【重要ニュースまとめ(11/19~11/25)】イーサリアム2.0がついにスタート。価格への影響も?国内で民間発のデジタル通貨発行へ。

今回は、11月19日〜11月25日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 富裕層の暗号資産投資状況
  2. 三大メガバンク含む企業連合がデジタル通貨発行へ
  3. イーサリアム2.0がついにスタート
  4. まとめ、著者の考察

今週(11月19日〜11月25日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、引き続き暗号資産の価格高騰が話題となっています。日本からは民間発のデジタル通貨発行計画も明らかとなり、CBDC構想にも拍車がかかりそうです。そしてなんといっても、12月1日よりイーサリアム2.0がついにスタートすることが決まりました。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

富裕層の暗号資産投資状況

英投資コンサル企業のDeVereグループが、700人の富裕層に対するアンケート調査を行いました。調査結果によると、全体の73%が既に暗号資産に投資済み、もしくは2022年末までに投資予定であると回答したといいます。

調査は、欧米、アジア、アフリカなどを中心に全世界が対象となり、昨年の68%より5%増加しました。なお、ここでの富裕層の定義は運用資産が100万ポンド(約1.3億円)以上としています。

DeVereグループCEOのグリーン氏は、「今回の調査結果は、富裕層がデジタル資産を未来のお金であると考えていることを示している」と述べました。また、彼らは時代に乗り遅れていると思われたくない意向が強く、それゆえに最先端の投資アセットに関心を抱いているといいます。

グリーン氏は「ビットコインはこの1年で約125%の上昇を記録し、あらゆる金融商品の中で最も高いパフォーマンスを発揮した」と言及しました。

ここ最近の暗号資産価格の高騰は、新型コロナウィルスに対する全世界の経済政策によって増刷された紙幣が行き場を失い、結果的に市場に流れ込んだ影響によるものだと考えられます。世界経済の不確実性から、機関投資家が米ドルのヘッジ先として暗号資産に注目を集めているのも事実ではないでしょうか。

【参照記事】73% of millionaires invested or plan to invest in cryptocurrencies, survey reveals

三大メガバンク含む企業連合がデジタル通貨発行へ

全世界で中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)への取り組みが加速する中、日本では民間発でデジタル通貨の発行計画が発表されました。

国内で暗号資産取引所を運営するディーカレットは、自身が事務局を務めるデジタル通貨勉強会を発展させることで「デジタル通貨フォーラム」を設立、合わせてこのフォーラムよりデジタル通貨の発行計画を明らかにしました。本トピックと合わせて、少しCBDCについて考察を深めてみたいと思います。

2019年に誕生したFacebookのLibraを起点として、中国や米国を中心にCBDCへの取り組みが加速していますが、今では8割を超える国々が発行を検討しているといわれています。

なぜこれほどまでにCBDCに対して前向きなのでしょうか。これには主に二つの理由があると考えられます。一つ目は、異なる決済サービスにおける橋渡しとしての役割です。

日本にもようやくキャッシュレス化の波が到来しましたが、〇〇ペイのようなサービスだけでなくクレジットカードや電子マネーなどの決済サービスが乱立しています。このような状況において、CBDCがそのブリッジ通貨としての機能を果たすのではないかと期待されています。

二つ目は、クロスボーダー取引(国際間決済)です。現状、日本銀行はCBDCを設計する際にクロスボーダーを考慮に入れていません。しかしながら、個人的にはクロスボーダーは必要要件だと考えています。

理由としては、香港国家安全維持法の存在があげられます。米中冷戦の最中、国際金融センターであった香港が法改正により実質的に中国となったことにより、その機能を失ってしまいました。

今後の世界経済は、単純なグローバル化ではなく米中によるブロック化へと進みます。そして、そんなブロック化の時代に重要になるのが日本なのです。

日本は米中に次いでGDP第三位の国であり、立地的にも米中の間に位置しています。つまり、これまで香港が「香港ドル」の形で担ってきた国際金融センターとしての役割を果たせるのは、現状日本がベストなのです。

ちなみに、GDPで考えるとドイツやフランスなどもあげられますが、当然EU加盟国ですので、そもそも彼らはEUブロック経済圏に身を置いています。

中国ブロック経済圏で中国発のCBDCが基軸通貨として採用され、米国ブロック経済圏でも同じことが起こる場合、それらを繋ぐ日本でもCBDCが必要になるのではないでしょうか。これが日本でCBDCを設計する際にクロスボーダーを考慮すべき理由です。

一方で、米国や日本ではCBDCの発行を焦ってはいけないとする意見も出ています。理由としては、CBDCが民間の決済システム市場を圧迫しないかという点です。これに関しては、日銀副総裁の雨宮氏も言及しており、仮にCBDCの決済コストが民間のそれを下回る場合、多くの小売店は民間マネーではなくCBDCを選択することになるだろうと見解を示しています。

また、クレジットカード市場が約70兆円規模であるのに対し、〇〇ペイの市場がまだまだ数兆円規模にとどまっているところを鑑みると、これらを繋ぐために国家規模のCBDCを発行するとは考えにくいという側面もあります。

今回発表された民間発デジタル通貨の関係企業には、三大メガバンクやNTTグループ、野村HD、KDDI、電通といった国内の著名企業が名を連ねます。オブザーバーは金融庁や総務省、財務省、経済産業省、そして日本銀行といった顔ぶれです。

民間発で発行する狙いとしては、CBDC同様に乱立する決済サービスの基盤を統一し、利便性を高める点にあるといいます。2022年の実用化を目指すとされており、仕組みとしては二層型デジタル通貨の発行が検討されています。

二層型とは、上層に相互互換性を実現する「共通領域」を、下層にカスタマイズ性を実現する「付加領域」を備えたものです。現在の日銀決済インフラもこのような二層構造となっており、CBDCでも同じ設計が採用されるでしょう。

なお、CBDCの場合は現時点では明確にブロックチェーンを使う意図は示されていませんが、今回の民間発デジタル通貨はブロックチェーンを使用する方針を明らかにしています。

【参照記事】民間デジタル通貨、22年にも実用化 30社超が連携
【参照記事】Japan Inc to begin experiments issuing digital yen

イーサリアム2.0がついにスタート

イーサリアム2.0に向けた大型アップデート「セレニティ(Serenity)」への第一歩が、5年の年月を経てついにスタートします。

今回、イーサリアム2.0のフェーズ0にあたるBeacon Chainを起動させるために必要な524,288ETH(300億円以上)が集まり、最初のブロックである「ジェネシスブロック」が12月1日より形成されることになりました。

イーサリアム2.0は、大きく分けて4つのフェーズに分類されます。11月5日より、フェーズ0の重大要素に含まれる「デポジットコントラクト」が実装され、ステーキングが始まっていました。

フェーズ0を起動させるには、セキュリティの観点から先述の52万ETH以上が11月24日までにステーキングされる必要があったのです。この条件をクリアしたことで、無事にイーサリアム2.0がスタートします。

イーサリアム2.0の開発は5年前よりスタートしており、その難易度の高さから毎年後ろ倒しになってきました。今回、待望のフェーズ0がスタートする結果となり、市場は盛り上がりをみせています。

フェーズ0でステーキングされたETHは、2021年中を予定しているフェーズ1.5が実装されるまで引き出すことができない仕様になっています。つまり、300億円以上ものETHの売り圧力が一気に減ったことになるのです。

なお、イーサリアム2.0の今後のロードマップは以下の通りです。

  • フェーズ0:Beacon Chainの稼働、ステーキングの開始
  • フェーズ1:Shardingの実装、シャードチェーンのテスト稼働
  • フェーズ1.5:シャードチェーンのメイン稼働、PoSへの移行開始
  • フェーズ2:シャードチェーンのフル稼働

【参照記事】イーサリアム2.0、12月1日にフェーズ0がスタート──ジェネシス・ブロックを設定
【参照記事】【特集コラム】10分で分かるETH2.0の概要

まとめ、著者の考察

CBDCの是非が問われる中、民間のいわば連合軍によるデジタル通貨の発行計画が明らかになりました。双方に対抗する姿勢はないと思われるものの、CBDCが民間市場を圧迫しないか慎重な議論が必要になります。

ここ数ヶ月は、市場の盛り上がりに中身が伴ってきているように感じます。新型コロナウイルスの経済政策が大きく影響しているのは事実ですが、特にビットコインとイーサリアムに関してはしっかりとしたファンダメンタルズが出てきているのではないでしょうか。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。