【重要ニュースまとめ(8/7~8/13)】6億ドル相当のハッキング事件が発生、米国では注目のインフラ法案が上院を通過。日本でも税制改正へ業界団体が連携

今回は、8/7~8/13の暗号資産・ブロックチェーン業界重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. 初心者向け主要ニュース【難易度:★☆☆】
    1-1. 金融庁長官が日本の規制とDeFiへの課題感語る
    1-2. 暗号資産税制の改正へ業界団体が連携
    1-3. Coinbaseが第二四半期決算を発表
  2. 暗号資産・ブロックチェーン重要ニュース【難易度:★★☆】
    2-1. OpenSeaがUniswapのガス代を上回る
    2-2. 米Circleが国法銀行ライセンス取得を目指す
  3. 暗号資産・ブロックチェーン重要ニュース【難易度:★★★】
    3-1. 米インフラ法案が上院を通過
    3-2. Poly Networkで6億ドル相当のハッキング事件が発生
  4. まとめ、著者の考察

初心者向け主要ニュース【難易度:★☆☆】

金融庁長官が日本の規制とDeFiへの課題感語る

7月から金融庁の長官に新任した中島氏が、日本の暗号資産規制について米ブルームバーグのインタビューに回答しました。

中島氏は、日本の規制は2018年の大規模なハッキング事件をきっかけとして厳しくなったと明言しています。また、その程度は他国と比べても厳格であることも認識しているとしました。

暗号資産に関する規制の整備は一定終えたため、現在は分散型金融に関する取り組みが課題としてあがっているといいます。金融庁は、7月19日に研究会の設置を発表しており、引き続き業界動向を注視していく構えを見せています。

【関連記事】金融庁長官「日本の規制は2018年から厳しくなった」との見解示す、DeFiへの課題感も

暗号資産税制の改正へ業界団体が連携

金融庁認定の自主規制団体であるJVCEAと業界団体のJCBAが共同で、2022年度税制改正要望書を公開しました。

要望の骨子としては、暗号資産取引にかかる利益への課税方法を20%の申告分離課税とした上で、損失分は翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができるとしています。

課題としてはあげられたのは、「税務申告促進」「税の公平性や制度内の整合性」「海外との競争力確保」の3点です。中でも、海外との競争力確保の観点からは、キャピタルゲイン課税を原則とする主要国の税制へ近づける狙いがあるようです。

【関連記事】JCBA・JVCEA共同 暗号資産に係る2022年度税制改正要望書を公表

Coinbaseが第二四半期決算を発表

Coinbasが2021年第二四半期決算を発表し、イーサリアムの取引高がビットコインの取引高を上回ったことを明らかにしました。Coinbaseにおける過去の実績からしても初めてのことになるといいます。

上場後2回目の決算となる今回は、取引収益が19億ドル、月間アクティブユーザーが880万人で着地しています。いずれもアナリストによる事前予想を上回る結果となりました。一方で、以前公表されていた年間予想は市場の冷え込みから下方修正される予定です。

ビットコインの取引高を上回ったイーサリアムについては、DeFiやNFTの盛り上がりが影響していることに加えて、イーサリアム2.0のステーキングサービスが好調だとしています。また、ビットコインとイーサリアム以外の暗号資産による取引高も、ビットコインの2倍近くにまで膨らんでおり、課題だったビットコイン頼みの業績に変化が現れつつあります。

【参照記事】Coinbase Releases Second Quarter 2021 Shareholder Letter

初心者向け主要ニュース【難易度:★★☆】

OpenSeaがUniswapのガス代を上回る

NFT関連プロダクト最大手のOpenSeaで生じるガス代が、DeFiプロダクト最大手のUniswapで生じるガス代を上回りました。

Dune Analyticsのデータによると、ガス代を発生させているプロダクトの上位を大部分がDeFi関連で占めている一方で、1位はOpenSeaになっています。これは、イーサリアム価格の高騰からくるNFT市場の盛り上がりを示しており、DeFiよりもNFTの方がイーサリアムの影響を受けやすいことがわかります。

ガス代を算出するには、トランザクションあたりのガス代×トランザクション数になるため、純粋に多く利用されているプロダクトである必要があります。なお、Uniswapはv2とv3でデータが二分されるため、両者を合計した場合にはOpenSeaを超えるガス代が生じていることになります。

【関連記事】OpenSeaのガス代がUniswapを上回る、NFT市場の伸びを反映

米Circleが国法銀行ライセンス取得を目指す

ステーブルコインUSD Coin(USDC)の発行・管理を担う米Circleが、国法銀行ライセンスの取得へ向けて動いていることを明らかにしました。ライセンスを取得した暁には、暗号資産だけでなく法定通貨の管理を行うための銀行業を行うことができるようになります。

国法銀行のライセンスは、米国で銀行業を行うために必要なものでJPモルガンやバンカメなどの大手銀行も当然取得しています。暗号資産関連企業としてこれまでに3社取得しており、Circleも4社目になろうとの動きです。

USDCは、ステーブルコインの中でも既存金融へ積極的に活用されているものであり、暗号資産と既存金融との橋渡しが期待されています。法定通貨担保型のステーブルコインとして市場をリードしてきた存在であり、また運営にCoinbaseが関わっていることからも、ブリッジ役としての活躍が期待できそうです。

一方で、今週はUSDCの説明サイトから「米ドルに裏付けられた資産である」旨が修正され「米ドルまたはその他の米ドルと同等の価値を持つ資産である」と変更されました。実際に公開されているUSDCの裏付け資産の内訳を見ると、確かに全て現金で構成されているわけではないためこの記述は正しいとも捉えられます。ただし今後は、法定通貨担保型のステーブルコインと言うのは適切ではないかもしれません。

【関連記事】USDC運営のCircle、国法銀行ライセンスを取得へ

初心者向け主要ニュース【難易度:★★★】

米インフラ法案が上院を通過

米国の「インフラ法案」が賛成多数で上院を通過しました。暗号資産市場からの大幅な税収増が盛り込まれていた法案であることから、業界からの大幅な反発が起こっていたものの、最終的には修正されない結果となっています。

今後5年間で1兆ドル以上の予算を費やすインフラ法案は、バイデン政権下の目玉政策として注目を集めていました。主にインフラ設備に対する投資を行う政策ですが、その資金確保のために暗号資産市場が対象の一つとされたため、業界からは一部修正を求める動きが上がっていました。

修正意見としては、今回の税収増の対象となる「ブローカー」の定義をどこまで拡大するのかといった主旨のもので、当初案では取引所以外にウォレットや開発者、マイナーなども含まれていました。暗号資産市場でまともにマネタイズができているのは取引所とマイナーだけであり、ウォレットや開発者もこの定義に含めることは適切ではないとの見解です。

しかし、結果的にはPoWにおけるマイナーのみが定義から外されることとなり、PoSへの移行が進んでいるイーサリアムのバリデータなどが含まれることになりました。ネットワークの分散性に影響を与えないかが危惧されています。

【関連記事】米国で注目集める「インフラ法案」、税制強化に対する修正案が続出するも反映されず

Poly Networkで6億ドル相当のハッキング事件が発生

クロスチェーンプラットフォームPoly Networkがハッキング被害に遭い、6億ドル相当もの暗号資産が不正流出する事件が起きました。Poly Networkの対応するブロックチェーン「イーサリアム」「BSC」「Polygon」が対象となっています。

今回の大規模事件の対象になったのは、Poly Networkのチェーン間を繋ぐスマートコントラクトの脆弱性だったようです。DAIやUSDT、UNIなどのDeFi系トークンが不正に流出していることから「DeFiで事件が発生」との報道が出されているものの、当然ですがPoly Networkのコントラクトに問題があっただけでDeFi全体で何か問題があったわけではありません。

なお、事件を起こした犯人からは盗んだほぼ全ての資金の返却が行われています。犯人は、「金銭に興味はなく脆弱性を暴く必要があった」とのメッセージを送っていました。結果的に資金面での被害は最小限に収まったものの、またしてもハッキング事件により暗号資産やDeFiのイメージが悪くなってしまっています。

【参照記事】https://twitter.com/PolyNetwork2/status/1425073987164381196

まとめ、著者の考察

今週はPoly Networkへの大規模ハッキング事件が大きく話題となりました。金額の大きさも影響し業界外でも幅広く報じられており、関心の高さが浮き彫りとなっています。しかし、中には事実と異なる報道も見かけられ、いかに正しい理解をするのが難しい分野なのかを改めて痛感しました。

今週上院を通過した米国のインフラ法案も、引き続き多くの議論を巻き起こしています。一見すると業界と関係のないトピックかと思われますが、税収増の対象になってしまったことで民間からも多数の反発意見があげられていました。中には米国を離れる決断をしなければならないといった声もあり、税制の難しさを感じています。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。