【重要ニュースまとめ(8/1~8/15)】DeFi市場にバブルの兆し。イーサリアムクラシックで大規模な巻き戻しが発生

今回は、8月前半(8月1日〜8月15日)の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上智裕氏(@tomohiro_tagami)から寄稿していただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. DeFi市場にバブルが発生か
  2. コカコーラのパートナー団体がブロックチェーン活用
  3. ブロックチェーンの「巻き戻し」が発生
  4. Facebookが決済部門を新設
  5. DeFiバブルを象徴する出来事が発生
  6. まとめ・著者の考察

8月前半(8月1日〜8月15日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、DeFi市場に「ICOバブル」の兆しが浮上し世界中から注目を一挙に集めました。また、イーサリアムクラシックに大規模なReorg(リオーグ)が発生するなど、話題に事欠かない業界であることも改めて痛感しています。本記事では、8月前半の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

DeFi市場にバブルが発生か

成長著しいDeFi市場に、バブルの兆しが出てきました。DeFiでは、市場規模を計測する際にTVL(Total Value Locked)というロック(デポジット)額を指標に用いることが一般的となっています。

そんなTVLが、8月前半に50億ドルを突破しました。一見すると、右肩上がりの綺麗な成長曲線を描いているように見えますが、この成長の背景にある要因には注意が必要です。

参照:DeFi Pulse

今回の急成長の要因は、こちらの記事でも紹介したDeFiレンディングサービスCompoundに始まる一連の「ガバナンストークン祭り」です。

Web3.0プロジェクトは、基本的には全て分散型の運営を目指しています。そんな分散型の組織を形成するために、意思決定時にガバナンストークンが使われるのです。

Compound以外にも、MakerDAOやCurveなどがそれぞれ独自のガバナンストークンを発行しています。ガバナンストークンの保有量によって、そのプロジェクトへの影響力が変動する設計です。

このガバナンストークンに、本来の価値以上の期待が集まってしまったことが今回の「ガバナンストークン祭り」の発端です。保有者は、プロジェクトへの意思決定に参加するためにトークンを購入するのではなく、値上がりを期待した投機需要によって購入してしまった結果、バブルのような裏付けのない価格の高騰が発生してしまいました。

なお、今回のバブルを象徴する出来事も起きているため、合わせて末尾のパートで紹介しています。

【参照記事】Around the Block #7: Understanding yield farming and the latest developments in DeFi
【参照記事】The great big DeFi bubble—will it burst?

コカコーラのパートナー団体がブロックチェーン活用

コカコーラのボトルサプライヤー12社の参画するパートナー団体「Coke One North America(CONA)」が、サプライチェーンの効率化を目的としたブロックチェーン活用の取り組みを発表しました。

具体的には、サプライチェーンにおける注文書の改ざんや人的ミスの防止、流通経路のトラッキングなどをブロックチェーンで管理するといいます。

採用されたブロックチェーンは、イーサリアムを基盤としたBaseline Protocolです。リリース文には、下記の技術的な優位点がまとめられています。

  • イーサリアムのメインネットを従量制の参照基準として活用
  • 企業データは従来の記録システムに保存
  • 複雑でクローズドな組織のビジネスプロセスを自動化
  • DeFiへのアクセスおよび資産のトークン化などのユースケースを提供
  • オープンソースとしてOASIS(e-ビジネス標準化団体)の基準を満たす

今回の取り組みは、複数団体によるブロックチェーン活用にも関わらずイーサリアムを採用しています。これは、非常に“センスが良い”といえるでしょう。なぜなら、リリース文にも記載の通り「DeFiへのアクセス」を明確に目指しているからです。

昨今成長著しいDeFi市場におけるサービスのほとんどが、イーサリアム上に構築されています。そのため、たとえコンソーシアム型であってもイーサリアムを採用することで、各種DeFiサービスへのアクセスをシームレスに行うことができるのです。

仮にイーサリアムを採用しない場合、DeFiサービスに互換性を持たせることが難しく、必要以上に開発コストをかけなければなりません。ブロックチェーンは元々金融の技術であることや、いずれ巨大な市場を形成する可能性があることからしても、DeFiとの接続は優先的に考慮するべき項目といえるでしょう。

【参照記事】コカコーラのボトル業者、DeFiシステム応用で業務効率化を目指す
【参照記事】Baselining the North America Coca-Cola Bottling Supply Chain

ブロックチェーンの「巻き戻し」が発生

イーサリアムからハードフォークすることで誕生したイーサリアムクラシックに、計4,000ブロックを超える大規模なReorg(リオーグ)が発生しました。原因を特定した結果、最終的にこれは51%攻撃を受けたことによる対応であったとされています。

イーサリアムクラシックは、「TheDAO事件」をきっかけにイーサリアムがハードフォークすることで誕生したブロックチェーンです。TheDAO事件とは、2016年に起きたイーサリアムのハッキング事件であり、当時はハッキング事例が少なかったことも影響して、イーサリアムはこの事件を無かったことにしようとしました。その結果、ブロックチェーンのReorgを行なったのです。

Reorgとは、ブロックチェーンを形成する各ブロックを手動で巻き戻すことを意味します。ブロックを巻き戻すことで、不正に使用された分のブロックを無かったことにできるのです。一方で、これは非中央集権の思想に著しく反する行為であり、当然ですがイーサリアムコミュニティから多くの反発が生まれました。

その結果誕生したのがイーサリアムクラシックです。これをハードフォーク(無理やりチェーンを分裂させること)といいます。

今回のイーサリアムクラシックにおけるReorgの原因となったのは、51%攻撃です。51%攻撃とは、ブロックを形成するために必要なマイニングに使われるハッシュパワーの過半数を、特定のマイナーが独占してしまうことを意味します。独占することにより、意図的に不正を施したチェーンを正当なチェーンとすることができてしまうのです。

ビットコインやイーサリアムのように十分な数のマイナーが存在する場合には、51%攻撃の成功確率は限りなくゼロに近くなります。なぜなら、51%攻撃を成功させるには、文字通り過半数以上のハッシュパワー、すなわち無数に存在するノード(マイナー)の過半数をコントロールする必要があるからです。

しかしながら、イーサリアムクラシックには限られた数のマイナーしか存在しておらず、ハッカーは約19万ドルのコストで大量のノードを用意した結果51%攻撃に成功し、580万ドルを得たと報告されています。

ブロックチェーンでは、1度でも51%が起きてしてしまうとその後何度も起きてしまう可能性が高いといえます。なぜなら、Reorgを行なったところでマイナーの数が突然増えるわけではなく、51%攻撃に成功しやすいブロックチェーンだと判断されてしまうからです。

十分な数のマイナーを獲得できないブロックチェーンは、このような懸念材料を払拭することができません。こうなってしまうと、セキュリティに不安のあるブロックチェーンという認識がついてしまい、誰もそのチェーンを使わなくなってしまうことでしょう。

今回の一件は、いかにビットコインとイーサリアムが優れているかがわかる出来事でもあったといえるのではないでしょうか。

【参照記事】イーサリアムクラシック、今週2度目の「51%攻撃」を受ける
【参照記事】Statement Regarding Ethereum Classic Chain Reorganization

Facebookが決済部門を新設

米Facebookが、社内に決済・コマースの専用部門「Facebook Financial」を立ち上げました。このチームの責任者には、暗号資産Libraを率いるDavid Marcus氏が就任しています。

今回の組織再編により、Facebookは「Messenger」や「Instagram」、「WhatsApp」といった主要メッセージングサービスと、Facebook Payを中心とする決済機能を更に近づける方針です。

また、LibraのトップであるMarcus氏がこの事業をリードする意向であることからも、将来的な暗号資産決済の導入が予想できます。今回の発表についてMarcus氏は、今後もLibraプロジェクトは継続して指揮を取っていくと発言しました。

【参照記事】Facebook Financialを設立──デビッド・マーカス氏が責任者に
【参照記事】Facebook Financial Formed to Pursue Company’s Payments Plans

DeFiバブルを象徴する出来事が発生

冒頭で紹介したDeFiバブルを象徴する出来事が発生しました。DeFi界隈で「芋掘り」と呼ばれるYam Financeのガバナンストークンに関するトピックです(Yam Financeの発行するYAMトークンのアイコンがサツマイモのため「芋掘り」と呼ばれている)。

Yam Financeは、DeFi市場に流動性を提供するためのLiquidity Miningを担うサービスです。急速に成長しているDeFi市場ですが、株式市場や暗号資産市場と比較すると、まだまだ市場の流動性に欠けています。そのため、Liquidity Mining(流動性マイニング)という市場への資金提供を行うサービスが必要になるのです。

そんなLiquidity Miningを担うYam Financeが、昨今のDeFiバブルに乗り遅れまいと、わずか10日間で独自のガバナンストークン「YAMトークン」を開発しました。そしてこのYAMトークンに、公開後わずか1日で$480Mもの大金が流入したのです。

しかしながら、翌日にはプログラムの不具合が発覚しYAMトークンの価格が大暴落しています。不具合の原因は、リベースと呼ばれるYAMトークンの価格を一定に保つためのプログラムであり、全ての基礎となる部分です。

これはバブルの以外の何ものでもないといえるでしょう。今回の出来事があったにも関わらず、本記事執筆時点でもDeFi市場への資金流入は増え続けています。知識として有しておく必要はありますが、今のDeFiに投資をすることは絶対に推奨しません。

【参照記事】DeFi token YAM uncovers further flaw in $400 million lockup
【参照記事】「山芋農業は終わり」|分散型金融のヤム(YAM)トークン価格が一気に価値が0に、COMPなどに波及も

まとめ・著者の考察

2013年より暗号資産・ブロックチェーン業界に身を置き、2017~2018年のICOバブルを経験した著者としては、今のDeFi市場はバブルであると確信しています。ICOバブルは、中身のないアルトコインに資金が集まった結果発生しましたが、今回も中身のないガバナンストークンに資金が集まっているのです。

一方で、ICOとは異なりDeFiには一定の知識がないとアクセスできないため、バブルが弾けた際の人数的な被害は小規模にとどまるのではないかと考えています。不幸中の幸いとはまさにこの事です。

個人的には、話題になっているからといってDeFiにばかりに注目するのではなく、改めてブロックチェーンの基礎を学び直すのも良いかと思います。今回のイーサリアムクラシックのReorgは、ブロックチェーンの仕組みや歴史を学ぶことができる格好の題材です。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。