【重要ニュースまとめ(11/26~12/2)】Libraが「Diem(ディエム)」に名称変更、2021年に発行へ。ステーブルコインとウォレットの規制案が登場

今回は、11月26日〜12月2日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. Facebook主導のDiem発行へ
  2. ステーブルコインに追跡プログラムを組み込む規制
  3. 個人ウォレットにKYCを導入する米国での提案
  4. まとめ、著者の考察

今週(11月26日〜12月2日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、影を潜めていたLibraがDiem(ディエム)と名称変更し、2021年の発行を計画していることが明らかになりました。また、新政権への移行が間近に迫った米国では新たな規制が噂されるなど、市場の盛り上がりと合わせて慌ただしくなっています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

Facebook主導のDiem発行へ

2019年にその全貌が明らかとなり、大きく話題となったFacebook主導のLibra(リブラ)が、最短で2021年1月にローンチする予定であることがわかりました。これに伴い全面的なリブランディングが行われ、発行される暗号資産の名称を「Diem(ディエム)」に変更、Diem専用のウォレットはCalibra(カリブラ)から「Novi(ノビ)」に変更となっています。

Diemは、2019年の発表直後より各国の規制当局より指摘を受け、大幅な方針転換に迫られていました。今回のリブランディングに合わせて、主に2つの変更を明らかにしています。

1点目は、Diemの担保資産についてです。2019年時点では、複数の法定通貨(USD/EUR/GBP/JPY)を担保としたバスケット型ステーブルコインとして発行されることになっていました。

今回、バスケット型から単一型へと変更され、まずは米ドルを担保にして発行されるといいます。バスケット型の場合、どのDiemがどの法定通貨を担保にして発行されたか追跡することが難しく、マネーロンダリングに利用される可能性が指摘されていました。

なお、発行が予定されている担保資産は「米ドル(USD)」に加え、「ユーロ(EUR)」「英ポンド(GBP)」「シンガポールドル(SGD)」としています。構想時には入っていた日本円(JPY)が除外され、シンガポールドル(SGD)が追加された形です。

2点目は、運営組織となるDiem協会です。LibraからDiemへの名称変更に伴い、Libra協会もDiem協会へと名称変更されています。

Diemが当時大きく話題となった要因として、Diem協会の加盟企業・団体が錚々たる顔ぶれだったことがあげられます。具体的には、PayPalやMasterCard、VISA、Airbnb、Uber、Spotifyなどです。現在は、この中だけでもPayPal、MasterCard、VISA、Airbnbが脱退しています。

Diem協会は、スイスのジュネーブに本拠を構えており、Diemを発行するにはスイス金融市場監督局(FinMA)よりライセンスを取得する必要がありました。今回、最短で2021年の発行計画を明らかにしたことから、このライセンスを取得できる目処が立った可能性が高いと考えられます。

【参照記事】Diem
【参照記事】フェイスブック主導のリブラ、ドル連動型デジタル通貨を1月にローンチか:FT

ステーブルコインに追跡プログラムを組み込む規制

国際決済銀行(BIS)が、ステーブルコインに関する調査レポートを公表し、特定の管理者が存在するステーブルコインには追跡用のプログラムを実装すべきとの見解を示しました。

スイスのバーゼルに本拠を置くBISは、各国の中央銀行における相互決済を仲介する組織です。国際的な金融システムの安定と通貨価値の維持を担っており、非常に大きな影響力を持っています。

レポート内では、先述のDiem(旧Libra)に触れる形でステーブルコインのインパクトを説明し、原則として新しい技術は監視の機会を要するとしました。

具体的には、特定の管理者が存在するステーブルコイン(TetherやDiemなど)に対して、発行の段階で流通をトラッキングするための追跡プログラムを組み込むべきしています。理由としてはやはりAML/CFTの観点が強く、追跡可能な状態にしておくことで規制当局からの要請があった際にスムーズにデータ提供できる点があげられました。

今回の件で注目すべきは、(良い意味で)分散型のステーブルコイン(Daiなど)が議論の対象になっていないという点です。日本国内の現行法でもそうですが、特定の管理者が存在する法定通貨担保型のステーブルコインは暗号資産として定義されていません。

暗号資産として定義されていない金融資産であれば、それは既存金融の枠組みで制御されるものとなるため、BISをはじめとする規制当局の担当範疇になるのです。

仮に、今回の発表が分散型を含む全てのステーブルコインを対象にするものだった場合、昨今話題のDeFi市場に多大な影響を与えるだけでなく、ブロックチェーンによるイノベーションを阻害する可能性がありました。

今回のレポートはあくまで提案にすぎませんが、ブロックチェーン業界全体が肝を冷やしたことでしょう。

【参照記事】Stablecoins: risks, potential and regulation
【参照記事】国際決済銀行、ステーブルコインに自動監視機能を埋め込む枠組み提案

個人ウォレットにKYCを導入する米国での提案

大統領選挙が終了し政権移行のプロセスが進んでいる米国ですが、現在の財務長官であるムニューシン氏が、任期満了までにKYC(Know Your Customer:本人確認)を行なっていないウォレットに対する規制整備の意向を持っていることが明らかとなりました。

世界最大手取引所CoinbaseのCEOを務めるブライアン氏によると、ムニューシン氏は取引所などで管理する顧客のウォレットに加えて、個人が自身で管理するウォレットも規制対象に組み込みたいと考えているようです。

現状、個人が利用しているウォレットというのは、いわゆる「non-custodial」といわれスマートコントラクトによって暗号資産が管理されています。そのため、当該のウォレットで管理されている暗号資産の保有者は特定されず(現実世界の人物とスマートコントラクトをリンクする方法がないため)、匿名性の観点からも大きな特徴としてあげられてきました。

ムニューシン氏は、AML/CFTの観点から全ての暗号資産の流れを管理したいと考えているのでしょう。

具体的には、取引所管理のウォレットから個人管理のウォレットに出金する際に、そのウォレットの所有者を特定しなければならないというものです。日本を含む各国の現行法では、他者の暗号資産を管理する場合のみKYCを必要とする例が多くなっています。

当然ですが、個人管理のウォレットに入っている資産は個人のものであり、誰の管理下にもありません。ムニューシン氏は、この誰の管理下にもない資産まで追跡しようとしているのです。

背景には、急成長するDeFi市場が影響していると考えられます。確かに個人ウォレットの資産までトラッキングすることができれば、現状は世の中に存在する全ての暗号資産を追跡することができます。

一方で、言わずもがなこれはイノベーションを大きく阻害することになるため、Coinbaseのブライアン氏含め業界内からは強く批判の声が上がっています。

【参照記事】米国で仮想通貨ウォレットの規制強化案が浮上か=Coinbase Armstrong CEO
【参照記事】Brian Armstrong Coinbase CEO

まとめ、著者の考察

先週取り上げたイーサリアム2.0のローンチで市場が賑わう中、米国における新たな規制案が噂されたことで暗号資産の価格は軒並み暴落しました。今回はネガティブな要素でしたが、しっかりとファンダメンタルズが付いてきている印象を受けています。

規制という文脈では、2020年に全くと言っていいほど名前を聞かなかったDiem(旧Libra)が、ここに来て2021年の発行を予定していると報道され非常に驚きました。Diem協会の顔ぶれに勢いを失った今、Diemに対してどこまで需要が残っているか、CBDC論争の火付け役として今後の動きに再び注目が集まりそうです。

The following two tabs change content below.
田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。