機関投資家向けの暗号資産市場が活性化。サムスンとウィンクルボス兄弟がタッグを組む − 1週間の重要ニュース(5/25~5/31)

今回は、先週(5月25日〜5月31日)の暗号資産・ブロックチェーン業界重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)が解説したコラムを公開します。

目次

  1. サムスンのスマートフォンで暗号資産取引が可能に
  2. 機関投資家向け市場が活性化
  3. インドの暗号資産市場に追い風
  4. デジタルドルの全貌が明らかに

先週(5月25日〜5月31日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、暗号資産ブローカー事業に関するトピックが多くの話題を集めました。また、映画「ソーシャル・ネットワーク」でお馴染みのウィンクルボス兄弟が、韓国大手サムスンとの提携を発表しています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

サムスンのスマートフォンで暗号資産取引が可能に

韓国大手家電・電子製品メーカーのサムスンが、暗号資産取引所Geminiと提携したことを発表しました。これにより、サムスンの販売するスマートフォン内蔵のブロックチェーンウォレットから直接、暗号資産の取引が可能になります。

Geminiは、ウィンクルボス兄弟が設立した暗号資産取引所です。今回のサムスンとの提携では、Geminiの暗号資産取引機能をサムスンのウォレットに提供するといいます。

サムスンは、以前より自社で製造および販売しているスマートフォンに、暗号資産を管理可能なウォレットを標準搭載してきました。ウォレットは、ユーザーが自身で暗号資産を管理するノンカストディな形態となっています。

これまでにGalaxy S10やS20シリーズに搭載されてきましたが、今後はGalaxy Z Flip、Galaxyノート10シリーズ、Galaxy Foldにも搭載される予定です。対応銘柄は、BTCやETHなどの主要銘柄を中心に、BATやMKRといったトークンも幅広く扱っています。

Geminiは、「400万人を超えるサムスンのスマートフォンユーザーに対して暗号資産の取引機会を提供できる大きな取り組みである」と公式声明を通してコメントしました。

【参照記事】Gemini Integrates With Samsung Blockchain Wallet
【参照記事】サムスンが仮想通貨取引所ジェミニと提携、Galaxyにはウォレットアプリが搭載予定

機関投資家向け市場が活性化

米国最大手取引所Coinbaseが、暗号資産ブローカー事業を手がけるTagomiの買収を発表しました。TheBlockによると、買収額は7,000万ドルから1億ドルに及ぶといいます。今回の買収は、これまでにCoinbaseが買収してきたどの案件よりも高額です。

Tagomiは2018年に設立されたばかりの企業であり、暗号資産のブローカー事業の盛り上がりが伺えます。これまでに、大口トレーダーやヘッジファンド、富裕層のファミリーオフィスを中心にサービスを提供してきました。ヘッジファンドには、Pantera CapitalやBitwise、グレースケール親会社のDigital Currency Groupなどが名を連ねます。

Coinbaseは、過去1年でCoinbaseカストディに対する機関投資家からの需要が高まったことを受け、今後のさらなる事業強化を強調しています。今回の買収により、TagomiはCoinbaseの持つ豊富な資産を、CoinbaseはTagomiの持つマーケットの専門知識と優良顧客を、それぞれ獲得し活用していくことができるようになりました。非常に良い買収だったといえるでしょう。

また時を同じくして、米国大手カストディ事業者のBitGoも、暗号資産のブローカー事業に参入する声明を発表しました。BitGoは、ビットコイン取引における全体の20%を占めているといわれる大手ウォレット事業者です。

27日にBitGo Primeと呼ばれる新たなサービスを開始し、機関投資家向けに事業展開を進めます。BitGoの提供する既存システムと統合することで、より高度なトレーディングプラットフォームの構築を目指す方針です。

暗号資産市場が盛り上がりをみせる中で、徐々に機関投資家の参入が目立つようになってきました。CoinbaseやBitGoの他にも、GenesisがVo1tを買収するなど競争が激化しつつあります。

【参照記事】米大手カストディのBitGo、仮想通貨ブローカー業を開始
【参照記事】Coinbase shakes up the crypto prime broker race with its acquisition of Tagomi
【参照記事】BitGo Reinvents Institutional Digital Asset Trading With the Launch of BitGo Prime

インドの暗号資産市場に追い風

中国に次ぎ世界最大規模の人口を誇るインドで、暗号資産市場が徐々に成長を続けています。

インドの暗号資産取引所CoinDCXは、総額250万ドルの資金調達を実施したと発表しました。Polychain Capitalがラウンドをリードし、Coinbase Venturesなどが参加したといいます。

巨大な人口を抱えるインド市場は長年世界中から注目を集めてきました。暗号資産取引に関しても、取引高の順調な拡大傾向が報じられています。

一方で、過去にはインドの中央銀行が各民間銀行に対して暗号資産事業者へのサービス提供を禁じる通達を行なっているとの動向が、度々話題になってきました。しかしながら22日、インドの中央銀行であるインド準備銀行(RBI)が、上述の通達は行なっていないとの公式声明を出したのです。

これにより、インドにおける暗号資産市場が更なる盛り上がりをみせています。

【参照記事】インド暗号資産(仮想通貨)取引所CoinDCXがCoinbase VenturesとPolychain Capitalから250万ドルの資金調達
【参照記事】「銀行は暗号資産企業にサービスを提供する」──インド中央銀行が声明を発表
【参照記事】India central bank gives green light for crypto firm bank accounts

デジタルドルの全貌が明らかに

昨今話題の中心に居続けているCBDCに関して、米国「デジタルドル」プロジェクトのホワイトペーパー(事業計画書)が公開されました。デジタルドルは、米国中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)を中心に、デジタルドル財団と民間企業のアクセンチュアが発行に関わっているといいます。

ホワイトペーパーでは、米ドルのデジタル化に伴うメリットや流通方法などが説明されています。具体的なメリットとしては、金融取引の時間短縮やコスト削減、米ドルの利用拡大などがあげられました。

デジタルドルの発行に際しては、既存の法定通貨に代わる存在ではなく共存させる意向だといいます。利用シーンは国内に限らず国際送金にも及ぶとされ、利用者のプライバシーや本人確認(KYC)、アンチマネーロンダリング(AML)も考慮し、規制要件を満たすよう設計していくとされています。

FRBによると、既存の金融政策やインフレ対策には影響を与えないよう注意していくとのことです。新型コロナウイルスの影響による各国の緊急経済対策には、十分な考慮が必要だといえるでしょう。

デジタルドルプロジェクトの次のステップは、一連のパイロットプログラムを経てシステムを構築し、十分なテストを実施していくことだといいます。利用例としては、国内外での決済や政府の給付金支払い、個人間送金など幅広く見込んでいると公表されました。

CBDCへの取り組みは、日本の中央銀行である日本銀行も幾度となく方針を公表しています。その中で日本銀行の雨宮副総裁は、CBDCの発行による民間への影響を危惧し続けてきました。CBDCの発行は民間事業を圧迫する恐れがあり、官民競合の姿勢が生まれてしまうといいます。

自国通貨が機能していない国ではCBDCの早急な発行が期待されるものの、米国や日本のような先進国においては、発行に際して慎重な検討を重ねなければなりません。

【参照記事】米デジタルドルプロジェクト、ホワイトペーパーを発表
【参照記事】Digital Dollar Project lays out its plan for a US digital currency

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。