【重要ニュースまとめ(7/10~7/16)】金融庁がDeFiに関する活動報告書を公開、G20ではグローバルステーブルコインに言及、Uniswapがガス代削減へOptimismへ対応

今回は、7/10~7/16の暗号資産・ブロックチェーン業界重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. 金融庁がDeFiに関する活動報告書を公開
  2. G20が世界共通のステーブルコインに言及、適切な準備が必要と主張
  3. Uniswap v3がセカンドレイヤー最有力Optimismでローンチ
  4. まとめ、著者の考察

金融庁がDeFiに関する活動報告書を公開

日本の金融庁が、ブロックチェーンやDeFiに関する過去の取り組みをまとめた報告書を公開しました。2019年9月に公表した初版に続く第二版となっています。

金融庁は、フィンテックなどの先端金融領域に関わるビジネス動向を把握するために、2018年7月よりFinTech Innovation Hubを設置しています。ブロックチェーンやDeFiに関係する取り組みとしては、Blockchain Governance Initiative Network(BGIN)との連携やBlockchain Global Governance Conference(BG2C)の開催、ブロックチェーン「国際共同研究」プロジェクトの推進などがあげられます。

今回の報告書の中で金融庁はDeFiについて、「仲介者がいない完全にP2P(Peer to Peer)の金融取引を実現する可能性があり、様々な機会や便益をもたらし得る一方、既存の規制の執行能力が失われる恐れもあります。」との見解を示しました。

その上で、従来型の規制アプローチでは、AML/CFTを中心に投資家保護の観点からも目標達成が困難であると考えているとし、民間部門との連携不足が顕著であることを指摘しています。

ブロックチェーン産業の中でもDeFiは特に専門性が高く、規制当局の動きだけでは限界があると言えるでしょう。金融庁がそうした認識を持っていることは、今後の規制を整備する上で前向きに捉えることができそうです。

しかし今回の報告書を見ていると、当局としてはどうにかDeFiを強く規制したいと考えているのではないかという思惑を感じます。米国では、SEC理事のクリプトママことHester Peirce氏を中心に、過度な規制はイノベーションを阻害する可能性があるとの懸念が指摘されています。

Peirce氏は、「管理者を排除することは、ユーザーのデータが乱用されたり独占禁止法に抵触する大手テクノロジー企業への依存を解消することに繋がります。DeFiにより、ユーザーヘ安全な代替手段を提供することができるでしょう。」との見解を示しています。これはまさにその通りで、過度な規制は現在のGAFAM問題を助長する可能性が高く、集権社会から分散社会への移行を遅らせる恐れがあるのです。

当局としての立場はもちろん理解できますが、適切な規制を整備するには、より現場を理解した民間部門との連携を最重要事項として認識することが欠かせません。実際、各国のDeFi団体が合同で立ち上げた国際分散型金融連盟(Global DeFi Coalition)からも、FATFに対して民間部門との連携強化を優先事項として認識する提言が出されています。

【参照記事】金融庁がFinTechやDeFiに関する活動報告を公開、従来型の規制アプローチは現実的ではない旨を認識

G20が世界共通のステーブルコインに言及、適切な準備が必要と主張

9日から10日にかけて開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の中で、世界共通のステーブルコインに関するセッションが設けられました。現時点では時期尚早とし、適切なタイミングで議論を行う必要があるとの見解が示されています。

デジタル課税や最低法人税率の統一などで注目を集めた今回のG20ですが、暗号資産・ブロックチェーン業界からは主にステーブルコインに関するセッションが設けられました。

結論としては、世界共通のステーブルコイン「グローバルステーブルコイン」の運用は開始してはならないと繰り返し言及されています。適切な設計と適用可能な基準を遵守する必要があるとし、現時点では時期尚早との見方で一致したようです。

グローバルステーブルコインについては、過去に金融安定理事会(FSB)や金融活動作業部会(FATF)からもG20へ報告書が提出されています。その際は、AML/CFTや投資家保護の観点から便益よりもリスクの方が高いと結論づけられていました。

現状ステーブルコインに対する規制は各国で未整備の状態が続いています。日本でも、法定通貨建てのステーブルコインは暗号資産の定義からは外れる解釈が一般的となっており、暗号資産取引所がステーブルコインを取り扱うことはできない状況です。

一方で、MakerDAOの発行するDAIについては、法定通貨建てではなく暗号資産建てとなっているためこの限りではないものの、やはり規制が未整備であることから目立った動きが取りづらい状況だと考えられます。

民間発のステーブルコインが徐々に市民権を得つつある中で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)も引き続き調査・開発が各国で進められています。今週は、欧州中央銀行(ECB)でデジタルユーロプロジェクトの進捗が発表されました。

ECBは、デジタルユーロプロジェクトを調査フェーズへと移行したことを公表し、今後はプロトタイプの構築に着手する意向を示しています。日本ではCBDCの概念実証フェーズが続いており、主要先進国には大きく遅れを取っている状況です。

欧州および日本の状況に対して米国では、連邦準備制度理事会(FRB)のJerome Powell議長が今週、CBDCには前向きな見解を示しつつもステーブルコインには厳格な規制が必要だと言及しました。

「連邦政府の管理下にあるデジタルドルのシステムが構築されれば、ビットコインやステーブルコインのような民間発の通貨は必要なくなるだろう」とコメントしています。

先述の日本の金融庁によるDeFiへの見解と同様、当局はブロックチェーンによる分散型のイノベーションに対して基本的には制御したい方針を持っています。

【参照記事】Third G20 Finance Ministers and Central Bank Governors meeting under the Italian Presidency

Uniswap v3がセカンドレイヤー最有力Optimismでローンチ

DEX大手のUniswapが、バージョン3でイーサリアムのセカンドレイヤーOptimismへの対応を行なったことを発表しました。まずはアルファ版でのローンチが行われており、7月中のOptimism正式版を待って実装を完了させる予定です。

5月にローンチされたUniswap v3では、流動性プロバイダーの資本効率の改善と変動制手数料の導入が行われました。合わせて、セカンドレイヤーソリューション最有力のOptimismへの対応も発表されており、このタイミングでの実装となっています。

Optimismへの対応は、高騰するガス代を削減することを目的としており、イーサリアム上で最も多くのガスを消費しているUniswapのOptimismへの対応には注目が集まっていました。

Optimismはこれまでに、DeFiプロトコルSynthetixへの導入が行われています。アルファ版ではネットワークの管理は集権的に行われるものの、7月中を予定しているメインネットへのローンチに向けて最後の仕上げに取り掛かっているようです。

イーサリアムでは、PoSへの移行とシャーディングの実装を主な目的とするイーサリアム2.0の開発が進められています。しかし、開発難度の高さから想定通りのスケジュールで進んでいない状況です。

そこで期待されているのが、Optimismなどのセカンドレイヤーソリューションでした。イーサリアムネットワークを混雑させているUniswapがOptimismへ対応したことは、他のDeFiプロトコルやNFTプロジェクトにとって前向きなことだと言えるでしょう。

そんなUniswapですが、今週はガバナンスに関するネガティブな動きが出てしまいました。Uniswapの直接的な問題ではありませんが、Uniswapから1000万ドルの資金提供を受けたDeFi業界団体「DeFi Education Fund」が、受け取ったUNIトークンをステーブルコインUSDCに一気に換金したことが話題となっています。

DeFi Education Fundは、DeFi業界発展のためにUniswapガバナンスから巨額の資金提供を受けた団体であり、活動資金として4~5年かけて徐々にUNIトークンを換金していくと説明していました。ところが受け取った途端に50%をまとめてUSDCに換金したことで、ガバナンスにから経緯を追及されています。

団体を率いるMarc Boiron氏は、受け取ったUNIトークンの50%を即時換金することは最初から公開していた計画であると主張しているとのことです。団体関係者が資金を持ち逃げするといった事態にはなっていないものの、UNIトークンに巨額の売り圧力が働いたことは事実であり、分散型ガバナンスを運営することの難しさを物語っています。

【参照記事】Uniswap on Optimism (Alpha launch)!

まとめ、著者の考察

今週は、日本の金融庁によるDeFi関連の活動報告やG20のグローバルステーブルコインに関する見解など、規制当局の動きが目立った1週間でした。集権組織を象徴する規制当局としては、分散型の動きをどうにかコントロールしたいとの思惑が感じられ、両者の動向には引き続き注目が集まりそうです。

一方で、分散型ガバナンス自体にもUniswapから課題が露呈しました。現状は、分散型組織に対する法律が何もない状態であるため、仮に組織を率いる人物が資金の持ち逃げなどを行なった場合でも、倫理観を疑われるだけで法律的な違反には該当しないケースが多くなっています。

ブロックチェーンによるイノベーションを全面的に推進しつつも、AML/CFTや投資家保護などの規制が必要であるため、当局と民間の連携がますます重要になってくるのではないでしょうか。

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