の伸び悩みにつながっている。EVバンやトラックの新規登録も停滞しており、唯一電動バスのみが堅調な成長を維持している状況だ。
一方で、自動車産業の研究開発投資は依然として活発で、2023年には850億ユーロを投じた。これは前年比120億ユーロ増で、民間セクターで2番目に多い業界の2倍の投資額となる。世界の自動車登録台数は2.7%増加し、EU市場のシェアも22%にわずかに上昇したが、生産拠点としての欧州の競争力維持が課題として浮き彫りになった。
貿易面では、EU域外との取引が金額・数量ともに減少したものの、940億ユーロの貿易黒字を維持し、米国と英国が引き続き主要輸出先となっている。環境面では、2005年以降、車両1台あたりのCO2排出量と水使用量がいずれも50%以上削減されるなど改善が進んでいる。道路安全性も向上し、EU域内の交通事故死者数は1.3%減少した。今回の報告書は、急速に変化する自動車セクターの現状を把握するための重要な資料として、政策立案者や業界リーダーに活用されることが期待される。
【参照URL】The Automobile Industry Pocket Guide 2025/2026

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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