ビットコイン半減期直前の動きをおさらい、Deribitが日本市場から撤退 − 1週間の重要ニュース(5/4~5/10)

今回は、ビットコイン半減期直前の動きと5月1日に施行された法規制の影響について、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)が解説したコラムを公開します。

目次

  1. ビットコインの半減期が間近に迫る
  2. ビットコイン価格100万円に到達
  3. Deribit(デリビット)が日本市場から撤退
  4. トラベルルールに共通規格が登場

今週(5月4日〜5月10日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、目前に迫ったビットコインの半減期に関する話題で賑わいました。また、5月1日に施行された法規制の影響を受け、海外取引所による日本市場からの撤退が相次いでいます。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

ビットコインの半減期が間近に迫る

ビットコインの半減期が間近に迫ってきています。このまま問題なくブロックの形成が進む場合、半減期は5月12日に訪れる予定です。

4月8日に半減期を迎えたビットコインキャッシュや今回のビットコインのように、暗号資産の多くには半減期が存在します。

半減期とは、マイニングによって新規に発行される暗号資産の量を半減させていく仕組みです。半減期を設定することにより、発行量の引き締めによるインフレ防止と通貨の希少性向上を期待できるのです。

通貨の価値は市場に存在する需要量と供給量によって決まりますが、半減期を境に、それまで存在していた供給量には変化が加えられる一方、需要量に変化は起こりません。従って、理論上は半減期後に通貨の価値が高まるのです。

実際、これまでに2度迎えた半減期後には、ビットコインの価値が高まっています。

  • 1度目(2012/11/28):約1300円、新規発行量:50BTC → 25BTC
  • 2度目(2016/07/09):約7万円、新規発行量:25BTC→12.5BTC
  • 3度目(2020/05/12):今回、新規発行量:12.5→6.25BTC

ビットコインは、約2100万BTCという明確な発行上限を持つ唯一の金融資産であるといわれています。(厳密には20,999,999.9796BTC)

また、半減期は4年に1度訪れるといわれていますが、決して4年と定められているわけではありません。厳密には、21万ブロックごとに訪れるよう設計されており、1ブロックあたり約10分で形成される仕組みであることから、計算上およそ4年に1度訪れるということです。

半減期は、通貨ネットワークを支えるマイナーにとって最も影響のあるイベントであるといえます。マイナーは、ビットコインの新規発行を目的にマイニングを行っているため、発行量が半減されることは非常に重要な意味を持つのです。

3度目となる今回は、多くのマイニング拠点が集まる中国が雨季に入るタイミングと重なるため、水力発電が盛んになり電力コストが安価になるといわれています。そのためマイニングにおける損益分岐点が下がる傾向にあり、半減期によるマイナーの撤退が少なく、ハッシュレート(マイニング速度)も下がらないだろうと予想できるのです。

実際、マイニング難易度を示すディフィカルティは、過去最高に近い16.10Tを記録しています。これは、電力コストが低下する一方、半減期に伴う需要の増加からビットコインの価格が上がり、マイナーが増えたことでハッシュレートが高まった証拠だといえるでしょう。

【参照記事】ビットコインマイナー、半減期前に収益狙う──中国の雨季も好材料か
【参照記事】フォークコイン(BCH、BSV)の事例から推測するビットコイン半減期後のマイナー動向
【参照記事】Bitcoin hash rate and difficulty nears all time highs

ビットコイン価格100万円に到達

5月7日、ビットコインの価格が再び100万円を超え、8日には1万ドルに到達しました。時価総額も1700億ドルを上回っています。

12日を予定としている半減期後には価格が上昇する傾向にあるため、需要が増加したことが背景にあると考えられます。また、新型コロナウイルスの影響により止まっていた米国の経済活動が再開し始め、株式市場と合わせて復調傾向にあることも追い風となっていそうです。

なお、ビットコインを管理するためのウォレットアドレスも、ここ数週間で劇的に増加しています。これは、新型コロナウイルスによる給付金の支給が関係していると考えられます。実際、米国の大手暗号資産取引所Coinbaseによると、米国で1200ドルの給付金が支給された直後、1200ドル単位での入金が激増したといいます。

上記のように、ビットコインを含む暗号資産への需要が増加傾向にある一方、売り圧力の懸念も出ています。

ブロックチェーンに関するデータ分析企業のGlassnodeによると、ビットコインを保有しているウォレットアドレスのうち、85.09%(2579万アドレス)が含み益状態にあることが明らかとなりました。一方で、10.82%(328万)が含み損状態であり、4.09%(124万アドレス)が損益がない状態になっているといいます。

つまり、多くのビットコイン保有者が含み益状態にあるため、半減期後に売り抜ける可能性が考えられるのです。

【参照記事】ビットコイン、17年バブルから続く「重要トレンドライン」へ 100万円突破で
【参照記事】ビットコイン保有アドレス、85%が含み益 アクティブアドレス数は仮想通貨バブル期の水準へ
【参照記事】Bitcoin nears $10,000 as halving fever intensifies

Deribit(デリビット)が日本市場から撤退

海外の大手暗号資産取引所Deribit(デリビット)が、日本の居住者に対して利用制限を実施すると発表しました。これは、BitMEXに次ぐ日本市場からの撤退となっています。

Deribitは、ビットコインのオプション取引で人気を集めていた取引所です。BitMEXと同様、5月1日に施行された改正資金決済法および改正金融商品取引法の影響により、今回の市場撤退を決定しています。

資金決済法により、以前より通常の暗号資産取引を行うには金融庁の認可が必要となっていました。そして今回の金融商品取引法の改正により、オプション取引を含むデリバディブ取引を行う際にも、認可が必要になったのです。

BitMEXやDeribitに続き、今後も海外取引所の日本市場撤退のニュース報じられることでしょう。なお、国内では既にDMMやGMOが免許の取得を発表しています。

【参照記事】仮想通貨取引所Deribit「日本居住者向けサービス」を停止
【参照記事】Deribit moved to block users in Japan after the country tightened its crypto rules. Other derivatives exchanges are weighing their options

トラベルルールに共通規格が登場

半減期に伴い暗号資産市場が盛り上がりをみせている中、金融活動作業部会(FATF)によって発表された「トラベルルール」への取り組みも本格化しています。

FATF(ファトフ)とは、暗号資産に限らずあらゆる金融資産におけるマネーロンダリングを取り締まる組織です。世界各国に対して、金融資産に対する法整備を勧告する役割を持っています。日本でも2度に渡り施行されてきた資金決済法および金融商品取引法は、FATFによる勧告があったために制定されています。

このFATFが、2019年6月に発表したのがトラベルルールです。2020年の予測記事でも言及しましたが、トラベルルールでは各国の暗号資産関連事業者(VASP:Virtual Asset Service Provider)間における暗号資産の送受金に対して、送り主と受取人の個人情報を相互に記録することが規定されています。トラベルルール自体は暗号資産に限った制度ではなく、1996年よりあらゆる金融資産で同様に規定されているため、暗号資産もその対象になったということです。

そんなトラベルルールに今回、新たな通信規格が整備されました。新規格「IVMS101」では、暗号資産の取引と合わせて送り主と受取人のデータを送ることができます。トラベルルールが規定されて以降、対応に非常に多くのコストがかかることにより、暗号資産ビジネスからベンチャー企業が排除される可能性が懸念されてきました。しかしながら、今回の規格が開発されたことにより、トラベルルールへの対応コスト削減が期待できます。

なおトラベルルールの施行により、暗号資産の持つ最大の特徴である「金融プライバシー」が失われる可能性も示唆されています。例えば、匿名通貨と呼ばれる暗号資産には取引の当事者を秘匿化する仕組みが備わっています。

ビットコインやイーサリアムといった主要な暗号資産においてもプライバシー保護の傾向は高まっており、こういった性質に対してどのようにアプローチしていくかという議論は、マネーロンダリングの文脈における今後の課題であるといえるでしょう。

【参照記事】仮想通貨の資金洗浄対策、FATFトラベルルールに対応する通信規格がリリース

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。