ステーキングとは?概要から事例まで詳しく解説

2017年頃より海外で話題を集めてきたステーキングが、2020年になり本格的に海を渡ってきました。仮想通貨・ブロックチェーン業界におけるマネタイズ手法の一つとして、2020年はステーキングが日本でも大きな注目を集めることになりそうです。

本記事では、ステーキングの概要を解説すると共に、ステーキングビジネスを展開している国内外の事例についても触れていきたいと思います。なお、本記事では便宜上、暗号資産ではなく仮想通貨という言葉を使用します。

目次

  1. ステーキングの概要
    1-1. ステーキングとは
    1-2. ステーキングの仕組みとPoSとの関係
    1-3. ステーキングはなぜ注目されているのか
  2. 国内外のステーキング事例
    2-1. 仮想通貨取引所
    2-2. ステーキング専門事業者
  3. ステーキングに対する今後の展望

ステーキングの概要

ステーキングとは

ステーキングとは、特定の仮想通貨を保有することで、その通貨のブロックチェーンネットワークを管理することに貢献し、対価として報酬を得る仕組みです。厳密には、仮想通貨を保有するだけでなく、ネットワーク上にロック(預け入れ)しておく必要があります。例えるのであれば、銀行口座に法定通貨を貯金し、一定期間後に利子を受け取る仕組みに類似しているといえるでしょう。

ステーキングは、PoS(Proof of Stake)のコンセンサスアルゴリズムを採用している通貨で行うことができます。従って、ビットコインや2020年1月時点でのイーサリアムのような、PoW(Proof of Work)を採用している通貨は対象になりません。

ステーキングの仕組みとPoSとの関係

仮想通貨を機能させるために必要なブロックチェーンは、PoWやPoSといったコンセンサスアルゴリズムによって管理方法が決まります。コンセンサスアルゴリズムとは、全てのブロックチェーンに共通する「トランザクション(ブロックチェーンのブロックに格納される各取引のこと)」の検証を行うための仕組みです。

PoWの場合、トランザクションの検証を行っているのがマイナーであり、検証行為自体をマイニングと呼んでいます。マイニングは、複雑な計算処理をノードと呼ばれるコンピュータが長時間かけて行うものです。そのため電力消費が激しく、環境への悪影響や非効率性が問題視されていました。また、マイニングを行うためには高性能のコンピュータが必要になるため、資本力のある一部のマイニング事業者による寡占化が進み、ブロックチェーンの非中央集権性が危惧されています。

そこで登場したのがPoSです。早い者勝ちのPoWとは異なり、PoSでは保有する仮想通貨の量によってトランザクションの検証者が決まります。このとき、ただ保有するだけでは検証することはできず、ブロックチェーンネットワークに自身の保有する仮想通貨をロックする必要があります。このロックする行為こそが「ステーク(Stake)」です。

つまり、ステーキングとはPoSにおけるトランザクション検証の仕組みであり、PoWにおけるマイニングと同じ類いのものになります。従って、前述の通りステーキングの対象となるのは、PoSを採用している通貨のみなのです。

ステーキングはなぜ注目されているのか

PoSは、基本的にPoWの抱える課題を解決する仕組みとして期待されています。従って、PoSへの注目が大きくなるほどステーキングへの需要も高まるといえます。

また、これまでは仮想通貨事業の代名詞が取引所であったように、仮想通貨事業においては、取引所以外での収益化が困難な状態でした。個人が行う事業としても、仮想通貨取引によるキャピタルゲインが収益の大部分を占めています。そのため、仮想通貨を保有することで収益化に繋がるステーキングは、新たなマネタイズ手法として大きく注目を集めているのです。

ステーキングの特徴は、法人・個人を問わず投資家に対して事前に収益の予測を提示できる点にあります。ステーキングが事業として拡大する以前より、PoSを採用している通貨はステークの報酬率を公開してきました。そのため、ステーキングによって取得できるであろう報酬を、事前に算出することができるのです。ただし、ステークの報酬率は各通貨によって異なり、また通貨そのものの価格も常時変動しているため、事前に予測する際には様々な要素を考慮する必要があります。

国内外のステーキング事例

仮想通貨取引所

先述の通り、ステーキングは仮想通貨事業における新たな収益源として注目されています。中でも、「仮想通貨を管理する事業」を元々行っていた事業者とは相性が良く、取引所やウォレットプロバイダによる新規参入が目立っています。この分野は海外が先行しているため、主に海外事例の紹介になりますが、いずれも日本での事業展開を推進中です。なお、取引所の多くはウォレット事業も展開しているため、ここでは取引所のみの紹介にとどめます。

Binance

Binanceは、世界最大級の仮想通貨取引所で、非常に多くの銘柄を取り扱っています。Binanceがステーキング事業の対象にしているのは、Tezos(XTZ)やCOSMOS(ATOM)、Stellar(XLM)などを含む17銘柄です(2020年1月時点)。Binanceは、2018年に買収したTrsut Walletを活用することで、ステーキング事業を拡大し続けています。また、2020年1月には、日本の取引所であるTaoTaoと戦略的提携を発表し、本格的な日本進出に向けての動きを見せました。

Coinbase Custody

取引所事業だけでなく様々な領域に進出しているCoinbaseも、Coinbase Custody(ウォレット事業)を通してステーキング事業へ参入しています。2020年1月時点では、Tezos(XTZ)のみを対象としていますが、今後の拡大が予想できます。Coinbaseは、東京に拠点を構えBinanceと同様、日本への進出を準備しています。

Huobi Pool

大手取引所Huobiグループの運営するHuobi Poolでは、以前よりマイニング事業を展開しており、近年はステーキング事業にも本格参入しています。主に、EOS(EOS)やTRON(TRX)、Ontology(ONT)などが対象です。Huobiは、日本のBitTradeという取引所を買収する形で、既に日本進出を果たしています。

Coincheck

日本でも、Coincheckがステーキング事業へ参入しています。2020年1月時点ではLisk(LSK)のみが対象です。なお、LiskはDPoS(Delegated Proof of Stake)というPoSの派生系となるコンセンサスアルゴリズムを採用しています。

ステーキング専門事業者

ステーキング事業にはまだまだ市場拡大の余地が残されているため、専門事業者の新規立ち上げも相次いでいます。

Staked

機関投資家向けにステーキングサービスを提供しているStakedは、2019年2月にシードラウンドで450万ドルの資金調達を実施しました。米国の著名ブロックチェーンファンドであるPantera Capitalがラウンドをリードし、Coinbase VenturesやMulticoin Capitalなども参加しています。

Stake Capital

機関投資家向けサービスを提供している事業者としては、Stake Capitalも注目されています。Stake Capitalは、分散型金融(DeFi)やステーキングの領域での事業を展開し、PolkadotやLibraといった比較的新しいプロジェクトもサポート対象としている点が特徴的です。

Stir Lab

日本でも、Stir Labがステーキング事業に取り組んでいます。2020年1月時点では、Tezos(XTZ)、COSMOS(ATOM)、IOST(IOST)、Waves(WAVES)の4銘柄が対象となっています。

ステーキングに対する今後の展望

2020年の発展が期待されるステーキングですが、まだまだ不透明な部分も残されています。

特に法律面には注意が必要です。例えば、事業者としてステーキングサービスを提供する場合、顧客の資産を預かる形を取るのか、または顧客から資産を借り入れる形を取るのかによって考慮すべき法律が異なってきます。顧客としてステーキングサービスを利用する場合においても、利用するサービスが法律を遵守した形で提供されているのか確認する必要があるでしょう。さらに、ステーキングは自身の仮想通貨をロックすることになりますので、当然、持ち逃げなどのカウンターパーティリスク(第三者を信頼する際のリスク)が発生します。

また、ステーキングは理論的には仮想通貨の価格を下げることに繋がります。市場に出回る仮想通貨のうち、ステーキングによってロックされる割合(ロック率)が上昇すると、市場での流動性が低くなります。一方で、新規発行によって供給量が増えるため、需給のバランスが崩れる要因となり得るのです。

ただし、ロックすることで通貨の売り圧力が減少し、市場における需要を高める可能性も考えられます。仮想通貨の価格形成は非常に複雑であるため、しばらくは市場の動きに注目する必要がありそうです。

海外で先行しているステーキングですが、日本国内でも日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)がステーキング部会を立ち上げるなどの動きを見せています。2020年の注目トピックの一つとして、ステーキングの動向を追ってみてはいかがでしょうか。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。