【重要ニュースまとめ(4/15~4/21)】Coinbaseがナスダックへ上場。セーフハーバールールの更新でトークン発行環境に変化も。MakerDAOが現実世界の資産を担保にステーブルコインを発行へ

今回は、4月15日〜4月21日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。

目次

  1. Coinbaseがナスダック証券取引所に上場
  2. セーフハーバールールがアップデート
  3. MakerDAOが現実世界の資産を担保にDAIを発行
  4. まとめ、著者の考察

今週(4月15日〜4月21日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、Coinbaseの上場やクリプトママのセーフハーバールールなどが話題になりました。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。

Coinbaseがナスダック証券取引所に上場

大手取引所Coinbaseがナスダック証券取引所への上場を果たしました。ウォール街に暗号資産が認められた記念すべき日となり、業界全体に大きな影響を与える出来事になったといえます。

Coinbaseからの「$COIN — it’s only the beginning」と題した発表の通り、これは始まりにすぎません。暗号資産はまだまだリスクの伴う金融資産であり、ブロックチェーンがWeb3.0を実現するにはエコシステムがあまりにも脆弱すぎます。

Coinbaseは、収益の大部分を暗号資産取引の手数料に依存しているため、持続的な事業を展開するためにステーキングやカストディ、その他の新規事業に今後は注力すると言及しました。

暗号資産取引以外のビジネスが成長することで、ブロックチェーンエコシステム全体の成長を促すことができるため、引き続きCoinbaseの動向には要注目です。

Coinbaseは数年前より日本にも拠点を設けて活動しています。暗号資産取引事業以外の業績次第では、今後の日本市場への本格参入の可能性が高まってくるのではないでしょうか。

今回の上場は、一般的なIPOとは違い直接上場となっているため新規で株式は発行されていません。そのため、上場による資金調達は行われておらず、既存株主が保有する株式を売却する形での株式公開となっています。

従って、上場したからといった新規事業への投資やM&A、出資などがすぐに増加するわけではなさそうです。しかしながら、今回の上場により暗号資産・ブロックチェーン業界全体がウォール街からの信頼をある程度は勝ち取ることになったため、ブロックチェーン業界への副次的な資金流入は期待して良いのではないでしょうか。

いずれにせよ、Coinbaseの上場は歴史の転換点として今後も語り継がれることになりそうです。

【関連記事】Coinbaseがナスダックに上場、暗号資産業界の節目に
【参照記事】$COIN — it’s only the beginning. By Brian Armstrong, Co-founder and CEO | by Coinbase | Apr, 2021

セーフハーバールールがアップデート

SECコミッショナーのHester Peirce氏が、過去に自身が提唱していた暗号資産・ブロックチェーン業界のセーフハーバールールについてアップデート内容を公開しました。

SECはこれまでに、ビットコインとイーサリアムのみを証券ではないと明確化しており、それ以外についてはXRPのようにいつ提訴されるかわからない状況にあるといえます。

ブロックチェーン事業を行う場合、パブリック型にするかプライベート型にするかをまず選択します。その上で、パブリック型にする場合には独自のトークンが欠かせません。パブリック型には特定の管理者が存在しないため、不特定多数のノードにインセンティブとしてトークンを配布することでネットワークに参加してもらう必要があるのです。

そもそも、このインセンティブのために誕生したのがビットコインやイーサリアムであり、パブリック型のブロックチェーン事業を行う場合にはトークン発行が必要になります。

このことを理解しているPeirce氏は、セーフハーバールールの適用を行うことを提案し、今回のアップデートでさらに具体的な規定を設けました。

  • トークンの購入者を保護するためにプロジェクトは半年ごとに活動報告を行い、非開発者でもわかるように専用のエクスプローラーを提供する
  • 3年間の猶予期間後にネットワークが分散化した状態で機能している根拠について説明するための報告書を開示する。なお、この報告書は外部顧問によって作成される必要がある
  • 十分に分散化されていないと認定された場合には証券登録を行う

以前より、トークン発行プロジェクトに3年間の猶予期間を設けるという規定は提案されていましたが、今回のアップデートでエクスプローラの開発や進捗報告書の提出などが追加されました。

引き続きの論点になるのは、「十分に分散化された状態」というのが定量的になっていないことです。現時点でビットコインとイーサリアムが証券ではないと定義されていることから、解釈としてはビットコインとイーサリアムと同程度分散化されていれば良いことになるでしょう。

定義が曖昧のままではプロジェクトも安心してイノベーションに取り組むことができないため、セーフハーバールールの適用はもちろんのこと、分散化の定義をより明確化することが求められています。

【関連記事】クリプトママのセーフハーバールールが更新、トークン発行に猶予期間を設定

MakerDAOが現実世界の資産を担保にDAIを発行

暗号資産を担保に発行されるステーブルコインDAIの発行および管理を行うMakerDAOが、DAIの担保資産に現実の不動産を加える提案が可決されました。DeFiプロトコルにおける現実資産の採用は初のことであり、うまくいけばDeFiとは比べ物にならない規模を持つ現実世界の資金をDeFiに流入させることに繋がります。

今回の提案を実現するためにCentrifugeと提携することがわかりました。Centrifugeは、現実世界の資産をトークン化することに取り組むプロジェクトです。約2年前より、MakerDAOに現実世界の資産を加えるのであればCentrifugeと組む可能性が高いと言われてきました。

論点となっていたのは、2020年4月からMaker Improvement Proposal(MIP)で議論されていた問題です。これは「現実世界の資産をDeFiに取り込むには、単にERC-20トークンを発行してそこに現実世界の資産と紐づく何らかの価値があると主張するだけでは不十分だ」というものになります。

言われてみれば当たり前ですが、現実世界とバーチャル世界を結びつけることは非常に難しく、何かしらの仲介役が必要になります。

今回の仕組みでは、CentrifugeのTinlakeプロトコルがアセットオリジネーターと呼ばれる現実世界の企業とMakerDAOの橋渡しを行います。Tinlakeは、現実世界の企業による預金(資産)をNFTに変えてプロトコルにプールし、そのNFT化された資産を2つのトランシェ(証券化された商品をリスクや利回りごとに区別したもの)付きERC-20トークンとして発行します。

上図のように、アセットオリジネーター(現実世界の企業)は「TIN」というリスクの高いトランシェ付きトークンを購入する一方、MakerDAOは「DROP」というリスクの低いトランシェ付きトークンを担保に入れます。

実際に、不動産ローンを提供するNew Silver社がDROPトークンを担保にステーブルコインDAIを発行し、不動産のリノベーションのために新たな資産(DAI)を借り入れるという一連の取り組みを行うとしています。

今回は不動産の取り組みとなりましたが、Centrifugeは他にも請求書などのトークン化も行なっており、各領域ごとのアセットオリジネーター(現実世界の企業)が自社のアセットを担保にステーブルコインDAIを発行できるようになるかもしれません。

【参照記事】MakerDAO Will Soon Hold Real-World Assets as Collateral

まとめ、著者の考察

今週はCoinbaseがナスダックに上場したことで、暗号資産業界が歴史の転換点を迎えました。これに伴い、暗号資産の取引だけでなくブロックチェーンベンチャーへの還元が進むことを期待しています。

SECのPeirce氏は依然として「クリプトママ」としての存在感を十分に発揮し、適切な規制を整備しつつもイノベーションの促進を後押ししてくれています。

MakerDAOの不動産担保の取り組みは、複雑かつ非常に先進的なスキームにはなっていますが、数年前より実現したいと議論し続けてきたものであるため、プロトコルの確実なアップデートが感じ取れるのではないでしょうか。

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田上智裕

田上智裕

株式会社techtec 代表取締役。リクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。「学習するほどトークンがもらえる」ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営。メディアでの執筆や海外での講演などを中心に、ブロックチェーン業界の発展にコミットしている。