【重要ニュースまとめ(7/16~7/31)】Twitterハッキング事件をブロックチェーンで追跡。米国では銀行がついに暗号資産市場に参入

今回は、7月後半(7月16日〜7月31日)の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースの振り返りについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. MUFGがブロックチェーンによる独自通貨を発行
  2. Twitterの大規模ハッキング事件に暗号資産を使用
  3. 日本銀行がCBDC専門組織を立ち上げ
  4. 米国の銀行、暗号資産市場に参入へ
  5. イーサリアム2.0のローンチが現実的に
  6. Synthetix Foundationが“予定通り”解散を発表
  7. まとめ・著者の考察

7月後半(7月16日〜7月31日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、7月前半に続き日本銀行によるCBDCへの取り組みが度々報じられました。また、米国の銀行による暗号資産市場への参入状況が伺えたり、イーサリアム2.0のローンチが現実味を帯びてきたりといった明るいニュースも多数出ています。本記事では、7月後半の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

MUFGがブロックチェーンによる独自通貨を発行

2017年に「MUFGコイン」の発行計画を公表し話題となった三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、独自のデジタル通貨「coin(コイン)」を2020年度内に発行する方針を明らかにしました。なお、coinはブロックチェーンを使って発行されます。

今回発行が予定されているcoinは、MUFGコインをリブランディングすることで生まれたものです。リブランディングの背景には、自社の独自通貨だけでなく他社でも簡単に独自通貨を発行できるような、プラットフォーム型の構想があるといいます。

利用者は、「1coin = 1円」のレートでcoinを使用することができ、支払いや円との換金、個人間送金といった場面で活用できるようになります。まずは、リクルートの運営するホットペッパーグルメの加盟店で使えるようになる予定です。

新型コロナウイルスの影響もあり、各国でCBDCや企業発行のデジタル通貨に関する取り組みが加速してきました。世界中で通貨が乱立するようになると、それら全てに互換性を持たせる必要が出てきます。

そこで期待されるのがブロックチェーンです。全ての通貨がブロックチェーンを基盤に発行されることで、シンプルなシステムと安価な手数料が実現できるでしょう。

【参照記事】独自デジタル通貨、20年度下期に発行へ 亀沢MUFG社長「将来的には皆が使える形で」
【参照記事】デジタル通貨「コイン(coin)」2020年度下期に発行へ|三菱UFJ・リクルートが協力

Twitterの大規模ハッキング事件に暗号資産を使用

暗号資産・ブロックチェーン業界に限らず7月後半に最も多くの話題を集めたニュースは、Twitterのハッキング事件ではないでしょうか。犯人がビットコインの不正送金を促したため、特に暗号資産業界で注目を集めたように感じています。

事件に使用されたウォレットアドレスは以下の2つです。犯人がビットコインを使用したため、実際にブロックチェーンを閲覧することで資金の流れを見ることができます。

  1. bc1qxy2kgdygjrsqtzq2n0yrf2493p83kkfjhx0wlh (12.86911529 BTC)
  2. bc1qwr30ddc04zqp878c0evdrqfx564mmf0dy2w39l (0.55302586 BTC)

今回の事件によって、暗号資産の印象がまたしても悪化してしまったものの、ブロックチェーンの透明性を再認識できる結果となりました。一方で、事件の原因となったTwitter社の不透明性も明らかにしています。

犯人は、ソーシャルエンジニアリングを駆使して不正アクセスに成功しました。これは、Twitter社の著しい集権性を表しているといえます。一部の従業員に、ユーザーのアカウントをコントロールできる権限が付与されていたことが明らかとなったからです。

この管理体制は、当然のことながら外部には知られていませんでした。果たして本当に必要な権限だったのか疑問が残りますが、分散性を重視するブロックチェーン業界からは懐疑的な意見が数多く寄せられています。

【参照記事】ツイッター乗っ取り事件、FBIが捜査開始 ビットコイン詐欺の被害額とBTCの行方は
【参照記事】Twitter Says ‘Coordinated Social Engineering’ Attack Caused Bitcoin Scam
【参照記事】Why the Twitter hacker used Bitcoin instead of Monero

日本銀行がCBDC専門組織を立ち上げ

中国におけるCBDCの取り組みが活発になって以降、日本におけるデジタル通貨およびCBDCへの取り組みも、頻繁に報道されるようになってきました。

7月20日には、「決済サービスの高度化」と「決済システムの安全性確保」を担当する決済機構局内に、デジタル通貨の専門組織を立ち上げたと発表しています。主に、デジタル決済システムやCBDCに関する調査を行うといいます。

この組織は、以前より研究チームとして発足されており、7月前半のまとめで紹介したCBDCに関する技術課題レポートの作成などを行ってきました。今回正式に組織として立ち上がり、まずは数名でのスタートとなります。

また7月末には、「デジタル通貨およびCBDCへの取り組みを最優先事項の1つとして認識している」と日本銀行が声明を出しています。合わせて民間からの技術関連情報の提供を募り、将来的な実証実験を視野に入れているとしました。

【参照記事】日銀、「デジタル通貨グループ」を新設 CBDCの検討推進
【参照記事】Bank of Japan sets up digital Yen division to “expedite” CBDC research

米国の銀行、暗号資産市場に参入へ

米国通貨監督庁(OCC)が、国立銀行と米貯蓄貸付組合に対して暗号資産の取り扱いを許可する方針を公表しました。これにより将来的に米国の銀行が暗号資産市場に参入してくることが予想されます。これは非常に大きなトピックだといえるでしょう。米国でも日本でも、やはり銀行が貨幣流通のハブとなっています。銀行口座の開設数は、暗号資産ウォレットのユーザー数の比ではありません。できることなら、既存の銀行口座で暗号資産を管理したいと誰しも願っているはずです。

OCCにより公表された今回の方針は、今後の暗号資産市場を確実に成長させます。なぜなら、機関投資家による参入が一層期待できるからです。

これまでの暗号資産市場は、秘密鍵の紛失による資産凍結やハッキングによる資産流出が重なり、あまり良くないイメージがついてしまっていました。このイメージを払拭するには、とにかく安全な資産管理方法と信頼できる事業者の参入が必要だといえます。そのため、例え中央集権性が高いとしても銀行のような信頼できる事業者が一定数必要なのです。

なお今回のOCCの発表は、暗号資産に関する特別な法律を制定したわけではありません。1988年より、銀行はデジタル資産の管理資格(免許)を有しているため、暗号資産もデジタル資産として見做された、という結果です。

【参照記事】米通貨監督庁が声明、米国民貯蓄銀行などで仮想通貨カストディ提供可能に
【参照記事】National Banks and Federal Savings Associations as Lenders

イーサリアム2.0のローンチが現実的に

イーサリアム2.0の周辺が本格的に騒がしくなってきました。イーサリアムは、現在のPoWからPoSへのコンセンサスアルゴリズムの変更を予定しており、これを「イーサリアム2.0」と名付けて長年取り組んでいます。

度重なる延期を経て、いよいよ年内のローンチ予定を発表しました。まずは8月4日にMedallaと呼ばれるテストネットへの公開を控え、そこから最低でも3ヶ月間の安定稼働が必要となります。

なおその前段階として、Prysmというメインクライアントの監査が既に終了しています。テストネットの通過は、複数クライアントでの安定稼働が条件であり、Prysm以外にPegaSys、Nimbus、Lighthouseが対象になる予定です。

【参照記事】Quantstamp Audit Greenlights Ethereum 2.0 Client Prysm for Launch
【参照記事】Ethereum 2.0 final testnet launches in just two weeks

Synthetix Foundationが“予定通り”解散を発表

少し専門性の高い内容ですが、非常に重要なトピックであるため紹介します。

人気DeFiプロトコルのSynthetixを運営する、Synthetix Foundationが解散を発表しました。Synthetixは、DeFiにおけるデリバディブプラットフォームです。

ブロックチェーンによって実現されるWeb3.0の時代では、プロジェクトは分散型の組織によって運営されます。そのため、株式会社ではなくFoundationの形を取ることが多く、SynthetixもSynthetix Foundationによって運営されていました。

また、多くのプロジェクトが将来的にプロジェクトの運営をコミュニティに委任し、Foundation自体は解散するというロードマップを描いています。Synthetix Foundationも例に漏れず、発足当初より今回の解散を予定していました。従って、決してネガティヴなものではなく、コミュニティに運営権限が移譲できていることを示すものなのです。

しかしながら、実際にFoundationがロードマップに従って解散する例は現時点では非常に少なく、今後の参考事例として有益な取り組みだといえるでしょう。

なお今後のSynthetixは、「protocolDAO」「grantsDAO」「synthetixDAO」という3つのDAO(自律分散型組織)によって運営されます。

【参照記事】Synthetix Foundation Decommissioned

まとめ・著者の考察

7月は、日本だけでなく世界中のCBDCに関する取り組みが非常に多く報じられていました。その中でもリードするのはやはり、米国と中国です。米中貿易戦争も背景にあり、ブロックチェーン業界にとどまらないトピックになっていくでしょう。

ブロックチェーン業界内のトピックでは、いよいよイーサリアム2.0のロードマップがクリアになってきました。このまま予定通り開発が進む場合、間違いなくここ数年で最大のニュースとなります。

事業者でない限り細部まで追う必要はありませんが、イーサリアム2.0の成功次第で、今後のブロックチェーン市場の盛り上がりが決まると言っても過言ではありません。アンテナを張っておくことを推奨します。私自身も、イーサリアム2.0に関する情報は継続して提供していきたいと思います。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。