LSE教授「ビットコインは未来の通貨ではない」、金融政策面から考察するビットコイン経済

世界トップレベルとされる研究・教育を誇る英国の大学LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)の教授Paul De Grauweが、ビットコインが未来の通貨になりえない理由をSocial Europeで発表した。マイニングにかかるコストについても触れているが、より重要な理由としてビットコインの供給量が定められていることが引き起こす問題を挙げている。

ビットコインの供給量は定められているため、これを支払い手段として使うと慢性的なデフレが起こるという理由を挙げている。「世界経済が成長する過程で、多くの貨幣供給が必要とされる。仮にビットコイン経済でこのニーズに応えようとすると、財やサービスの価格を下げていくしかない。貨幣数量説に従えばビットコインの流通速度を上げる方法も考えられなくはないが、その方向性には限界がある」と同氏は述べている。

資本主義には事業家が率先してリスクを取るという想定がある。事業家はおおむね楽観的で、将来売り上げが伸びるに違いないと期待してリスクを取る。この楽観視こそが資本主義経済を大きく動かす原動力だ。にも関わらずビットコイン経済でデフレが進めば、消費が停滞し、投資家は投資を控えるようになり、楽観的な見通しができない社会の成長は落ち込むこととなる。

同氏は「ビットコインの供給量が定められているということは、金融危機の際に最後の貸し手がいない。中央銀行が最後の貸し手として機能する場合、何も無いところから貨幣を生み出せるという前提があるが、マネーストックがあらかじめ定められている(あるいは一定の割合で増える)暗号通貨はその原理上、貨幣を生み出すこともできず金融危機を解決することが難しいだろう。(中略)最終的な貸し手がいないビットコイン本位主義は金本位制と同じ時代遅れの発想で、未来の制度ではない」と続けている。

ビットコイン経済の問題点は、今後確実に起こる金融危機の際にはビットコインよりも流動性が高い資産への逃避が想定されることにある。本来はこうした金融危機で役割を担う中央銀行は、ビットコイン経済の非中央集権制によって排除されてしまっているため、流動性が担保しきれないままデフレと債務不履行をもたらすこととなる。

金融政策という観点から「常に金融危機が隣り合わせにある資本主義システムの中ではビットコイン経済は持続できるものではない」と同氏は考察しており、ビットコインを通貨として扱うことに対する懸念を明らかにしている。一方で、「ビットコインバブル」はさまざまな問題を抱えながら今もなお継続中だ。市場に冷水をかける出来事も多く報道されるなかで仮想通貨はどういった成長を遂げていくのか、注目していきたい。

【参照サイト】Bitcoin Is Not The Currency Of The Future

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木村つぐみ

木村つぐみ

海外ビジネス情報の翻訳、ライティングを幅広く手掛けており、HEDGE GUIDEでは暗号通貨・仮想通貨関連記事を担当しています。暗号通貨・仮想通貨の特に興味深い点は、貨幣の持つ共同幻想性を明るみに出したことだと思っています。初心者の方にも分かりやすい説明を心掛けていきます。