【重要ニュースまとめ(4/29~5/5)】日銀がDeFi分析レポートを公開。PayPalとマスターカードがステーブルコインとCBDCの調査を加速

今回は、4月29日〜5月5日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. 暗号資産初心者向け主要ニュース
    1-1. a16zが第3号ファンドを組成へ
    1-2. 日銀がDeFi分析レポートを公開
  2. 民間セクターのブロックチェーン動向ニュース
    2-1. PayPalが独自のステーブルコインを調査
    2-2. マスターカードが暗号資産とCBDCのスマートコントラクトを研究
    2-3. BitmainがイーサリアムのASICマシンを開発
  3. 主要プロトコルの最新動向ニュース
    3-1. イーサリアムマイナーがガスリミットの引き上げに同意
    3-2. Maker Foundationが開発資金をMakerDAOへ返還
    3-3. ビットコインの大型アップデート「Taproot」がアクティベート期間に
  4. まとめ、著者の考察

今週(4月29日〜5月5日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、a16zの第3号ファンドや日銀のDeFiレポートやなどが話題になりました。また、PayPalが独自のステーブルコイン開発へ調査を進めていることや、マスターカードがCBDCへの対応を加速させていることにも注目です。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

暗号資産初心者向け主要ニュース

a16zが第3号ファンドを組成へ

大手ベンチャーキャピタルa16zが、第3号のクリプト特化型ファンドを計画中であることがわかりました。ファンドサイズは最大10億ドルになるとされ、5.15億ドルの第2号ファンドの倍近くとなります。

第3号ファンドの詳細は明らかになっていませんが、Crypto Fund Ⅱと称された第2号ファンドでは、主にDeFiやWeb3.0、次世代決済システムといった領域が投資対象とされていました。

第3号ファンドでも引き続きDeFiとWeb3.0が中心となりそうです。加えて、NFTやカストディといった領域が入ってくると予想しています。NFTについてはa16zのブログやPodcastでも度々触れられていることから、1つの中心領域として名前があげられるでしょう。

暗号資産のカストディは昨今急激に事業を拡大しており、既存金融との橋渡しを担う役割を担うことから巨額の資金を必要とします。マーケットも大きいためリターンの可能性も大きく、ここを投資対象とする可能性は大いにありそうです。

【関連記事】a16zが暗号資産・ブロックチェーン特化の第3号ファンドを組成へ、過去最大の10億ドル規模

日銀がDeFi分析レポートを公開

日銀の決済機構局が、DeFiやWeb3.0ガバナンスに関する分析レポートを公開しました。レポート内では、具体的なプロジェクトとしてDEXのUniswapとレンディングのCompoundが例にあげられています。

また、2020年に話題となったイールドファーミングと流動性マイニングについても触れ、合わせてガバナンストークンについても解説されています。レポートの著者が、世界的な人気書籍マスタリングビットコイン/イーサリアムの訳者である鳩貝氏であることもあり、業界の先進的な動向が簡潔にまとめられている印象を受けました。

ガバナンストークンによる分散型組織を考察する上では、インターネットのガバナンスに関連した国際機関の例を出してこれらに学ぶ必要があるとしました。具体的には、IETFやICANN、W3Cといった組織です。

【関連記事】日銀決済機構局がDeFiレポートを公開。メリットやリスク、規制の難しさに言及

民間セクターのブロックチェーン動向ニュース

PayPalが独自のステーブルコインを調査

PayPalが独自のステーブルコインを開発する計画を立てていることがわかりました。DeFi特化のパブリックチェーンであるAvalancheの開発を主導するAva Labsとの提携により検討を進めているといいます。

昨今は、既存金融の企業がステーブルコインを採用するケースが増えてきています。WeWorkが利用料にステーブルコイン決済を導入したり、Signature Bankが送金システムにステーブルコインを統合するなどの動きを見せていました。

PayPalは、傘下のVenmoでも暗号資産事業を開始しており、今年はより一層暗号資産への注力を強めていくとしています。暗号資産決済の需要増を踏まえ、他社のステーブルコインを採用せずに自社で発行することにより一層のシェアを取りに行く構えです。

PayPalがステーブルコインに対応する背景には、CBDCを睨んだ計画があると考えられます。先にステーブルコインに対応しておくことで、数年以内に世界的にCBDCが発行されたタイミングで遅れを取ることなく対応することができると計画しているのでしょう。

【参照記事】PayPal has held exploratory talks about launching a stablecoin: sources

マスターカードが暗号資産とCBDCのスマートコントラクトを研究

マスターカードが、暗号資産とCBDCのインターオペラビリティ(相互接続)を可能にするスマートコントラクトの開発を検討していることがわかりました。

全世界で調査・開発が進んでいるCBDCですが、必ずしもブロックチェーン上に発行されるわけではありません。先行する中国では、複数のブロックチェーンに対応するマルチチェーン化が進められていますが、米国ではブロックチェーンへの対応は明確化していない状況です。

これに対してマスターカードは、CBDCがブロックチェーン上で発行されることを前提に、既存の暗号資産との互換性を考慮したスマートコントラクトの開発を検討しているといいます。

ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産が決済に使用されるシーンはあまり多くありませんが、ステーブルコインであれば決済の需要増は高まりつつあります。ステーブルコインとCBDCの互換性が実現されれば、デジタル通貨の利便性が一気に高まることが期待できます。

日本を含む多くの国の決済システムは2層構造が採用されています。2層構造とは、中央銀行が発行した通貨を市中銀行が1度全て引き受けて国民へ配布するというシステムです。

CBDCでも同じ2層構造が採用される可能性が高く、マスターカードは民間部門との連携部分に介入していく方針を示しています。

【関連記事】マスターカードがCBDCと暗号資産を繋ぐスマートコントラクトを研究開発

BitmainがイーサリアムのASICマシンを開発

ビットコインのマイニングプール大手Bitmainが、イーサリアムの最新ASICマイニングマシンAntmier E9を発表しました。GPUによるマイニングの30倍もの性能を誇るとしています。

イーサリアムは、環境負荷の影響などからPoWではなくPoSへの移行を進めています。これは「イーサリアム2.0」と呼ばれ、イーサリアムにおける過去最大のアップデートとなる予定です。

PoSへの移行は2020年12月から既に開始されており、2021年から2022年にかけてアップデートが完了する予定とになっています。これにより、イーサリアムではマイニングが必要なくなりますが、Bitmainはこのタイミングで新たなマイニングマシンを用意してきました。

思惑としては、イーサリアム2.0の開発スケジュールが遅れると予想していることや、仮に予定通りPoSへ移行したとしても、イーサリアムクラシック(ETC)などへマシンをそのまま使いまわせることなどがあげられるでしょう。

そもそも、イーサリアムにはEthashというアルゴリズムが存在し、PoWの場合でもASICマシンは使用できない仕組みとなっていました。つまり、Bitmainは何らかの方法でEthashへの対策を講じていることになります。

【関連記事】Bitmainがイーサリアム用ASICマイニングマシンを発表、ASIC耐性のEthashを回避

主要プロトコルの最新動向ニュース

イーサリアムマイナーがガスリミットの引き上げに同意

イーサリアムのマイナーがブロックにおけるガスリミットの上限を15Mにまで引き上げました。これにより、トランザクションの混雑が緩和されることが期待されます。

イーサリアムは、ビットコインなどと異なりブロックサイズが存在しません。その代わり、ブロックに格納できるガス代の上限(ガスリミット)が設定されています。

ブロックにはトランザクションが格納されており、そのトランザクションにはガスが含まれることから、結果的にガス代の上限に収まる範囲でトランザクションが処理される仕組みです。

ガスリミットを引き上げることで、より多くのトランザクションを処理できることになります。しかし、一度に多くのマイナーがマイニングを行うことになるためブロックチェーンが分岐しやすくなってしまい、セキュリティが損なわれる可能性もあるのです。

そのため、ガスリミットの引き上げは少しずつ慎重に行われることになっています。現状のイーサリアムはガス代の高騰に悩まされ続けており、今回のようにガスリミットの上限を引き上げるなどしています。

しかしながら、根本的な解決にはイーサリアム2.0におけるシャーディングの実装が必要になるでしょう。Optimismなどのセカンドレイヤーの台頭も期待されています。

【関連記事】イーサリアムがガスリミットを引き上げ、ガス代の高騰を抑制へ

Maker Foundationが開発資金をMakerDAOへ返還

MakerDAOの開発を主導するMaker Foundationが、開発費として保有していたMKRを予定通りMakerDAOプロトコルに返還しました。金額にして約4億8,000万ドルとなっており、用途についてはMakerDAOコミュニティのみで決められることになっています。

MakerDAOは、ステーブルコインDAIの発行及び管理を行うプロトコルです。Maker Foundationが開発を主導していますが、年内にガバナンストークンMKRの保有者による分散型の運営形態を完成させる予定となっています。

今回Maker Foundationは、MakerDAOの開発を主導するために保有していたMKRのうち、余った分(総供給量の1%を除く)をプロトコルへ返還することを発表しました。これに伴い、今後Maker FoundationがMakerDAOの開発を主導することはなくなります。

返還されたMKRの用途についてはMaker Foundationは一切の介入を行わないとし、MKRの保有者によるガバナンス投票によって決定されるとのことです。いよいよMakerDAOの完全な分散化が現実味を帯びきました。

【参照記事】The Maker Foundation Returns Dev Fund Holdings to the DAO May 3, 2021

ビットコインの大型アップデート「Taproot」がアクティベート期間に

ビットコインの大型アップデート「Taproot」が、アクティベート期間に入りました。今後3ヶ月間でマイナーによる対応が進められるといいます。

Taprootは2018年に提案されたアップデートで、プライバシー性能とスケーリング性能を高めるシュノア署名の実装が含まれています。シュノア署名が実装されることで、トランザクションの匿名性が上がるだけでなく、ブロック内に格納するデータサイズの削減にもなるためスケーラビリティ問題の解決にも繋がるのです。

Taprootは、2016年にアクティベートされたSegwit以降で最も大きなアップデートとなっており、近年のビットコイン動向の中でも特に注目を集めています。

今回のアクティベート期間は通常の流れとは異なる方法が採用されました。ビットコインのような分散型コミュニティによるアップデートの場合、通常は長い期間をかけて1つの意思決定を行います。

しかし今回は、3ヶ月という上限期間を設けることでスピーディに意思決定が行われることになりました。ハッシュレートの90%を占めるマイナーがアクティベートした場合、Taprootが正式にネットワークへ展開されることになります。

【参照記事】Bitcoin Core 0.21.1 Released With Taproot Activation Code

まとめ、著者の考察

日銀の公開したDeFi分析レポートは、気軽に読める長さで簡潔にまとめられており、現時点で公開されている日本語のDeFiレポートの中でも最も優れたものの1つになりそうです。現時点で日銀がDeFiをどのように捉えているかを知るには、こういったレポートの存在は貴重だと言えるでしょう。

イーサリアムの開発が進むにつれて、徐々にその周辺環境で目立った動向が出てくるようになりました。イーサリアムの強みはそのエコシステムにあるため、具体的な動きがETHの価格に反映されることは良い傾向だと言えるのではないでしょうか。

既存金融の動向としては、引き続きPayPalやマスターカードを中心に新たな取り組みが出てきており、こちらの動きからも目が離せません。

【関連記事】ビットコインとは?特徴・仕組み・購入方法
【関連記事】イーサリアムとは?特徴・仕組み・購入方法

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。