【重要ニュースまとめ(7/31~8/6)】イーサリアムの大型アップデート「London」が実装完了。IMFは暗号資産への懸念を表明、SECもさらなる規制を視野に入れた見解

今回は、7/31~8/6の暗号資産・ブロックチェーン業界重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. 初心者向け主要ニュース【難易度:★☆☆】
    1-1. PayPalが暗号資産ウォレットのスーパーアプリ化を計画
    1-2. スクエアが決算発表、豪Afterpayの買収も
    1-3. 欧州投資基金がブロックチェーンファンドへ資金提供
  2. 暗号資産・ブロックチェーン重要ニュース【難易度:★★☆】
    2-1. イーサリアムハードフォーク「London」が実装完了
    2-2. 「暗号資産を国の通貨に採用するのは早計だ」IMFとの見解
  3. 暗号資産・ブロックチェーン重要ニュース【難易度:★★★】
    3-1. 米連邦保安官局がカストディ企業にAnchorageを採用
    3-2. 大部分の暗号資産が証券に該当するとの見解、SEC委員長
  4. まとめ、著者の考察

初心者向け主要ニュース【難易度:★☆☆】

PayPalが暗号資産ウォレットのスーパーアプリ化を計画

PayPalが第二四半期決算説明会を行い、将来的なウォレットのスーパーアプリ化について言及しました。合わせて、DeFiやスマートコントラクトにも注力していく方針を示しています。

2020年11圧に暗号資産市場への本格参入を行って以降3度目となった今回の決算では、昨年同期比17%増となる62億ドルの純利益を計上し、決済総額は36%増の3,110億ドルになったとしています。

暗号資産事業についても好調を維持しており、数ヶ月以内に暗号資産のウォレット機能を中心に据えたスーパーアプリをローンチする計画を発表しました。アプリでは、高い利回りを獲得できる貯蓄機能も搭載予定だとしています。

また、スーパーアプリを実現するためにスマートコントラクトやDeFiで使われている技術を積極的に活用していく方針も明らかにしました。

【関連記事】PayPal、DeFiやスマートコントラクト活用でウォレットのスーパーアプリ化を計画

スクエアが決算発表、豪Afterpayの買収も

PayPalに続きスクエアも第二四半期決算を発表しました。ビットコイン関連事業で27億200万ドルの売上をあげています。

一方で、スクエア自身も投資目的でビットコインを保有しており、こちらの業績は4,500万ドルの損失計上となりました。ただし、これは第二四半期単体での結果であり、過去の投資実績を含めると1億5,400万ドルの利益を生み出しています。

スクエアは、このタイミングでオーストラリアの後払い決済大手Afterpayの買収も発表しており、スクエアとの統合が完了した際にはAfterpayのユーザーもビットコインを購入できるようになるといいます。

【関連記事】米スクエアが決算発表、ビットコイン関連事業で27億ドルの売上。豪Afterpayの巨額買収も

欧州投資基金がブロックチェーンファンドへ資金提供

EUにおける中小企業などへの融資を担当するEIF(欧州投資基金)が、ルクセンブルク拠点のFabric Venturesへ資金提供を行ったことを発表しました。

Fabric Venturesは、2013年に設立された暗号資産・ブロックチェーン領域特化の老舗ベンチャーファンドです。これまでに、CoinbaseやPolkadot、Axie Infinityといった注目プロジェクトへ出資してきています。

EIFが暗号資産関連の事業へ資金を提供するのは初めてのことであり、EUにおける暗号資産・ブロックチェーンの知名度が高まってきたことを表しています。

Fabric Venturesは今後、「オープンウェブ」や「オープンファイナンス」といった領域を中心に投資を加速させていくとしました。

【関連記事】欧州投資基金がブロックチェーンファンドへ初の資金提供、Fabric Venturesが1.3億ドルの資金調達

初心者向け主要ニュース【難易度:★★☆】

イーサリアムハードフォーク「London」が実装完了

イーサリアムの大型アップデート「London(ロンドン)」が予定通りブロックナンバー12,965,000でアクティベートされました。

注目を集めた要因としては、実装されたEIP-1559による手数料の削減があげられます。EIPが実装されたことで、BASEFEEと呼ばれる手数料の一部分をマイナーに報酬として渡すのではなくバーンすることになります。

これは、ETHを長期的にデフレさせていくための対応であり、すでに4,300ETH(約12億円)以上のETHがバーンされました。

バーンされたETHのデータを提供するultrasound.moneyによると、これまでに多くのETHをバーンしたトランザクションの発生元は、OpenSeaやUniswap V2、Axie Infinity、Tetherなどによるものとなっています。トランザクションあたりの手数料の高さやトランザクション数の多さがパラメータとなっており、人気サービスであることを物語っています。

【参照記事】Ethereum (ETH) Blockchain Explorer – etherchain.org – 2021

「暗号資産を国の通貨に採用するのは早計だ」IMFとの見解

IMFがブログを公開し、「暗号資産を法定通貨として採用するのが早計だ」との見解を示しました。エルサルバドルでビットコインが法定通貨として認められたことを受けての動きと見られます。

IMFは、国際金融の安定化のために、加盟国に対して融資などを行う国際組織です。過去にはEUと共にギリシャへの融資を行ったり、新型コロナウイルスへの経済対策のための無利子融資を行っています。

IMFの公開したブログでは、暗号資産を他のデジタル通貨とは根本的に異なる性質を持つものと言及した上で、国の法定通貨とするのは早計であるとの見方を示しました。コントロールできない資産を法定通貨とすることで金融政策の効果が薄れることや、マクロ経済への負担増などを懸念点としてあげています。

一方で、デジタル通貨は決済システムの迅速化を実現し、金融包摂を推進する可能性があると評価しています。なおIMFが評価したデジタル通貨には、CBDCや民間発のステーブルコインなどが該当すると予想されます。

【関連記事】国際通貨基金(IMF)、「暗号資産を国の通貨に採用するのは早計だ」との見解示す

初心者向け主要ニュース【難易度:★★★】

米連邦保安官局がカストディ企業にAnchorageを採用

マネーロンダリングやテロ資金供与に使用され押収された暗号資産の管理を行う米連邦保安局が、カストディ企業としてAnchorageを採択したことがわかりました。

Anchorageは2021年初旬に、米国における国法銀行ライセンスを暗号資産関連企業としては初めて取得しています。暗号資産のカストディサービスを提供する企業の中でもBitGoなどと並び大手に分類され、今回連邦保安局より採用される結果となりました。

Anchorageは今後、連邦保安局に対して押収された暗号資産の管理だけでなく、会計監査や暗号資産以外のトークン(ステーブルコインなど)管理、ブロックチェーンのフォークへの対応などを行っていくとしています。

米国を含む各国で暗号資産に対する規制が強まる傾向にある中、最も重要なカストディ領域は専門のプロバイダーが牽引する様相を見せており、日本からもこの分野を専門とする企業が出てくることを期待したいです。

【関連記事】米カストディ大手Anchorage(アンカレッジ)、米連邦保安官局にサービス提供へ

大部分の暗号資産が証券に該当するとの見解、SEC委員長

先週のまとめ記事でも紹介したSEC委員長のゲンスラー氏が、株式トークンやステーブルコインだけでなく、一般的な暗号資産も証券に該当する可能性が高いとの持論を展開しました。これに対しては、CFTCの委員などが、SECは暗号資産を規制する権限を有していないなどとの異論を示しています。

ゲンスラー氏は先週時点で、証券を価値の根拠とする株式トークンやステーブルコインは証券法の対象になるとの見解を示していました。今週はこの主張を拡大し大部分の暗号資産とICOトークンは証券に該当するとの見方を強めています。

SECはこれまでに、ビットコインとイーサリアムのみを証券ではないと説明しており、ゲンスラー氏はその他全ての暗号資産が証券に該当すると考えているのでしょう。SECの定義としては、十分に管理が分散化されているものに関しては暗号資産とは見なさないとの主張ですが、ビットコインとイーサリアムの他にも十分に管理が分散化されているものは存在していると言えます。

CFTCからも異論が出ているため今回のゲンスラー氏の発言がそのまま反映されるわけではありませんが、実際に規制を定める際には実態に即した内容を定義していく必要がありそうです。

【参照記事】Remarks Before the Aspen Security Forum

まとめ、著者の考察

今週は何と言ってもイーサリアムの大型アップデート「London」が大きく注目を集めた1週間となりました。ETHの価格に関しても、ハードフォーク前に織り込み済みと考えられていたところから、さらに一段上昇する結果となっています。イーサリアムは、ビットコインと比べてもファンダメンタルが豊富にあるため、比較的市場を予想しやすい銘柄だと言えそうです。

暗号資産が台頭するにつれて、CBDCやステーブルコインといったデジタル通貨への注目も高まってきています。CBDCやステーブルコインは、暗号資産と比べて規制を整備しやすいテーマであるということもあり、まずはそちらから当局が介入していくことになるでしょう。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。