税金を抑えるための節税はサラリーマン(給与所得者)の方でも行える場合があります。その方法は、法人や自営業の場合と比べると限られますが、税金の仕組みや活用できる控除制度について正しく知ることで、サラリーマンの方でも所得税・住民税を抑えることが可能です。
そこでこの記事では、サラリーマンの方に課される税金の仕組み、節税方法、それぞれのメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。税金を少しでも安くしたいと考えているサラリーマンの方は参考にしてみてください。
目次
- サラリーマンでも節税できる?
1-1.所得計算
1-2.所得控除
1-3.所得税額計算
1-4.税額控除 - サラリーマンが使える節税手段6選
2-1.扶養控除、配偶者控除
2-2.生命保険料控除
2-3.医療費控除
2-4.ふるさと納税(寄付金控除)
2-5.住宅借入金等特別控除
2-6.iDeCoの活用 - まとめ
1 サラリーマンでも節税できる?
サラリーマンの場合、基本的に勤務先から支給される給与に対して税金が課されます。給与に課されるのは大きく分けて、「所得税」「住民税」という2つの税金があり、これらの税金は基本的に給与から直接天引きされる「源泉徴収」という方法で納付する仕組みです。そして払っている税金の金額は給与明細等で確認できるようになっています。
所得税とは、個人の所得(=儲け)に対して課される税金です。所得税は、①所得計算→②所得控除→③所得税額計算→④税額控除という4つのステップを経て税額が決まります。
まずは、サラリーマンの税額が決まる流れを確認してみましょう。
1-1 所得計算
所得税の計算基礎となる所得の金額は、発生した原因ごとに所得を10種類に分類して計算します。企業から支給される給与は給与所得という所得区分に該当し、収入金額から給与所得控除額を差し引いた金額が所得金額です。まずは、以下の令和2年以降に適用される給与所得控除額表を参考に、簡単な例を挙げながら確認してみましょう。
【給与所得控除額】
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%−10万円 (55万円に満たない場合、55万円) |
180万円超〜360万円以内 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超〜360万円以内 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超〜360万円以内 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超〜 | 195万円(上限) |
(参照:国税庁ホームページ)
例えば、給与で年間500万円の収入がある方の給与所得の計算は、次のようになります。
給与所得=500万円-(500万円×20%+440,000円)
=500万円-(100万円+440,000円)
=356万円
このように、給与所得では給与所得控除額を差し引いた金額が所得金額となります。給与所得控除額は自営業の必要経費のような性質のもので、給与を得るためにサラリーマンがスーツや革靴などを買う費用などの必要経費を簡便的に控除できる仕組みです。そのため、サラリーマンが給与を得るために支出するこれらの費用は、基本的に経費として申請することができません。
なお、給与を得るために支出した金額が一定水準を超える場合、確定申告により所得から超えた支出部分を控除できる仕組みはあるものの、給与所得控除額の2分の1を超えた支出でなければ認められず、適用要件もかなり厳格なため、多くのサラリーマンはこの制度を利用できないのが現実です。
1-2 所得控除
所得控除は、「扶養する親族が何人いるか」などの個別の事情を加味して税負担を調整する項目です。例えば、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者(特別)控除などが所得控除に該当します。控除できる金額はそれぞれの控除項目ごとに定められており、その範囲内で所得から控除することが可能です。
1-3 所得税額計算
所得金額から所得控除金額を差し引いて、所得税の計算基礎となる課税所得金額を計算します。所得税には所得が多くなるにつれて段階的に税率が上がる下表のような超過累進税率が適用されており、課税所得金額に税率をかけた金額から控除額を差し引いた金額が所得税額となります。
【所得税の速算表】
課税される所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超〜330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円超〜695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円超〜900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円超〜1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円超〜 | 40% | 279万6000円 |
(参照:国税庁ホームページ)
例えば、所得控除を差し引いた課税所得金額が300万円の場合、所得税額は以下の計算式で求めることができます。
所得税額=300万円×10%-97,500円
=30万円-97,500円
=202,500円
1-4 税額控除
税額控除とは所得税額から一定の金額を控除できる制度です。この制度は所得控除とは違い、税率をかけた後の所得税額から直接所得税を控除できます。例えば、マイホームを購入した場合に適用できる住宅借入金等特別控除、バリアフリーの改修工事などで適用できる住宅特定改修特別控除などが税額控除に該当します。
以上が所得税を計算する主な流れです。住民税は多くのケースで10%の税率が適用されますが、基本的には所得税と同様に所得の金額から各所得控除額を差し引き税額計算したのちに税額控除を差し引いて納税額が決まります。そのため、所得税と住民税は、所得控除と税額控除を上手に活用することが納税額を減らすための重要なポイントです。
2 サラリーマンが使える節税手段6選
サラリーマンの方が節税するためには、所得控除や税額控除などの仕組みを上手に活用することが重要です。ここからは具体的な節税手段を確認していきましょう。
2-1 扶養控除、配偶者控除
扶養控除や配偶者控除はサラリーマンの方にも馴染みのある所得控除です。納税者と生計を一にする16歳以上の扶養親族や配偶者がいる場合、一定の要件の下で所得税が控除されます。給与を支払う勤務先へ提出する「給与所得者の配偶者控除等申告書」に扶養親族や配偶者の情報を記載すると、年末調整で扶養控除や配偶者控除が受けられます。
メリット
扶養控除は同居の親族でなくても適用できる点がメリットです。同居していない19歳以上23歳未満の所得が48万円以下の大学生の子供などがいる場合、特定扶養親族として63万円の所得控除を受けることができます。
なお、扶養控除の所得要件は令和2年より「38万円以下」から「48万円以下」に引き上げられています。しかし、給与所得控除額も10万円引き下げられたため、アルバイトなどの給与収入についてはこれまで通り103万円以下が適用ラインです。
また、配偶者については48万円を超える所得がある場合、配偶者控除を受けられませんが、配偶者特別控除を受けられる場合があります。配偶者特別控除は平成29年まで所得76万円未満が適用要件でしたが、段階的に所得要件が引き上げられており、令和2年からは133万円以下の場合に適用することができます。
デメリット
扶養控除や配偶者控除については、特定の親族がいる場合しか所得控除を受けられません。また、配偶者特別控除は配偶者に一定の所得があっても所得控除を受けられる制度ですが、勤務先から支給される扶養手当等は扶養親族の所得に制限を設けている場合もあるので注意を要します。
社会保険の被扶養者となっている場合、収入が130万円以上になると扶養を外れるケースなども出てくるため、勤務先の人事担当者などに相談して所得税以外の手当てや社会保険でも損をしないように考える必要があります。
2-2 生命保険料控除
生命保険料控除とは、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払ったときに所得控除が受けられる制度です。平成24年1月以降に契約した保険については3つの保険それぞれに上限4万円(支払額8万円以上の場合)まで控除可能で、それ以前に契約した旧生命保険と旧個人年金保険では、それぞれ上限5万円(支払額10万円以上の場合)まで控除することができます。
メリット
生命保険料控除はライフプランを立てる上で重要になる生命保険や医療保険などを節税しながら支払える点がメリットです。
デメリット
生命保険料控除のデメリットは控除できる上限金額が定められている点です。例えば、平成24年以降に締結した生命保険については、保険料を12万円支払っていても8万円の保険料を払っている場合と同じ4万円までしか所得控除を受けることができません。
また、保険商品は年々新しい商品が登場していますが、平成23年以前に締結した保険契約を新しい契約に更新した場合、生命保険料控除の上限金額が5万円→4万円に下がるケースなども出てくるため注意が必要です。
2-3 医療費控除
医療費控除は1月〜12月までの1年間で支払った医療費が一定額を超える場合、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除が受けられる制度です。以下の算式で求めた金額を所得の金額から控除することができます。
医療費控除の額=(実際に支払った医療費の合計額-保険金などの補填金額)-10万円
所得金額が200万円未満の方は10万円の代わりに総所得金額の5%に相当する金額を引いた金額が医療費控除の額となります。
メリット
医療費控除は一定金額以上の医療費を支払うと所得控除を適用できる点がメリットです。本来、医療費控除は病気やケガの治療に要した費用が対象となるため病気の予防などに要した費用は対象外となります。しかし、平成29年から新設されたセルフメディケーション税制によってこれらの支出に対しても医療費控除の特例が利用できるようになったため、従来の医療費控除と比較して所得控除の金額が大きくなる方法を選択・適用することも可能です。
デメリット
医療費控除のデメリットは適用する年に確定申告が必要になる点です。医療費の領収書から確定申告に必要な医療費の明細書などを作成しなければなりませんが、これらの作業は手間がかかります。
2-4 ふるさと納税(寄付金控除)
ふるさと納税は都道府県や市町村などの自治体に寄付することで所得控除を受けられる、寄付金控除と呼ばれる所得控除の一種です。
通常の寄付金では寄付した金額から2千円を引いた金額に対して所得税率と住民税率をかけた金額の所得税と住民税が控除されますが、ふるさと納税では通常の寄付金控除では控除できない、寄付金から2千円および寄付金控除による所得税と住民税を引いた残りの金額についても住民税の納税額から特例的に控除されるのが特徴です。
メリット
ふるさと納税は特例措置によって寄付した金額から2千円を引いた金額が所得税や住民税から控除される制度です。寄付する自治体などによっては様々な返礼品が用意されており、実質2千円の自己負担で返礼品を手に入れられます。
なお、寄付金控除の適用には確定申告が必要ですが、確定申告をしないサラリーマンのためにワンストップ特例制度が設けられており、ふるさと納税先が5団体以内の場合、ふるさと納税先の団体に申請することで確定申告も不要になります。
デメリット
ふるさと納税の特例が適用できる金額には上限が設けられているため、上限を超えた金額には通常の寄付金控除しか適用されない点はデメリットです。具体的には、住民税の所得割額の20%が上限となっているため、この金額を超えないように計算しながら活用する必要があります。
2-5 住宅借入金等特別控除
住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローンなどを利用してマイホームの購入や増改築を行った際、住宅ローンなどの年末残高を基に計算した金額分の所得税額が控除される制度です。令和元年10月1日〜令和2年12月31日までに購入したマイホームについては、40万円を上限に最大で13年間所得税額控除を受けることができます。
メリット
住宅借入金等特別控除は所得税額から直接支払う税金を控除できる点がメリットです。他の所得控除は控除された金額に税率をかけた金額だけ所得税が少なくなる仕組みですが、所得税額控除は直接支払う税金が控除されるため、適用できれば節税につながります。
デメリット
住宅借入金等特別控除の申請には適用初年度に確定申告が必要になります。また、この制度は不動産の需給状況なども考慮した政策的な観点から導入されているため、マイホームを購入する年によっては、控除できる金額が少ないことや適用できる期間が短い場合もあるので注意を要します。
2-6 iDeCoの活用
iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金のことで、掛け金を自分自身で運用しながら積み立てる仕組みです。iDeCoの掛け金は健康保険料などと同様に所得控除を受けることができます。
メリット
iDeCoは所得控除を受けながら将来の資産を蓄えることのできる制度です。掛け金の運用益も原則非課税となるため、通常の預貯金などと比較しても将来必要な資産を有利に形成することができます。
デメリット
iDeCoは自分自身で運用商品の選定などを行わなければならないため、手間がかかります。また、iDeCo加入者の死亡や高度障害の状態などが発生しない限り原則60歳まで受け取れないため、資産を自由に引き出しできない点にも注意が必要です。
まとめ
サラリーマンの方でも節税に繋がる方法は様々あります。税金や各制度の仕組みは若干複雑ですが、正しく知識を身に付けることで、毎年支払っている所得税と住民税を安くすることができます。なお、節税できるかどうかは個人の状況にもよって異なるので、税理士や勤務先の人事担当者に相談するのもおすすめです。
HEDGE GUIDE 編集部 ふるさと納税チーム
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