ブロックチェーンはゲームコミュニティを豊かにする。NFTによる価値証明が繋げるメタバース

今回は、SF Blockchain WeekとBlockShowによる大規模カンファレンス「UNITIZE 2020」で行われた「ゲーム」をテーマにしたセッション「Case Study: Unlocking Government Transparency with Blockchain」について、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)が解説したコラムを公開します。

目次

  1. Ethereumの起源はゲームにある
  2. ブロックチェーンがゲームコミュニティを豊かにする
  3. ブロックチェーンゲームにおけるユーザー体験とは
  4. NFTによる価値証明とメタバースへの道
  5. まとめ、著者の考察

SF Blockchain WeekとBlockShowによる大規模カンファレンス「UNITIZE 2020」が、7月6日から10日かけてオンラインで開催されました。テーマは「グローバル」「規制」「エンタープライズ」「エコノミクス」「ゲーム」の5つで構成され、日替わりで豪華スピーカー陣が登壇しています。

本記事では、「ゲーム」をテーマにしたセッション「Gaming communities of the future」を取り上げます。スピーカーは下記の3名です。

  • Abel Tedros(アベル氏):モデレーター、Podcastチャンネル運営
  • Sebastien Borget(セバスチャン氏):Sandbox創業者兼COO、ブロックチェーンゲーム協会理事
  • Roham Gharegozlou(ローハン氏):人気ゲームCryptoKitties運営企業Dapper Labs CEO

なお、当日の様子はアーカイブ配信もされています。

Ethereumの起源はゲームにある

まずはモデレーターのアベル氏より、「Ethereum共同創業者のVitalikが、ワールドコンピューターとしてのEthereumを発明したきっかけは、ゲームにあった」という一言でセッションをスタートさせました。

氏によると、Vitalik氏は2010年にWorld of Warcraftというゲームをプレイしていたといいます。Vitalik氏はゲームを進めるにつれ、運営会社による一方的なキャラクターの削除などに直面し、管理者から解放されたゲームコミュニティが必要であると感じたというのです。そして、Ethereumはそこから着想を得たと話します。

これを踏まえ、最初の質問として「良質なゲームコミュニティとは何か」というトピックをスピーカーに投げかけました。

ブロックチェーンがゲームコミュニティを豊かにする

ブロックチェーンゲーム協会で理事を務めるセバスチャン氏は、現状のゲームコミュニティについて次のように述べました。「基本的に全てのゲームは、最低限の洋服を着て庭でボール遊びをしているようなものだ。庭の外に出たいプレイヤーだけが、必要なアプローチを取ることで世界を広げることができる」。

少し抽象的な表現を用いましたが、これについて氏は、ほとんど全てのゲームが「F2P(フリー・トゥ・プレイ)」によって大きな成長を遂げたと補足しています。氏の表現における「庭の外に出る(課金する)」プレイヤーは、約26億人いるといわれるゲームプレイヤーのうちの、わずか5%に過ぎないといいます。

氏は続けて、「この状況に多くの企業は満足しているが、新しいビジネスモデルを求める層が出てきた」と述べました。これが、ブロックチェーンによる分散型のゲームモデルが登場した経緯だといいます。

氏は、「分散型のゲームモデルの方が、開発者とプレイヤーの関係性を良質なものにする」と述べました。プレイヤーは、自分の育てたキャラクターや購入したアイテムを、開発者の管理下から解放できるだけでなく唯一無二のものとして存在させ続けることができるのです。

「ブロックチェーン上でゲームを構築することは、ゲームに関わる全てのステークホルダー間に新たな関係性をもたらし、開発者とプレイヤーに相互利益を生み出す機会を作る」と、氏は続けました。

この意見に対して、Dapper LabsでCEOを務めるローハン氏は次のように述べています。「開発者とプレイヤーのコミュニティという意味では、確かに分散型のモデルの方が良質なものを築けるだろう。しかしながら、開発者はプレイヤーから収益をあげなければならない。これは変わらない事実だ。この観点で分散型のモデルを考察した場合、現状のままではあまりにも少数のプレイヤーからしか収益をあげることができない。これは早急に解決しなければならない課題だといえるだろう」。

人気ゲームCryptoKittiesの生みの親でありDapper LabsでCEOを務めるローハン氏

氏は、ブロックチェーンゲームの先駆けとして市場を切り開いたCryptoKittyの生みの親であり、分散型のモデルでプロダクトを持続させることの難しさを誰よりも実感してきた人物であるといえます。そんな氏の発言からは、分散型モデルの理想と現実に、我々自身も改めて向き合う必要があると感じました。

ブロックチェーンゲームにおけるユーザー体験とは

モデレーターのアベル氏は、ローハン氏の意見を受けて次のように述べました。「現在のゲーム業界は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めて、それを更なる顧客獲得に繋げている。このサイクルをどれだけ延ばせるかでゲームの価値が決まってくるんだ」。

氏は2つ目の質問として、「現状のブロックチェーンゲームにさらなる拡張性と経済圏を構築するためには、何が必要か」というトピックを投げかけました。

Dapper Labsのローハン氏は、「まるで10年前からこのトピックに取り組んでいるように感じるが、実際にはまだ1年半しか経っていない」と前置きした上で、次のように述べています。

「ブロックチェーン自体のスケーリングやガス代の削減など、解決しなければならない課題は山ほど存在している。しかし、私は何よりもユーザー体験が圧倒的に重要だと感じている。従来のゲームと同じ体験を、ブロックチェーンゲームは全くと言っていいほど提供できていない。ここに全ての要素が詰まっているんだ。ブロックチェーンを一般層に広げる役割を、ゲーム業界は担っている」。

ブロックチェーンゲーム協会理事のセバスチャン氏は、ローハン氏の意見を受けて「アプリケーションやゲームで提供している体験とは何か」という疑問を投げかけました。

ブロックチェーンゲームは、従来のゲームとは異なるユーザー体験を提供しています。つまり、既存ゲームと同様の体験を提供することが一概に正しいとは言えないのです。実際、ブロックチェーンゲームのプレイヤーには一定の「NFT投資家」と呼ばれる層が存在します。彼ら彼女らは、ブロックチェーンゲームの性質にいち早く気付き、純粋にゲームを楽しむ以外の目的でも利用しているのです。

ブロックチェーンを使ってNFT(Non-Fungible Token)を発行し、ゲーム内のキャラクターやアイテムと紐づけることにより、それが世界で唯一無二の存在となります。これが、ブロックチェーンゲームの提供する新しいユーザー体験です。

セバスチャン氏も、「ブロックチェーンの性質を活かすことで、ゲーム開発者はプレイヤーをコアなコミュニティに引き込むことができる」と述べています。

ブロックチェーンゲーム協会で理事を務めるセバスチャン氏

NFTによる価値証明とメタバースへの道

モデレーターのアベル氏は最後の質問として、「今後ゲームコミュニティに起こりうる変革の中で、何に1番ワクワクしているか」というトピックを投げかけました。

まずはブロックチェーンゲーム協会理事のセバスチャン氏より、NFTについての考察が述べられました。

ブロックチェーンを使って発行されるトークン(暗号資産)には、大きく分けて2つの種類が存在します。1つは、ICOやガバナンス投票で使われる「Utility Token」と呼ばれるもので、一般的に普及しているトークンです。もう1つが「Non-Fungible Token(NFT)」と呼ばれるもので、その名の通り代替が不可能なトークンです。

NFTは、主にコピーされると困るアセットの管理に活用されます。そのため、ゲームや著作権の管理で使われることが多く、更なる活用シーンの拡大が期待されています。

氏は、NFTの活用が想定されるシーンとして、デジタル資産の所有権証明を例にあげました。また、この性質はゲーム以外に絵画や工芸品にも適用できるとし、「NFTによってこれまで以上にモノの価値を高めることができるだろう」と言及しています。

続いてDapper Labsのローハン氏が、「メタバース」について触れました。

メタバースとは何か、を定義するのは極めて困難ですが、一般的にはオフラインとオンラインがより統合されたものといわれています。我々の生活における未来の姿として位置付けられ、GAFAを中心としたあらゆるTech Giantがメタバースの構築を目指しています。

氏は、ゲームの延長には最終的にこのメタバースが存在するといい、そこに到達するにはブロックチェーンが欠かせないと述べました。「ブロックチェーンによって、あらゆるアクションが原子レベルで価値を持つようになり、その所有権を証明できるようになるだろう」として、本セッションを締め括りました。

まとめ、著者の考察

本セッションは、ブロックチェーンゲーム業界の最前線で活躍する2人のスピーカーによる、「未来のゲームコミュニティ」についての内容でした。ゲームは、暗号資産の次のブロックチェーン活用領域として多くの注目を集め、ワールドコンピューターとしてのEthereumにとって、最も重要な課題であるスケーラビリティの問題を浮き彫りにさせた存在です。

CryptoKittiesの生みの親であるローハン氏の言う通り、ブロックチェーンゲームは登場してからまだ数年しか経っていません。目紛しく変化する業界の象徴ともいえるのではないでしょうか。つまりゲームの未来を考えることは、ブロックチェーンの未来を考えることに繋がっているといえます。

日本ではあまり話題になっていませんが、NFTにはまだまだ多くの可能性が残されており、Ethereum上に構築されるという点で、昨今話題のDeFi市場とも相性が良いです。「NFT × DeFi」、著者自身としてはこの領域に、引き続きアンテナを張っていこうと考えています。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。