【重要ニュースまとめ(10/15~10/21)】SBIグループが国内初のSTOを実施。大手取引所OKExで出金停止措置

今回は、10月15日〜10月21日の暗号資産・ブロックチェーン重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 大手取引所OKExが出金停止措置
  2. PwCがブロックチェーンの経済効果を調査
  3. 日本初のSTOが誕生へ
  4. まとめ、著者の考察

今週(10月15日〜10月21日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、大手取引所OKExでの出金停止措置やPwCのブロックチェーンレポートが話題になりました。国内では、SBIグループによる日本初のSTO実施の意向が発表されています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

大手取引所OKExが出金停止措置

大手暗号資産取引所のOKExが、一時的な出金停止措置を行いました。暗号資産を引き出す際に必要な、秘密鍵を持つ社内の人物と連絡が取れなくなったとしています。当該の人物は、中国公安当局からの調査を受けているとのことです。

中国では、以前より暗号資産の取引を停止しています。OKExは、発足当初は中国に拠点を持っていたものの、国内の法改正によりマルタへと本社を移転していました。しかしながら、引き続き中国語で中国居住者に対してサービスを提供していたため、今回の調査に繋がったといわれています。

基本的に、暗号資産の管理はウォレットで行いますが、ウォレットを操作するには秘密鍵が必要になります。秘密鍵を紛失してしまうとウォレットが操作できなくなり、暗号資産も引き出せなくなってしまうのです。

そのため、秘密鍵を複数に分散させ「3つ中2つの秘密鍵があれば引き出せる」といった管理方式にすることが一般的となっています。この仕組みをマルチシグといいます。

取引所は顧客の資産を預かる立場にあるため、マルチシグでの運用が原則となっています。今回のOKExの件は、このマルチシグを保有する取引所内の重要人物1名と連絡が取れなくなったというものです。

昨今成長著しいDeFi市場の中で、頭角を表しているのがDEXと呼ばれる分散型取引所です。DEXには管理者が存在せず、利用者は自らのウォレットとDEXを接続し取引を行います。

一方で、OKExのような管理者の存在する集権型取引所では、利便性の観点から取引の際は取引所に資産を預ける形になります。そのため、今回のような有事の際に資産を引き出せなくなってしまうことがあるのです。

こういった、取引所に依存する結果として起きる可能性のある懸念をカウンターパーティーリスクといいます。使い勝手を選ぶか、安全性を選ぶか、暗号資産業界において両者はまだまだトレードオフの関係にあるのです。

【参照記事】Suspension of Digital assets/Cryptocurrencies Withdrawals
【参照記事】暗号資産交換業者OKExが出金停止、中国警察当局の捜査入る

PwCがブロックチェーンの経済効果を調査

世界最大手コンサルティングファームのPwCが、ブロックチェーンがもたらす経済効果に関する新たな調査レポートを公開しました。今後10年間におけるブロックチェーンの活用事例を精査し、世界のGDPに与える影響を185兆円以上であると報告しています。

PwCは、レポート内で2025年までに多くの企業がブロックチェーン活用に乗り出すと予想しました。中でも、インドや中国といったアジア地域が市場をリードするとしています。

レポートでは、特に大きな経済効果をもたらす分野として、次の5つの産業をピックアップしました。

  • サプライチェーン・物流のトラッキング:9620億ドル(約102兆円)
    サプライチェーンにおける製品の追跡、産地の偽造防止などを実現し、小売の安全性を向上
  • 決済・金融:4330億ドル(約46兆円)
    暗号資産とりわけステーブルコインによる国際送金や電子決済の拡大。CBDCの普及による決済インフラの改善
  • 分散型ID・プライバシー:2240億ドル (約24兆円)
    身分証明書や資格などの個人に紐づく記録をブロックチェーンで管理。大幅なコスト削減による効率化が期待でき、個人情報の保護にも貢献
  • 契約・紛争問題の解決:730億ドル(約8兆円)
    あらゆる契約の電子化および効率化を実現。スマートコントラクトによる自動執行により紛争問題も解決
  • 顧客エンゲージメント・ロイヤルティ向上:540億ドル(約6兆円)
    紙やカードで実施していたロイヤルティプログラム(スタンプやポイント)を顧客エンゲージメントサービスと統合

中でも、特にサプライチェーンや分散型IDの分野には大きな可能性が秘められているとし、行政や教育、医療分野に期待しているとしました。

PwCは、ブロックチェーンの成功事例を作るには各国それぞれ異なる戦略が必要になると指摘しています。例えば、既に巨大な産業を築いているアメリカでは、サプライチェーンに大きな影響を与える一方、今後の発展が予想されるアジア地域ではデジタル通貨の影響が大きいと言及しました。

肝心の日本は、GDPの成長幅こそ明示されませんでしたが、ブロックチェーンの導入により新たに60万以上の雇用が創出され、約7.6兆円の経済効果が期待できるとしています。

【参照記事】ブロックチェーンの経済効果、2030年までに190兆円:PwCが予測
【参照記事】Time for trust: How blockchain will transform business and the economy

日本初のSTOが誕生へ

SBIホールディングスが、国内初となるSTO(Security Token Offering)関連ビジネスを開始すると発表しました。合わせて、子会社のSBI e-Sportsで自らSTOを実施する意向も明らかにしています。

ブロックチェーン上で発行されるトークンには、いくつかの種類が存在します。このうち、資金調達で使用されるのは「ユーティリティトークン」と「セキュリティトークン」です。前者がICO(Initial Coin Offering)で、後者がSTOで使用されます。

STOは、ICOの課題を改善することで誕生した資金調達手法です。ICOでは、従来のIPOのように証券会社などを仲介させずに資金を調達するため、調達した資金を持ち逃げする事例が相次いでいました。

そこで誕生したのがSTOです。STOでは、ICOとは異なり特定のSTO認可事業者を仲介させることで資金調達を実施します。そのため、資金の持ち逃げを防ぐことができるのです。また、一連の流れをデジタル上で完結させることができるため、発行・管理のコストを大幅に削減することができます。

今回のSBI e-Sportsが実施する日本初のSTOでは、5,000万円の資金調達を目的としています。特徴としては、引き受け先が親会社のSBIホールディングスである点です。これには、まず国内第一号の案件を取りにいくという姿勢が伺えます。

SBIホールディングスは今後、子会社のSBI証券を中心にデジタル社債(セキュリティトークン)にも取り組むことを明確にしています。今回のSTOでは引き受け先がSBIホールディングスでしたが、今後はSBI証券を引き受け先として統一し、SBIのサービスを利用する顧客に販売していくといいます。

なお今回のSTOでは、5,000万円の資金調達を行うために普通株1,000株を発行するとしています。この株式がデジタル化されセキュリティトークンとして扱われ、野村ホールディングス傘下のBOOSTRYが運営する「ibet」で発行・管理・移転・権利更新が行われます。

【参照記事】SBIグループによる国内初となるSTOビジネス開始のお知らせ
【参照記事】SBIがデジタル証券事業を本格化──子会社が株式トークンで増資を計画

まとめ、著者の考察

2020年5月に改正資金決済法が施行されて以降、日本でもセキュリティトークンの市場が盛り上がりをみせています。市場を牽引するのは、金融庁の認定団体である日本STO協会で会長を務める北尾氏の率いるSBIグループです。

今回は、SBIグループ内に閉じたSTOとなりますが、今後は日本でも幅広くSTOを実施する企業が出てくることが予想されます。

一方で、STOには明確な管理者が存在するため、OKExのパートで紹介したカウンターパーティーリスクを伴います。SBIだから安全と捉えるか、とはいえ何が起きるかわからないと捉えるか、どちらか一方が正しいといえるものではありません。

集権型と分散型の融合は、引き続き暗号資産・ブロックチェーン業界における最大の論点になるでしょう。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。