【仮想通貨取引所13社まとめ】トラベル・ルールへの対応に伴う暗号資産(仮想通貨)の入出庫対応

日本で2022年4月から、仮想通貨(暗号資産)取引所からの仮想通貨の送金に個人情報を要求する「トラベルルール」の導入が進められています。これは2019年6月に公表されたFATF(金融活動作業部会)の改定ガイダンスを受けて、金融庁から日本暗号資産取引業協会(JVCEA)に通達されたものです。

仮想通貨はこれまで比較的自由に取引所から外部へと出庫できてきましたが、これからは各社の設定したルールに応じた情報提供が必要になってきます。そこで今回はトラベルルールに対する各社の対応について解説します。

目次

  1. トラベルルールとは?
    1-1.トラベルルールの概要
    1-2.FATFとは?
    1-3.トラベルルールの内容
  2. 国内取引所の個別対応表
  3. まとめ

①トラベルルールとは?

1-1. トラベルルールの概要

トラベルルールとは、「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルールです。

このルールは、FATF(金融作業部会)と呼ばれる、マネー・ローンダリング対策における国際協調を推進するための政府間会合によって各国の規制当局に対して公布されたガイドラインに含まれています。

テロリストその他の犯罪者が自由に電子的な資金移転システムを利用することを防ぎ、不正利用があった場合にその追跡を可能とすることを目的に、各国の仮想通貨交換業者による導入・履行が求められています。

このような勧告を背景に金融庁は21年4月、日本の仮想通貨取引所が所属する業界団体JVCEA(日本暗号資産取引業協会)に、2022年4月を目途にトラベルルールの実施を求めるよう通知。取引所各社がその要請に応じた形となっています。

1-2. FATFとは?

FATFはマネーロンダリング・テロ資金供与対策の国際基準(FATF基準)勧告を策定し、その履行状況について相互審査を行なう多国間の枠組みです。FATFの拠点はパリにあり、G7参加国を中心とした37カ国2地域機関が加盟しています。その他9つのFATF型地域体を加えると、FATF勧告は、世界205の国・地域に適用されています。

FATFではこれらのルール制定のベースとなるガイドラインを作成しており、参加国に対して実質的な強制力を有するガイダンスを「勧告(Reccomendation)」という形で公布しています。あくまでも勧告であるため、それ自体に法的拘束力はありません。しかし、加盟国に対して審査を実施し、AMLやCFTにおける非協力国リストを公開するため、大きな影響力を持っています。

なお、仮想通貨交換業者がFATFのガイダンスに追加されたのは18年10月のことで、この時点から、仮想通貨交換業者に対するライセンス取得および登録が要求され、FATFの規制を受けることとなりました。

1-3. トラベルルールへの基本的な対応内容

今回公表されたトラベルルールの内容は、「移転関連情報の申告」と「移転関連情報の通知」に分類されます。「移転関連情報の申告」は、ユーザーが暗号資産の送付を暗号資産取引所に依頼する場合に、送付先の暗号資産取引所が一定の事項について申告を求める義務のことを指します。4月1日より申告の必要がある項目は以下の通りです。

  1. 受取人の氏名
  2. 受取人のために暗号資産の送付を受ける暗号資産交換業者(受取側の暗号資産交換業者)の有無
  3. 受取側の暗号資産交換業者がある場合はその名称

なお、10月1日以降には、受取人の住所に関する情報及び移転取引目的などに関する情報の申告も求められる予定となっていますが、詳細は現時点では未定です。

もう一方の「移転関連情報の通知」は、特定の条件に該当するユーザーに関する情報を、送付側の暗号資産取引所から受取側の暗号資産交換業者に通知する義務のことを指します。

特定の条件とは、(a)受取人が送付を依頼する利用者と同一であり、(b)国内の暗号資産交換業者が受取側の暗号資産交換業者となり、(c)送付する暗号資産がBTCまたはETHであり、(d)送付する暗号資産の邦貨換算額が10万円を超える額である場合を意味します。通知される内容は以下の通りです。

  1. 送付依頼人としての利用者ご自身の氏名、住所又は顧客識別番号
  2. 送付元の暗号資産アドレス
  3. 受取人としての利用者ご自身の氏名及び送付先暗号資産アドレス

JVCEAは、トラベルルールの適用は段階的に進めるとしています。受取人の住所に関する情報及び取引目的などに関する情報の取得義務は、2022年10月1日より発生する予定となっています。

②国内取引所の個別対応表

次に、トラベルルールに対する国内取引所の対応について、執筆時点での各社発表している内容をご紹介します。

事業者名 導入日 新たに取得・保存する情報
Coincheck 3月30日 ・受取人が送付依頼人本人か否か
 送付依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)
・受取暗号資産交換業者等の名称
GMOコイン 3月30日 ・受取側暗号資産交換業者の有無(ある場合はその名称)
・受取人氏名
・受取人住所に関する情報
・受取人との関係
・実質的支配者情報(受取人が法人の場合)
※取引の内容等によっては、追加の情報/資料の提出が必要
bitFlyer 3月28日 ・受取人情報
受取人が送付依頼人本人か否か、送付依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)に関する情報
・暗号資産交換業者等の名称
DMM Bitcoin 3月30日 ◆暗号資産を出金又は送付する際
・暗号資産出金先アドレス
・受取人がお客様ご自身であるか否か
・受取人が第三者である場合には、当該第三者の氏名及び住所(法人であればその名称及び本店又は主たる事務所の所在地)
・出金先又は送付先が資金決済に関する暗号資産交換業者、外国暗号資産交換業者又はその他日本国内外で暗号資産を取り扱う事業者(出金先取引所等)である場合にはその名称並びにその他当社が必要と判断する事項
・出金又は送付される目的及びそれに関連する情報

◆暗号資産を入金する際
・暗号資産の入金元に係る暗号資産アドレス
・入金依頼人がお客様ご自身であるか否か
・入金依頼人が第三者である場合には、当該第三者の氏名及び住所(法人であればその名称及び本店又は主たる事務所の所在地)
・入金元が暗号資産交換業者、外国暗号資産交換業者又はその他日本国内外で暗号資産を取り扱う事業者(入金元取引所等)である場合にはその名称、並びにその他当社が必要と判断する事項
※入金元に係る暗号資産アドレスにつきましては、事前にマイページの暗号資産入金元・出金先アドレス登録メニューの「暗号資産入金元アドレス登録」より登録が必要

bitbank 4月1日 ・受取人情報
・受取人が送付依頼人本人か否か、送付依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)に関する情報
・出金先の暗号資産交換業者等の名称
BITPoint 4月1日 ・受取人が出金依頼人本人か否か、出金依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)に関する情報
・暗号資産交換業者等の名称
Zaif 4月1日 ・送付依頼人情報(氏名、住所又は顧客識別番号)
・受取人情報 (氏名、送付先暗号資産アドレス)
・受取側暗号資産交換業者の有無・ある場合はその名称
DeCurret 4月2日 ・受取人が送付依頼人本人か否か、送付依頼人本人でない場合は受取人に関する情報
・送付先の暗号資産交換業者等の名称
・その他当社で定める事項
フォビジャパン 4月1日 ・受取人が送付依頼人本人か否か
 送付依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)
・受取暗号資産交換業者等の名称
・送付先暗号資産アドレス
Liquid 4月1日 ・受取人情報
受取人が出金依頼人本人か否か、出金依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)に関する情報
・暗号資産交換業者等の名称
Kraken Japan *3月11日に顧客に通知 ・受取人に関する情報等
・移転先の暗号資産交換業者等の名称
BTCBOX 4月1日 ・受取人に関する情報
・受取人が送付依頼人本人(お客様自身)か否かについて
・受取人がお客様自身でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)に関する情報 :氏名、送付先暗号資産アドレス、住所に関する情報(*2)
・送付先が暗号資産交換業者であるか否かについて
・送付先が暗号資産交換業者である場合は、暗号資産交換業者の名称
・取引目的等に関する情報
*受取人の住所に関する情報及び取引目的等に関する情報は、本年の10月1日から取得。
楽天ウォレット 4月1日 ・受取人が送付依頼人本人か否か、送付依頼人本人でない場合は受取人の氏名(法人の場合は名称)に関する情報
・暗号資産交換業者等の名称

③まとめ

トラベルルールの目的は、テロリストを含む犯罪者が自由に資金移転システムを利用することを防ぎ、不正利用があった場合にその追跡を可能とすることです。国内取引所にもいよいよトラベルルールの導入が開始され、取引所毎に様々な対応が始まっています。今回の対応に際して、各社利用規約が改定され、ユーザーには改定後の利用規約への同意が求められています。

現在のところ、多くの企業は仮想通貨の出金時に受取人の情報を求めるに留まっています。しかし、DMM Bitcoinのように入金時にも同様の情報が求められる動きも出てきています。BTCBOXは10月1日からさらに詳細な情報を取得することを明かしていますが、他社も段階的にルールを強化していく可能性があります。

ユーザーとしては、NFTの売買やDeFiを目的に仮想通貨を出庫する際、以前のように自由ではなくなる可能性があります。各社の対応に引き続き注視しましょう。

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