暗号資産市場で今注目のDEXとは?国内の取引所とどう違うのかを元トレーダーが解説

証券会社を経て、仮想通貨(暗号資産)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

  1. DEXとは?国内取引所とどう違うのか?
  2. CEXとDEXの主な相違点
    1. Curve、Uniswap、Balancer、Bancorのような販売所形式のDEX
    2. Kyber、Loopring、0x、Strike Network、dYdX、Synthetixのような板取引形式のDEX
    3. CEXとDEXの特徴、強みと弱みの比較
  3. DEXをトレーディング戦略に取り入れる
    1. AMM/ Yield Farming
    2. DeFi系トークンの売買
  4. DEXはメリットが大きいが初心者には難しい取引所

日経新聞やImpress Watch等の一般的な国内メディアでも取り上げられるほど注目されているので、「DEX」について皆様も見聞きしたことがあるかと思います。「DEX」市場の月間取引量は4,000億円を越えるほど拡大しており、関連するトークンも高騰しています。トレーダーにとってDEXは「利益を最大化する上で見逃せない新たな取引ツール」になっています。ここでは従来の取引所とDEXの違いについて、そしてDEXを活かした取引戦略についてご紹介したいと思います。

①DEXとは?国内取引所とどう違うのか?

DEX(Decentralized Exchange:分散型取引所)とは、主にイーサリアムのスマートコントラクトを活用して構築されたP2Pの取引所です。

bitFlyerやCoincheckのような特定の企業が運営している取引所ではなく、ブロックチェーン上のプログラムである「スマートコントラクト」で管理されている取引所を指します。流動性の供給から、取引の約定に至るまで、一連のプロセスの殆どがスマートコントラクトで自動的に処理されています。

以前はDEXと言えば板が薄く、指値機能が無い等、欠陥も多かったこともあり、閑古鳥が鳴いていました。しかし、2019年後半から一気に成長しており、現在では月間取引量が4,000億円を優に超えて、前月比ベースで倍々成長を続けています。

DEX1

MakerDAOやCompoundに代表される有力なDeFiプロトコルが次々と現れることで、市場インフラの厚みが増し、ユーザーがますます増えています。実際にレンディングプロトコルは魅力的な金利を提示できる様になっており、「高金利」がさらなるユーザーの呼び水となり、莫大な流動性を短期間で確保しました。流動性が格段に高まったことで、ペアによっては従来の取引所と遜色ないトレーディング環境が整っています。

②CEXとDEXの主な相違点

まずは簡単なまとめとして、CEX(Centralized Exchange:従来の取引所)との主な相違点を下記で比較したのでご覧ください。

CEX(Centralized Exchange) DEX(Decentralized Exchange)
KYC 身分証や住所証明書の提出 無し(ウォレットでログイン)
資産 CEXが顧客資産を保管 ユーザーが各ウォレットで管理
取引 各CEXのオーダーブック 各DEX or 複数DEXのアグリゲート or プール
流動性 CEXが選択した複数の流動性プロバイダー 不特定多数の個人~機関投資家
手数料 Maker/Taker/Funding  手数料 Maker取引は基本的にかからない

「DEX」を細かく見ていくと、大きく2つに分類できると言えます。

1. Curve、Uniswap、Balancer、Bancorのような販売所形式のDEX

これらはDeFi(分散型ファイナンス)の分野で、「AMM(オート型マーケットメイカー)」と呼ばれているグループです。実際のBalancerの取引画面をご覧ください。

Balancer

Bid/Askの板は無く、固定レートで取引できる形式になっています。CEXの販売所の場合はスプレッドがあり、その分が運営会社に支払う実質的な手数料となっています。一方、Balancerの取引手数料は以下のようになります。

  • 流動性を供給しているユーザー(Maker)は手数料なし
  • オーダーを出すユーザー(Taker)は数十Bp程度の手数料を支払う
  • Taker手数料は全てMaker側に分配される

「運営事業体に支払う手数料がない」と言う意味では、DEXの手数料は「完全にない」と言っても過言ではありません。

流動性の供給者になろうと思えば、誰でも任意の数量でMakerとして参加できる仕組みになっています。取引のマッチングはそれぞれのDEXプロトコルが実行してくれます。プールしておくだけで収益を得ることができるため、「AMM(オート型マーケットメイカー)」と呼ばれています。

このようにDeFiプロトコルに資産をプールして新たなトークンを獲得したり、金利を稼ぐことを「Liquidty Mining」や「Yield Farming」と呼びます。

ユーザーにプラットフォームを利用するインセンティブを与えることで、今までのDEXの弱点であった流動性の欠如を解決しようという試みです。魅力的な金利や報酬トークンによって、足元では大きなムーブメントが生まれています。

Balancerは2ウェイプライスの販売所形式であり、成行注文のみ利用可能で指値注文はありません。分かり易くて万人受けするインタ―フェイスですが、取引板を希望する方は2つ目のグループがオススメです。

2.Kyber、Loopring、0x、Strike Network、dYdX、Synthetixのような板取引形式のDEX

下記の画像はKyberの取引インタ―フェイスです。CEXと比較しても遜色が無いことが確認できると思います。

Kyber

こちらも基本的に取引手数料はない(上記で触れた通り厳密にいえば存在します)と言えます。そして①のグループと同様に流動性を供給する側に回り、金利を獲得することもできます。

注文方法についてはリミット(指値)とストップ(逆指値)のみなので、高機能なCEXに比べれば不足感は否めません。以下の画像は大手のデリバティブ取引所FTXであり、注文方法が豊富です。流動性が増加したと言えども、DEXはまだ熟練トレーダーが満足できる仕様とは言えません。

FTX

CEXとDEXの特徴、強みと弱みの比較

CEX(Centralized Exchange) DEX(Decentralized Exchange)
取引量 Binance: 1兆円/日 DEX合算値: 150億円/日
注文方法 Limit, Stopに限らず各種 Limit, Stop, Market
Maker ~0.05% 0%
Taker ~0.1% 0.2~0.3%
Funding BitMex/8hrs: -0.375~0.375% dYdX: ~0.75%
担保率 BitMex: 50%~ dYdX: 125~%
上場審査 各取引所毎のコンプラ基準 ERC-20準拠のトークンならばOK
商品 オプション、デリバ等多彩なラインアップ 純粋な需要とプール規模に応じた限られた商品ラインアップ
活用法 トレーディング、貸付(Funding) トレーディング、貸付(AMM)
リスク サードパーティーリスク
(ハッキングリスクやサーバーのダウン、法規制の変化)
システマティックリスク
(接続先のプロトコルにおけるバグや市場の影響をダイレクトに受ける)

DEXをトレーディング戦略に取り入れる

こうした特徴を踏まえ、ここからは普段CEXを使用しているトレーダーの立場から見てDEXをどのように活用できるか考えてみましょう。

取引量や注文機能を比べれば、CEXで運用しているトレーディング手法をそのままDEXに持ち込めないことが分かります。そのため、シンプルにDEXでしか出来ないことを考えてみると、「AMM/ Liquidty Mining」と「DeFi系トークンの購入」が考えられます。

AMM/ Yield Farming

AMM/ Yield Farmingは上記で触れた通り、DEXが提示している資金プールに資金を貸し付けることで、金利を稼ぐことができるというものです。CEXでもFundingという名目で貸付は可能ですが、利率は圧倒的にDEXの方がよくなっています。

下記はBitfinexの画像ですが、赤ペンでマークを付けたイーサリアム(ETH)のFunding Rateをご覧ください。Fundingに回っているETHの殆どは貸し出されているにもかかわらず、貸付金利は0.01%です。またDAIについても0.26%と非常に低いです。

Bitfinex

一方でDEXの金利をチェックしましょう。下図をご覧ください。

Loanscan

表の一番左はETHの貸付金利です。Compoundにおいては0.16%、dYdXにおいては0.28%といった具合です。Bitfinexと比べると10倍以上の金利差があります。

また、DEXにおいてはプールにおける資金の使用量で金利が変動し、使用される資金が多い程金利は高くなります。従って多くのユーザーに活用されているトークンの金利は更に高くなります。

そして、DEXに貸付を行うことで獲得できる債権のようなトークンを売買する方法もあります。例えばCompoundでは貸付を行うと「cToken」を受取ります。金利差による価格の変動(又はその逆)を狙った債権市場も構築されています。

高金利は利益を最大化する上で非常に魅力的なツールの1つです。逃さない手はありません。

イーサリアム(ETH)などで長期保有分の資産があればDEXに預けるようにして、アクティブに運用する分は国内の暗号資産取引所のようなCEXに置くという戦略も良いでしょう。

DeFi系トークンの売買

DEXに限らずDeFiでは各プロジェクトのガバナンストークンを発行することが多いです。このDeFi系トークンはCEXよりも先に、DEXに上場するのが潮流となっています。CEXには厳格なコンプラ体制があるため、今後もこの流れは継続するでしょう。

CoinbaseやBinanceなどのCEXも、速いペースで新規トークンを上場しています。しかし、イーサリアム系(ERC20準拠)のトークンならば直ぐに上場できる、多くのDEXの柔軟性に比べるとスピードの差は歴然です。

もちろん、CEXのコンプラ基準はユーザー保護の面で重要です。詐欺的なトークンを購入する羽目に陥りにくいという利点もあります。その点、DEXでは偽物のトークンを意図的に上場して、資金をだまし取ろうとする詐欺行為も起きているので注意が必要です。

実際に、注目を集めている「$YFI」トークンに似せた名前の「$YFII」というトークンがDEXに上場しました。かなりの取引量が発生しましたが、最終的にBalancerを初めとする複数のDEXで取引が禁止されました。

このようなリスクはありますが、今後もDeFiが盛り上がるとすれば、いち早くDeFi系トークンを取得できるメリットは非常に大きそうです。

DEXはメリットが大きいが初心者には難しい取引所

DEXと国内仮想通貨取引所のようなCEXを上手く使い分けできると、より効率的に利益を享受できることは間違いありません。特にAMM/Liquidity Miningと新規DeFiトークンを早期に購入できることは、DEXを取り入れた戦略で重要な要素となります。

一方で、DEXは非中央集権型に運用されており、ユーザーが相互監視しながら成り立っている取引所です。そのためシステム的なエラーが出たとしても基本的にはサポートスタッフに相談することも出来ません。DEXはある程度の知識がないと対処できないマーケットです。

DEXの流動性が増加しているとは言えども、まだまだCEX型の取引所と比べれば格段に少ない状況です。高騰しているDeFi銘柄を見ると手を出したくなりますが、リスク管理がより重要になっています。迂闊に高値掴みをすれば、翌日に30%、50%と下落するケースもあり得ます。

日本の暗号資産取引所は、金融庁の規制の下で暗号資産交換業のライセンスを取得して、責任を持ってサービスを提供しています。こうしたCEXの方が、初心者にとって安心して暗号資産取引を利用できる環境と言えます。日本の仮想通貨取引所はカスタマーサポートが充実しており、トークンの上場基準を設けて詐欺を回避するよう努めています。

暗号資産の取り扱いやブロックチェーンの仕組みについて、ある程度知見のある方のみがDEXで挑戦している状況です。これから暗号資産に挑戦する初心者は、まず日本の暗号資産取引所で暗号資産や取引の基礎知識を身に着けることがおすすめです。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。証券アナリスト資格保有 【運営サイト】FXの車窓から