【重要ニュースまとめ(12/24~12/30)】米国でデジタル証券管理の枠組みが規定。自己管理型ウォレットへの規制に対する反対声明が続出

今回は、12月24日〜12月30日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. 新型コロナウイルス経済対策で再び給付金を支給
  2. 自己管理型ウォレットへの規制案に対する反対声明
  3. 米国でデジタル証券管理の枠組みが規定
  4. まとめ、著者の考察

今週(12月24日〜12月30日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、米国証券取引委員会(SEC)によるデジタル証券の管理規制や、自己管理型ウォレットに対する規制案への反対声明などが話題となりました。また、暗号資産市場への流入がみられた給付金の再支給も米国で承認されています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

新型コロナウイルス経済対策で再び給付金を支給

米議会により可決された新型コロナウイルス対策のための、9000億ドルの追加経済対策案にトランプ大統領が署名しました。基本合意から1週間が経過し、給付金額の引き上げを要求していたトランプ大統領でしたが、年末年始によるガバメントシャットダウンを回避することを優先したようです。

給付金は、米国政府から国民の口座に直接振り込まれます。米国には、銀行口座を有していない国民も数多く存在していることから、給付金の支給はデジタルドルの是非に関する火種にもなりました。デジタルドルであれば、銀行口座よりも遥かに普及しているスマートフォンに対して直接振り込むことができるからです。

今回、基本合意に至った給付金の支給額は600ドルとされています。トランプ大統領は、法案には可決したものの依然として支給額を2000ドル(未成年には600ドル)に引き上げるよう要求しました。いずれにせよ、暗号資産市場への影響が少なからず発生しそうです。

というのも、米国では経済対策の第一弾となる給付金1200ドルを、4月中旬に支給しています。これに関して、米大手暗号資産取引所CoinbaseのCEOブライアン・アームストロング氏は、支給直後に1200ドル単位での入金が急増したことを明らかにしました。

タイミングと入金単位からみても、経済的に安定している層への給付金がそのまま暗号資産投資に回されたとみて良さそうです。今回の給付金支給後にも、同様の動きがみられるかもしれません。

なお、今回の新型コロナウイルス追加経済対策予算案は、140兆円相当の2021会計年度連邦政府予算案と一体になって可決されます。つまり、トランプ大統領は1日で230兆円を超す予算案に署名したことになるのです。

国民への給付金だけでなく、市場に溢れ返った資金が株式や金、そして暗号資産などの市場に引き続き流入することは間違いないでしょう。2021年も暗号資産が世間を賑わせそうです。

【参照記事】Coronavirus stimulus update: Congress agrees to $900 billion relief bill
【参照記事】Statement from the President

自己管理型ウォレットへの規制案に対する反対声明

米財務省の進める自己管理型(non-custodial)ウォレットの規制案について、大手取引所のCoinbaseとKrakenが声明を発表しました。パブリックコメントの募集期間が短いことや金融包括が失われる懸念を表明しています。

財務省より11月末に発表された規制案では、取引所から個人の管理するウォレットに暗号資産を出金する際に、3000ドルを超えるものは厳格なKYC(本人確認)が必要になるというものです。

現状、自己管理型のウォレットには本人確認の必要はなく、自己責任の範囲で利用するものとなっています。自分の資産は自分の責任で管理する、至極当然なことです。

しかしながら、財務省はこの自己管理型のウォレットにまで本人確認を義務付けようとしています。厳密には、取引所からの出金時に使用するものに限られるため、個人間での送金に使用するものは対象外となるものの、ほとんどの暗号資産取引は取引所を起点に行われます。

背景には、FATF(国際金融作業部会)の整備するトラベルルールへの対応が影響しているのでしょう。

これに対してCoinbaseやKrakenは、まずパブリックコメント(パブコメ)の募集期間が短すぎるとする声明を公表しました。今回の法案に対するパブコメ期間はわずか15日間しか用意されておらず、しかもクリスマスと年末年始を挟む形になっています。

一般的には60日間に設定されるパブコメ期間ですが、恐らくは現体制の任期満了日までに本法案を通す意向なのでしょう。これに対しては、本来あるべき国民との協議を避けるための対応であるとして、業界内から痛烈な批判が寄せられています。

CoinbaseとKrakenからは、金融包括に関しても言及されています。自己管理型ウォレットは匿名性に長けており、煩雑なアカウント開設プロセスが発生しないことから、スマートコントラクトで取引が完結するDeFi市場などで重宝されてきました。

仮に法案が可決され自己管理型ウォレットに本人確認が義務付けられると、上記の特性が失われ、利用時に氏名や住所の登録が必要になります。これは、住所を持たない人々が暗号資産へアクセスする手段を失う可能性があることを意味しているのです。

Krakenによると、米国には銀行口座を持たない国民が全体の25%も存在しているといいます。こういった人々は、先述の新型コロナウイルスへの経済対策によって支給される給付金を受け取ることができていません。これは、所得が低かったり居住地を有していないがために、既存金融を享受できなかったことによる弊害です。

DeFiの本質は金融包括であり、銀行口座を持たないような人々にもスマートフォンさえあれば金融サービスを提供できる点にあります。既存金融でカバーできなかった低所得層への金融アクセスを実現するには、本人確認を必要としない自己管理型のウォレットが必要なのです。

【参照記事】FinCEN’s New Rule Is About to Wall Off the Poor from Our Financial System Forever
【参照記事】Coinbase’s response to recent proposed rulemaking from the U.S. Treasury and FinCEN

米国でデジタル証券管理の枠組みが規定

正式にリップル社および経営陣への訴訟を起こした米証券取引委員会(SEC)が、デジタル証券の管理に関する枠組みを整備する方針を明らかにしました。定義されれば、世界で初めてのことになります。

今回の枠組みでは、暗号資産の証券性を定義するものではないものの、暗号資産も対象になるであろうデジタル証券に関して事業者が管理する際のルールを取りまとめたものになるといいます。

つまり、今回の枠組みで整備された条件を満たした事業者が、仮に暗号資産を取り扱うことを認められた場合、その暗号資産は証券として認定されることになるのです。

現状、SECはビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のみを証券ではないとして定義しています。この根拠は、発行体が十分に分散化されているかどうかです。SECによると、ビットコインやイーサリアムには約1万のマイナーが存在しており、証券性が疑われているXRPはリップル社によって独占的に発行されているといいます。

確かに、特定の管理者によって発行されているものであれば、それはコモディティではなく証券ということになるでしょう。暗号資産特有の性質からみても、分散性に欠けるものは透明性が欠如していることが多く、Web3.0の思想からは外れることになります。

なお、暗号資産の証券性はブロックチェーンにも大きな影響を与えるのではないかと考えています。なぜなら、証券と認定された暗号資産は、暗号資産取引所で扱うことができなくなるため、価格の上昇が期待できなくなってしまうからです。

ブロックチェーンプロジェクトのほとんどは、長期的な価格上昇を前提に独自トークンを発行します。営利事業ではないケースが多いため、発行時からのトークン価格の上昇分のみがプロジェクトの運営費になるからです。

従って、今回のSECの方針は業界全体にとって無視できないトピックであるといえるのではないでしょうか。

一方で、今回の枠組みが暗号資産の分散化を加速させることに繋がる可能性もありそうです。DeFi市場を中心に、自律分散型組織(DAO)による運営形態が市民権を得つつあります。ガバナンストークンによる投票権をベースにしたDAOが主流となることで、トークンが証券として認定される可能性は低くなるでしょう。

なお、デジタル証券の管理に関して、事業者は以下の条件を満たすことで、暗号資産が仮に証券であると判断された場合でも問題なく取り扱うことができるといいます。

  • 事業者は、デジタル証券を対象にした事業を取引および管理に限定している
  • 事業者は、デジタル証券を取り扱うためにブロックチェーン上で価値の移転ができる機能を有している
  • 事業者は、デジタル証券を正式な登録明細書に基づいて取り扱い、証券法に遵守した上で取り扱い記録を保管している
  • 事業者は、秘密鍵の紛失や盗難を防ぐために最大限の運用体制を整備している
  • 事業者は、証券法に基づく顧客保護を優先し、デジタル証券の有する潜在的なリスクについて顧客に説明している

【参照記事】SEC Issues Statement and Requests Comment Regarding the Custody of Digital Asset Securities by Special Purpose Broker-Dealers

まとめ、著者の考察

先週のリップル社への提訴に続き、年の瀬にも関わらずSECが積極的な動きをみせています。これには、政権交代による任期の満了が関係していそうです。

個人的には、ルールを作るだけ作っておいて運用に関しては次の政権に任せるといったスタンスでは、適切な規制は整備されないのではないかと懸念を抱いています。米国での取り組みは数年後に日本に入ってくるものが多く、民間の意見を広く受け入れてここでは慎重な意思決定を行ってもらいたいものです。

2021年はCBDCやトラベルルールが本格化することが予想されるなど、国家を巻き込んだ大きなトピックが控えています。将来的な日本の市場を予測するという意味では、現時点における米国の動きを注意深く観察しておくのも良いのではないでしょうか。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。