【重要ニュースまとめ(10/8~10/14)】日中韓、エストニアでCBDCの取り組みが加速。ブロックチェーンに関する全米大学ランキングも登場

今回は、10月8日〜10月14日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 世界各国でCBDCへの取り組みが加速
  2. ブロックチェーン全米大学ランキング
  3. イーサリアムノードが集権化
  4. まとめ、著者の考察

今週(10月8日〜10月14日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、世界各国よりCBDCに関する取り組みが報じられました。また、ブロックチェーンに明るい全米大学ランキングやイーサリアムの集権化に関するニュースも話題になっています。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

世界各国でCBDCへの取り組みが加速

今週は、中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)への取り組みが各国よりアナウンスされました。日本、中国、韓国、エストニアについて順番に紹介していきます。

日本のCBDC

日本銀行は「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表し、民間企業や個人を対象とした一般利用型のCBDCに関する方針を打ち出しました。方針の中では、CBDC導入に際して期待される機能や役割、考慮すべき点などが記載されています。

前提として、日本銀行は現状CBDCを発行する計画はないと明確にしています。実際、公開している今後のスケジュールについては、2021年度の早いタイミングでPoC(概念実証)のフェーズ1をスタートさせる、といった範囲にとどめています。

なお、PoCと共に以下の4つについても検討していくとし、内外関係者とも連携していく予定です。

  • 中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方
  • CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方
  • プライバシーの確保と利用者情報の取扱い
  • デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方
CBDCを考慮した通貨の分類(参照:日本銀行

中国のCBDC

CBDCの開発で世界をリードする中国では、既に170億円規模のテスト運用が行われていたことが明らかになりました。深センや蘇州、雄安を中心に約12万のウォレットが開設されているといいます。

テスト運用は2020年4月より開始しており、8月までに310万件の取引から約170億円が流通しました。さらに深センでは、CBDC普及のため一般市民向けに1億円以上に相当するCBDCを抽選で配布することも決定しています。配布されたCBDCは、国内3000店舗以上で使用することができるといいます。

中国では、CBDCを開発する目的を次のように説明しています。「現在、世界的に流通している暗号資産から自国の法定通貨を保護するためには、通貨の発行元である中央銀行が率先してデジタル通貨を発行する必要がある。我々は、暗号資産に劣らないデジタル通貨の利便性を提供しなければならない。」

韓国のCBDC

日本と同じくCBDCに関しては遅れを取っている韓国でも、2021年中の試験運用を開始する方針が公表されました。韓国では、CBDCに関する技術的な調査フェーズは既に開始しており、今回の発表は発行と流通に焦点を当てたフェーズになるといいます。

韓国では、現時点では民間企業と連携する方針はないとし、実際の調査も韓国銀行のデジタル通貨研究チームが構築する仮想環境で実施される予定です。

当初、韓国はCBDCへの取り組みに否定的でしたが、中国やアメリカに続きヨーロッパ各国でも前向きな方針が出されたことから、2020年に入って急速に調査を進めています。

エストニアのCBDC

電子国家エストニアでも、CBDCへの取り組みが加熱しているようです。エストニアでは、既存の電子政府システムがCBDCに活用できるかどうか、という観点で調査を進めているといいます。

今回の調査は、電子政府システムを開発したGuardtime社が担い、幅広く民間の知恵を借りる方針です。

一方で、エストニアは2004年よりEU(欧州連合)に加盟しており、共通通貨ユーロを使用しています。エストニア銀行は、今回の取り組みをECB(欧州中央銀行)が取り組んでいるデジタルユーロを支援するためのものだと説明しました。

【参照記事】中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針
【参照記事】中国人民銀行副総裁「デジタル人民元のテスト運用、すでに170億円規模」

ブロックチェーン全米大学ランキング

暗号資産メディア世界最大手のCoinDeskが、ブロックチェーンの研究を進めている大学ランキングを発表しました。調査対象となったのは、アメリカのトップ大学46校です。

評価の観点と重みは、「学術的な影響(29%)」「ブロックチェーン教育の機会(40%)」「雇用と業界での成果(20%)」「学術的な評判(11%)」の4つから構成され、ブロックチェーン業界で活躍する1万2000人によるアンケート結果から決定されました。

トップ5は次の通りです。

  • 1位:マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)
  • 2位:コーネル大学(Cornell University)
  • 3位:カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)
  • 4位:スタンフォード大学(Stanford University)
  • 5位:ハーバード大学(Harvard University)

いずれも大学内にブロックチェーンの講義を設けており、卒業後に多くの人材を業界へ送り出しています。

全体の特徴としては、ブロックチェーンの講義があるのは71.74%にあたる33/46校、研究センターを設置しているのは23.91%にあたる11/46校、学生主導の研究サークルがあるのは86.96%にあたる40/46校という点があげられます。

暗号資産・ブロックチェーンは、世界共通で若年層に受け入れられています。これは、ブロックチェーンの非中央集権的思想が影響していると考えられるでしょう。

以前より、アメリカでは大学でブロックチェーンを学べる環境が整備されており、次の産業を担う人材の育成に予断がありません。日本でも教育環境の整備が進むことを期待したいところです。

【参照記事】The Top Universities for Blockchain

イーサリアムノードが集権化

パブリックブロックチェーンとして最も多くのシェアを有しているイーサリアムにおいて、ネットワークを構成するノードのうち約70%が集権型のクラウドサービスを使用していることが明らかとなりました。

事の発端は、暗号資産関連のPodcastを運営するAnthony Pompliano氏のとあるツイートです。「ジェフ・ベゾス(Amazon創業者)の意向次第で、イーサリアム上のDeFiはシャットダウンされてしまう。」と記載されたツイートから始まる一連の議論では、全体の約70%のうち35%以上がAWSを使用しているとのデータも提示されています。

全体の約70%(Hosting:68.5%、10月14日時点)が集権型のクラウドサービスを採用
参照:ethernodes.org

AWSはAmazonが提供するクラウドサービスの総称であることから、先述のツイートが投稿されたと模様です。なお、これはイーサリアムノード全体のうち23%がAWS上で稼働していることを意味します。

今回の議論の背景としては、パブリックブロックチェーン最大手のイーサリアムが、本質的には十分に分散化されていないのではないかという論点があげられます。

ブロックチェーンは特定の管理者が存在しない点が特徴ですが、これは裏を返すと不特定多数の管理者が存在するということも意味します。管理者とはノードのことを意味し、突き詰めるとノードを動かすためのインフラシステムがネットワークを管理しているともいえるのです。

そのため、ノードの先にあるインフラシステムが十分に分散化していないのであれば、それのネットワークはパブリックブロックチェーンとはいえないでしょう。

なお、AWSを除く残りの77%は、Alibaba Cloud(18.2%)やGoogle Cloud(6.9%)などによって構成されています。今回の議論の中でいくつかのデータ元となったethernodes.orgでは、ノードのネットワークタイプ以外にもクライアントソフトウェアやOS、ノードの物理的な場所などを確認することができます。

今回の議論の中でAnthony氏が触れたかったことは、イーサリアムが本質的には集権化しているという状況についてではなく、過剰な投機熱を集めているDeFi市場への注意喚起です。急速に成長した市場には様々なリスクが存在しており、目に見えるものだけでなくイーサリアムのようなDeFiの基盤システムにもアンテナを張る必要があることを示唆しています。

【参照記事】70% of Ethereum Nodes Are Hosted on Centralized Services

まとめ、著者の考察

今週はCBDCに関するニュースが相次いで報じられました。CBDCは必ずしもブロックチェーンを使用するものではありませんが、システムの設計や特性は暗号資産と非常に近く、社会へのインパクトも大きいため要注目のトピックだといえるでしょう。

一方で、日本での取り組みが遅れていることは紛れもない事実です。中国やアメリカ、ヨーロッパ諸国とは異なり、日本では金融やテクノロジーに関する教育環境があまり整備されていません。

イーサリアムやDeFiに限った話ではありませんが、暗号資産の価格変動にばかり目を向けるのではなく、ファンダメンタルズを理解できる知識を身に付けることが何よりも重要ではないでしょうか。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。